シーズン終盤のこの時期、毎年ベルリンでは魅力的な公演が続きます。先週末、久々に3日連続でコンサートを聴いたので、その時の印象を簡潔にまとめてみたいと思います。
金曜日は、ギーレン指揮コンツェルトハウス管の演奏会。久々に聴くギーレン。指揮台に向かう足取りは以前よりも(?)ゆっくりだが、ゆったりとした大きな弧を描く独特の指揮ぶりは健在だった。ギーレンは、(リハーサル時)オーケストラには厳しいと何度か聞いたことがあるが、冒頭のシューマンの序曲ではオケ(特に年配のコンマスのリード)とどこかかみ合っていない印象を受けた。でも、後半のシューマンの交響曲第2番では、ふっくらとしながらも透徹した美しさが随所で聴かれ、特に3楽章は絶品といえるものだった。来シーズン、ギーレンはベートーヴェンの「運命」(11月)、マーラーの「巨人」(5月)をメインにしたプログラムを振る予定。
Konzerthausorchester Berlin
Michael Gielen
Melanie Diener, Sopran
Robert Schumann: Ouvertüre zu Schillers Trauerspiel “Die Braut von Messina” op. 100
Alban Berg: “Sieben frühe Lieder” für Sopran und Orchester
Robert Schumann: Sinfonie Nr. 2 C-Dur op. 61
土曜日は、ベルリン・フィルの定期。指揮者はキタエンコ。前半のグリエールのホルン協奏曲は、ソロを務めたラデク・バボラクの独断場。グリエールはプロコフィエフとハチャトリアンの先生だった人だそう。民族色豊かで、親しみやすい音楽である一方、オーケストレーションはかなり派手(シンバルまで登場)。バボラクのホルンは、究極のレガートと呼ぶにふさわしいもので、ただただ感嘆した。かなり長い曲だったのに、ベルリン・フィルのメンバーを背後にさらにアンコールを3曲も吹くなんて、よほどの自信と心臓がなければできないことだろう。メインのスクリャービンの交響曲第3番《神聖なる詩》は、ベルリン・フィルが取り上げるのは87年のムーティ以来だそう。これが予想以上に素晴らしかった。オーケストラに自身の解釈を隅々まで浸透させ、ややもすればキッチュに陥りがちなこの難曲を、格調高く描き上げたキタエンコの手腕はお見事。ベルリン・フィルが客演指揮者に拍手を送る光景を久々に見た。ちなみに、このコンサートを一緒に聴いたうちのお1人は、本職がお坊さんという方で、《神聖なる詩》が生まれるきっかけとなったブラヴァツキーという人の話をしてくださったのだが、それがとても興味深かった。この作品は、思想的背景を抜きにしては語れそうにない。
Berliner Philharmoniker
Dmitrij Kitajenko, Dirigent
Radek Baborak, Horn
Béla Bartók: Bilder aus Ungarn Sz 97
Reinhold Glière: Hornkonzert B-Dur op. 91
Alexander Skrjabin: Symphonie Nr. 3 c-Moll op. 43 »Le divin poème«
日曜日は、「ヤナーチェクと1920年代」というタイトルの、ベルリン放送響の管楽アンサンブルによる演奏会を聴く。会場がちょっと変わっていて、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン州の在外公館の中にある小さなホール。ガラス張りのモダンな建物で、舞台の向こうに見えるライヒスタークのドームがきれいだった。リゲティの短い曲を挟みながら、メデラッケ、スメターチェク、パヴェル・ハース、ヤナーチェクと年代をさかのぼる順に演奏していったのだが、やはりヤナーチェクの音楽が断然いい。曲想が雄大で、どこか懐かしい気持ちにもさせてくれる。この管楽6重奏曲「青春」という曲は、学生時代に仲間と演奏したことがあって、感慨もひとしおだった。他には、スメターチェクの昆虫の生き様を描いた曲がユニーク。演奏はどちらかというと「堅実さ」を強く感じさせるものだったが、Sung Kwon Youという韓国人の若手のファゴット奏者の腕はずば抜けていた。最近ソロのオーディションに受かったばかりというまだ20代前半の奏者なのだが、今後が楽しみだ。
Kurt Mederacke: Böhmische Suite für Bläserquintett op. 43
Vacláv Smetácek: “Aus dem Leben der Insekten” – Bläserquintett op. 3
Pavel Haas: Bläserquintett op. 10
György Ligeti: Zehn Stücke für Bläserquintett (daraus: 4 Stücke)
Leos Janácek: “Mladi” – Suite für Bläsersextett
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>ギーレンは、(リハーサル時)オーケストラには厳しい
はい、N響の定期演奏会で配られる小冊子のコラムに彼の名前をもじって“身入ル義理練”と書かれていました。30年以上昔の話です。
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HIDAMARIさん
“身入ル義理練”、ですか(笑)。昔はN響にも客演していたのですね。もう日本に行く機会はなさそうですが、1シーズンでも長く現役で振っていただきたいものです。