昨日、9月の衆院選が決まりましたが、ドイツでも予定より1年早く、9月18日に総選挙が行われることになり、これが今年最大の政治テーマとなっています。現在の世論を見ると、私がベルリンに来てから初めて政権が変わる可能性が高まっているようです。もし与党の社会民主党(SPD)が破れ、最大野党のキリスト教民主同盟(CDU)が第一政党となった場合、ドイツはどう変わるのか?
私が簡単に説明できるような問題ではないですが、政権交代後のドイツがどういう外交政策を採り、それが国際政治の枠組みにどういう影響を与えるのかについては、かなり興味があります。今日、ケルンからやって来た友達と会ったのですが、その時も少しその話になりました。自分の頭の中を整理する意味でも、少しまとめてみようと思います。
まずはEU内。シュレーダー政権と最も外交的に緊密だったのはフランスだった。シュレーダー首相とシラク大統領が仲むずまじく会談している様子を、今まで何回テレビで見たことだろうか。イラク戦争の直前、このEUの2つの中心国が揃ってアメリカにNOのメッセージを突きつけたことは、ブッシュ政権に少なからず動揺を与えたようだ。このため、ドイツとアメリカとの関係は、戦後かつてないほど一時期冷え込んだ。しかし、シュレーダーがあの時、アメリカに対してNOと言ってくれたおかげで、ドイツでは幸いなことにテロはまだ起きていない、という見方もできる。ドイツ初の女性首相となる可能性の高いCDUのアンゲラ・メルケルは、アメリカとの関係をより重視する方向のようだ。アメリカがまた無茶なことをしてそれに追従し、テロの可能性が高まらなければいいのだが・・・
シュレーダー政権はロシアとの関係もまた緊密にした。しかし、ドイツ、フランス、ロシアという欧州の大国が手を握り合ったことで、歴史上これらの国々に散々な目に遭ってきた周辺の小国は恐れをなした。ポーランドが、イラク戦争の際、ドイツとは対照的にアメリカに寄り、イラクに軍を送ったのはその顕著なメッセージだったといえる。CDUはロシアだけでなく、チェコやポーランドといった周辺国との関係も今より重視するようだ。フランスとの関係も、また微妙に変わってくるだろう。
シュレーダーとシラクはEU拡大の推進者で、実際EU加盟国は大幅に増えた。イスラム教国のトルコまでもEUの仲間入りをさせたいと考えている。しかし、そのような急激な拡大に対して、「そんなことよりもまずは自国の問題をなんとかしてくださいよ。」と人々はメッセージを発した。それが、EU憲法に対するフランスやオランダ国民のNOではなかっただろうか。CDUはトルコのEU加盟に対して、断固反対の立場を崩さない構えだ。
そしてアジア。シュレーダーは中国にものすごく力を入れていた。シュレーダーがヘルメット姿で中国の工場を見学する姿をこれまた何回もニュースで見たものだ。経済の冷え切ったドイツにとって、中国ほど魅力的な市場はないのだろう。しかし、CDUは今ほど対中関係を重視する方向ではないようで、政権交代後の動向を気にしている中国関係者も多いと思う。では日本は?安定期に入った日独関係が大きく変化することはないだろうと私は思うが、どうだろうか。
CDUは基本的に右寄りの政党なので、外国人に対する政策も少しづつ変わってくるだろう。これもドイツに住む外国人にとっては気になるところだ。
なんだかいろいろ述べましたが、もし明らかな間違いがあるという場合は、ご指摘いただけたら助かります。