最近読んだ本の第2弾は、パレスチナ出身の文学者エドワード・サイードがBBCに残した講演をまとめた有名な知識人論。サイードの著作の中ではこれが一番読みやすいというので、わざわざ日本の実家から送ってもらったもののずっと放ったらかしにしていたのだった。表紙の言葉に集約されている通り、彼の言う知識人とは「亡命者にして周縁的存在であり、またアマチュアであり、さらには権力に対して真実を語ろうとする言葉の使い手である」ということになる。この中で私が特に印象に残ったのは3つめの「アマチュアたること」だった。
ここで論じてみたいのは、知識人の独創性と意志とを脅かすかに思われる四つの圧力である。(それらは)どれも、あらゆる社会に蔓延しているのだが、その蔓延ぶりにもかかわらず、そうした圧力にゆさぶりをかけることはできる。そのようなゆさぶりをかけるもの、それをわたしはアマチュア主義と呼ぼう。アマチュアリズムとは、専門家のように利益や褒章によって動かされるのではなく、愛好精神と抑えがたい興味によって衝き動かされ、より大きな俯瞰図を手に入れたり、境界や障害を乗り越えてさまざまなつながりをつけたり、また、特定の専門分野にしばられずに専門職という制限から自由になって観念や価値を追求することをいう。
この箇所を読み直して、つい最近読んだ別の本の一節を思い出した。「フューチャリスト宣言」(ちくま新書)という本の中で、梅田望夫さんという人がこういうことを語っている。
僕自身は、好きなことを一つずっと深堀りするというよりも、世の中を俯瞰して理解したいという気持ちがあるほうで、理解したい対象全体の正規分布がこうなっているんだとか、いつもそういうふうにモノを考えがちです。
(中略)
異質なものと異質なものを結びつけるとか、歴史との比較で未来を考えるとか。いまここで起きていることは19世紀だと何にあたるのだろう、といったことをいつも考えます。そこでなるべく誰も考えていないような組み合わせで、とか腐心しますね。
(中略)
ちょっと手前味噌になるかもしれないけど、たくさんの分野に興味があって、関係性に興味がある、俯瞰してものを見て全体の構造をはっきりさせたいという志向がある人は、これからの時代に有利になってくる気がします。
上の2人の言っていることを自分に当てはめるのは全くおこがましいけれど、ひょっとしたら私も何らかの「俯瞰図」を手に入れたいという欲求が強い人間なのかもしれない。そういう意味でベルリンという街は私には面白い。例えば、過去との比較で現在や未来を考えるということだけをとっても、この街はまたとない機会を私に与えてくれる。このブログもそのようなアマチュアリズムを持って続けていけたらと思う。
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ベルリンという格好なフィールドを得て、「己」を外部に意欲的
且つ喜々として発信している。何時までも、アマチュアであり
続けて下さい。
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特定の専門分野にしばられることなく、様々なことにアマチュアとして挑戦していきたいものです。「石橋を叩けば渡れない」という本の中で、西堀栄三郎さんは、「専門のないのが専門」と題して以下のことを書いています。
私は、自分の半生を振り返ってみるといつも「新しいこと」をやりたかっ
たし、やってきたことは事実です。まったく、いままでいろんなことをやっ
てきました。山へ登ったり、生物実験をしたり、化学をやったり、真空管
を作ったり、品質管理をやったり、南極で越冬したかと思えば、原子力
のこともやる。ですから、あなたの専門が何であるかと聞かれても、自
分ではっきりわからないくらいです。それで、「専門のないのが私の専
門です」といっています。
(中略)
学者は、狭いことをキリで穴をあけるように掘り下げて行くことで足りま
す。ところが、技術者というのは、学者よりもはるかに知識の幅が広くな
ければいけません。つまり、私は片っぱしから何でもやって経験の幅、
知識の幅を広げるのに努力してきたわけです。
愛好精神と探検精神でもって、観念や価値を追求していきたいものです。
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まさとさんのブログは考えさせられたり、おもしろかったり、覗かせていただく度に勉強になります。
知識人とは何か、大学でとった授業で読まされました。和訳だからか、一文一文が長くて私は大変苦戦しました。
今は、留学先でわざわざ買って帰ってきた、同じくサイードのオリエンタリズムの原著を放ったらかしにしている状態なので、まさとさんを見習って、読もうと決心しました。笑
そして、まだ弟さんどの方だか分からないんですよー
もうすぐ夏合宿なので、自己紹介芸を要チェックしておきます!
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>和良さん
ありがとうございます。「アマチュア」という言葉は否定的なニュアンスで使われることもありますが、サイードの言うアマチュアリズムは好きです。他の本も読んでみたくなりました。
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>punicaさん
久々のコメントですね。ありがとうございます。
西堀栄三郎さんという方の言葉、共感して読みました。いいですね。私は技術者ではないけれど、経験には常に貪欲でいたいと思います。
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>葉月さん
サイードのオリエンタリズムは有名な本ですよね。あと音楽についての著作も何冊か残しているので、僕はまずこちらから読んでみたいです。バレンボイムとの対談集とか。
弟はですね、結構背が高いので割と見つけやすいとは思いますが。
気楽に声をかけてやってください。自己紹介芸か、何やるんだろうな(笑)。