MOZART/CONCERT ARIAS; UN MOTO DI GIOIA

「ベルリン・天使の詩」のロケ地を訪ねるシリーズ、この映画を知らない方にも読んでもらえるよう書いているつもりですが、たまには気分転換をということで今日は別の話題を。最近見た舞台やコンサートの話です。
まずは“Tanz im August“(8月のダンス)というフェスティバルのトリを飾ったベルギーの著名なダンスカンパニー、ローザス(Rosas)の公演から。タイトルはその名も、“Mozart/Concert Arias; un moto di gioia“。
モーツァルトとコンテンポラリー・ダンスの組み合わせというだけでも興味を引かれるが、「コンサート・アリア」というモーツァルトの作品群の中でも比較的地味なジャンルを選ぶあたり、しかもベルリン・ドイツ交響楽団の生演奏つきということで、興味津々に出かけた。初演は1992年のアヴィニョン・フェスティバルという作品。
これは最高だった。モーツァルトの曲は結構いろいろ聴いてきたつもりだったが、音楽が始まると「コンサート・アリア」というジャンルの曲はほとんど知らないことに気付いた。確かに有名オペラのアリアに比べるとメロディーの親しみやすさという点では幾分劣るのだけれど、モーツァルトが特定の女性歌手に向けて書いた曲だけに、音楽は親密な雰囲気にあふれている。
作品の核になっているのは、モーツァルトが30歳の時にイギリスのソプラノ歌手ナンシー・ストーラスのために書いた「どうしてあなたを忘れよう(Ch’io mi scorde die te, KV505)」
プログラムによると、モーツァルトがコンサートアリアを書いたのは21歳から33歳までにかけてで、この時期に書かれたこれらの作品群は作曲家自身を巡っての愛、確執、別れなどと深く関わっているのだそうだ。振り付けのアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルはそこに目を付けたのが、その成果はすばらしいもので、単に音楽に合わせて振付けるという次元のものではなかった。
ソプラノ歌手が歌っているところにちょっかいを出す、かつらをかぶったモーツァルト風のダンサーもコミカルでおもしろかったが、ほのかなエロティシズムを漂わせる女性ダンサーたちの踊りには本当にうっとり。現代的でありながら、ロココの世界にも浸らせてくれた稀有な舞台と言えるかもしれない。ダンサーのメンバー構成を見るとかなり国際的で、その中には日本人の社本多加さんもいた。3人のソプラノ歌手、そしてベルリン・ドイツ交響楽団の演奏もすばらしく、音楽面でも十分に満足できるものだった。
振り付けのアンヌ・テレサ・ドゥ・ケースマイケルは常に「音楽的構造と身体的構造の関係」を探求している人、これまでもモンテヴェルディ、ベートーヴェンからスティーブ・ライヒ、マイルス・デイビスまでさまざまな音楽を取り入れて振り付けをしてきたのだそうだ。彼女の他の作品も見てみたいと強く思った
(9月2日 Haus der Berliner Festspiele)。
Choreografie: Anne Teresa De Keersmaeker Regie: Jean Luc Ducourt Konzept: Anne Teresa De Keersmaeker / Jean Luc Ducourt Tanz: Vincent Dunoyer, Nordine Benchorf, Bruce Campbell, Clinton Stringer, Kosi Hidama, Igor Shyshko, Moya Michael, Samantha van Wissen, Marion Lévy, Marta Coronado, Cynthia Loemij, Elizaveta Penkóva, Taka Shamoto Musik: W. A. Mozart Live gespielt von: Deutsches Sinfonie Orchester Berlin Musikalische Leitung: Alessandro De Marchi



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