ポーランド日帰り国境越えの旅(1)

先週の日曜日の昼頃、友達から電話がかかってきた。「これからポーランドに日帰りで行くのだけど、暇だったら一緒に来ないか」という誘いだった。
日本に住んでいると、日帰りで隣の国まで行って帰って来るという感覚がなかなかつかみにくいが、ベルリンからポーランド国境にあるフランクフルト・オーデルまで、実はわずか100キロの距離しかない。この町から川を越えて徒歩でポーランド側に入れるということは前から知っていたものの、まだ実際に試したことはなかった。急な話もいいところだが、「歩いて国境を越える」という行為には大いに惹かれるものを感じたので、喜んで同行することにした。
Berlin Ostbahnhof(ベルリン東駅)13時56分発の列車に乗って出発。しかしわずか100キロだから、雑談をしたり単調な風景を眺めたりしているうちにあっという間に着いた。15時04分、Frankfurt Oder着。フランクフルトといっても、あの金融で有名な大都市のことではない。両者を区別するために、町のそばを流れている川の名前でそれぞれを区別することになっている。あちらはFrankfurt am Main(マイン河畔のフランクフルト)。そしてこちらはオーデル川のほとりにあるフランクフルト。高層ビルが立ち並ぶヨーロッパ有数の大都市に比べると、こちらは旧東ドイツの地味な地方都市である。
フランクフルト・オーデルの駅舎正面。ベルリンからフランクフルト・オーデルへの往復は、複数で行く場合ブランデンブルク・ベルリンチケットが便利だ。ベルリンとブランデンブルク州内が一日乗り放題の上、5人まで有効で23ユーロ。3人で行ったわれわれは、一人当たりわずか7ユーロということになる。
フランクフルト・オーデルの街で見つけたオブジェ。左から順に見て、次のような解釈が考えられる。
1. 戦争が終わり、ナチスから解放されたのもつかの間、
2. 今度は共産主義がここを支配し、イデオロギーという仮面をかぶせられる。
3. 40年の時を経て、共産主義社会が崩壊。ようやく自由になる。
私がこの町を訪れた翌日、ドイツは統一15周年を迎えた。しかし、東西間の格差は依然として埋まらず、先日の総選挙では、旧共産党の流れを汲む左派連合が旧東ドイツにおいて躍進した。なんという皮肉な現実だろう。
市電に乗って数分。しばらく歩くと、オーデル川の検問所が見えてくる。
ここが国境越えの検問所。歩行者はこの右側にある通路を通って、ポーランド側に入る。
検問所はもちろん、フランクフルト・オーデルの駅や町の多くの所で、ドイツ語とポーランド語の両方で表示されている。上がドイツ語、下がポーランド語。「21時から6時15分までの間、歩行者の出国は閉じられている」の意。
一般の人はここを通って、ポーランド側に入る。幾多の辛酸をなめてきたポーランドとドイツだが、今は同じEUのお隣さん同士。パスポートを見せるだけで、待たされることもなく、あっさり通過することができた。時代は変わったものだ。
ドイツ→ポーランドに比べ、ポーランド←ドイツの流れの方が、車の量が多い。橋を越えるだけで、物価が大分安くなるので、買い物に来るドイツ人が多いのだという。さて、雨雲が近付いてきているが、いよいよポーランド側に入った。続きはまた次回に。



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8 Responses

  1. hummel_hummel
    hummel_hummel at · Reply

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    懐かしい!私も徒歩で国境越えしました。昨年のEU加盟直後でしたが、パスポートチェックも案外厳しかったです。
    ポーランド側も殺伐としてましたが、フランクフルト・オーダーにもディープなDDRを感じました。。
    続き期待してますね!

  2. ゴン太
    ゴン太 at · Reply

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    日本だとちょっとそこまで感覚で国境までは辿りつけないので
    一時間ちょっとで異国とはなんとも不思議な感じがします。
    町から川を超えて→隣町ってところですからね~。(うううっ)ToT
    ポーランドには行ったことがないのですが、ベルリンから
    足を伸ばすという手もあるんですね。
    続きを楽しみにしています。

  3. lignponto
    lignponto at · Reply

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    はじめまして。
    ブログランキングで見つけてやってきました。
    弟がベルリンに住んでいるので、三回訪れました。今年は、結婚式で訪れました。私には、ドイツ人の妹が出来ました。
    ベルリンの事についてもっと知りたいので、また遊びに来たいと思います。
    TB張らせてもらいました。良かったら読んでください。

  4. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >フンメルさん
    ポーランド側の町並みは本当に殺伐としていました。それだけに、教会の中に入って、共同体としての人のあたたかさ、のようなものに触れた時の印象が、余計に強かったです。ポーランドの人にとって、信仰は本当に大きな位置を占めているのですね。

    >ゴン太くん
    フランクフルト・オーデルからポーランド側のスービッツェまで路面電車でつなぐ計画があるようです。これが実現したら、パスポートのチェックもないまま国境を越えられるようになるのでしょうね。

    >lignpontoさん
    はじめまして!弟さんがドイツ人と結婚されたのですか。いきなりドイツ人の妹さんができるというのは、不思議な感じもしますが、ベルリンにはご縁ができたわけですね。ブログぜひ拝見したいと思います。

  5. paukenschlagzeu
    paukenschlagzeu at · Reply

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    冒頭のDBの赤い列車の横の発着表示板にMagdeburgの文字を見つけて何故か嬉しくなりました。旧型のトラムやDunkelな空が妙に懐かしいです。きれいな写真を楽しみに拝見しています。傘をささずに歩いて行くのは欧州どこでもですか?

  6. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    paukenさん、久しぶりの書き込みありがとうございます。おっしゃるとおり、このフランクフルト・オーデル行きの列車は、マグデブルク始発で、割と頻繁に出ているようです。今度は反対方向のマグデブルクにも行ってみたいですね。傘についてですが、おそらくポーランドでもドイツと似たような感じではないでしょうか。でもこの時は、かなりの大雨で、さすがに傘なしで歩くのはつらかったろうと思います。

  7. pauken
    pauken at · Reply

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    御無沙汰していました。今日は百貨店のドイツフェアに行ってきました。大雨って案外早くやむような憶えが。でも折り畳み傘率って高いと思いませんか。DBのこの列車ってスゴイ迫力だけど赤がとても綺麗ですよね。大好きです。ダイヤはあとで時刻表(都市間の載ってるぶ厚いヤツ)でみてみます。あ、Magdeburgでは、フンデルトヴァッサー(私よくわかりません)の新築の建物(表面はピンク)が出来たそうで、日本の新聞にも写真が出てました。

  8. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    DBのこの赤はいいですよね。今回ポーランドや旧ソ連製の列車などいろいろ乗りましたが、DBがやはり一番快適でした。ドイツには、日本のような総合時刻表が気軽に手に入らないので、のんびり鈍行を乗り継いでの旅がしづらいのが残念です。ただ、日本では廃れてしまった食堂車がこちらでは健在なのはうれしいですね。

    フンデルトヴァッサーの建築では、どこの町か忘れましたが、社会主義時代の学校の校舎を再利用した建物がとても鮮やかで印象に残っています。

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