サッカー・ワールドカップ(W杯)ブラジル大会は、ドイツの24年ぶりの優勝によって幕を閉じました。ドイツ中でお祭り騒ぎとなりましたが、その2日後の7月15日、首都のベルリンにはもう1つの特別なハイライトが用意されました。ブラジルから帰国したドイツ代表チームが、ブランデンブルク門へ凱旋することになったのです。
前夜、リオデジャネイロを飛び立ったルフトハンザの特別機2014便は、テーゲル空港に降り立つ直前、なんとブランデンブルク門の真上、上空600mを飛んで着陸態勢に入りました。直前になってベルリン市から特別許可が下り、通常ではあり得ないルート変更が実現したそうですが、その粋な演出に地上で待ち受けていたファンは熱狂したとか。
10時8分、優勝トロフィーを持ったフィリップ・ラーム主将を先頭に、代表チームが空港のタラップから降り立つと、空港職員やファンが盛大に出迎えました。チームはバスで市の中心部まで移動した後、オープンカーに乗り換えて、ブランデンブルク門までの凱旋パレードが始まります。
カメラを持って中央駅まで行くと、駅の広場前は多くの人々でごった返していました。時間とともにその波は膨れ上がり、パレードのコースに面した工事現場の作業員までもが、仕事の手を休めて一斉に注視しているほど。かと思うと、向こう側の首相官邸では、職員がバルコニーに立って選手の到来を今かと待ち受けています。無理もありません。なにしろW杯優勝は東西ドイツ統一以来、初めての出来事なのです。
やがて、一際大きな歓声が奥の方から聞こえると、選手たちを乗せたメルセデスの黒いトラックが姿を現しました。白バイ隊に先導され、亀のようなゆっくりとした速度でこちらに向かって来ます。そしてついにその時が! わずか2日前に死闘を繰り広げた選手たちが、見上げたほんのすぐ先にいました。車は少しの間止まり、トーマス・ミュラー選手がファンのためにトロフィーを何度も掲げ、その横ではW杯通算得点記録を更新したミロスラフ・クローゼ選手が、下から投げ込まれるユニフォームを淡々と受け取っています。最後尾には、大会最優秀GKに輝いたマヌエル・ノイアー選手とヨアヒム・レーヴ監督の姿も。車がブランデンブルク門に到着した後、優勝報告を兼ねたファンとの盛大なパーティーが始まったのは周知の通りです。
喜びに沸く選手やファンたちの姿を見ながら、2006年の地元ドイツ大会、2010年の南アフリカ大会では果たされなかったドイツの「夏のメルヘン」がここに成就したのだと感じ、私もその祝賀の余韻を楽しみました。(ドイツニュースダイジェスト 8月1日)