地下鉄U7のノイケルン市庁舎駅で降りて地上に出ると、ショッピングセンター「ノイケルン・アルカーデン」は目の前だ。トルコ系移民の家族連れが目立ち、ベルリンのショッピングセンターの中でもとりわけ混み合っている。大手家電量販店を横目に、多少迷いながらもエレベーターを見付けた。ここが入り口らしい。5階で降りると、そこはただの駐車場。ほかの人の後を追ってもう1階分さらに坂を上って行くと、狭い天井から解放され、屋上に出る。ハーブや花のプランターや木組みの小屋が目の前に現れ、さながらガーデンセンターに来たかのようだ。かと思えば、少し先から聴こえてくるのは軽快なクラブ音楽。この場所の名は「クルンカークラニッヒ」。ホオカザリヅルという鶴の一種のことだ。
まずは、ここからの眺望にしばらく見入ってしまった。周囲には高層建築が皆無ということもあって、テレビ塔から西側のヨーロッパセンターの方まできれいに見渡せる。手前のアパートの屋根には移民の人々のものと思われる丸い受信アンテナがいくつも連なり、紅色の屋根瓦が西日に反射している。ベルリンの高い場所はいくつも見てきたが、トップ5に入れても良いくらいの眺めだ。
クルンカークラニッヒは2013年に、もともと屋上の駐車場だったスペースを利用してオープンした。仕掛け人は、この近くのヴェーザー通りでFuchs&Elsterというライブバーを営むロビン・シェレンベルク氏とドーレ・マルティネク氏ら。夏の間によく見掛けるビーチバーではなく、持続可能な都市文化を実現する場所にすることを目指して作られた。建物の屋上を緑地にして、野菜などを植えるルーフトップガーデンの動きは、米国の多くの都市で見られるそうだが、遮るものが周囲に何もなく、大きな空を感じられる場所で植物を眺め、土の匂いを感じられるのは新鮮だ。
クルンカ―クラニッヒは緑があるだけの場所ではない。3ユーロの入場料を払ってさらに奥へ進むと、土曜日の夕暮れ時を様々な人々が思い思いに過ごしていた。若者の割合は高いが、砂場で遊ぶ子どもたちもいるし、コーヒーとケーキの時間を楽しむご婦人もいた。木組みの小屋の中では、DJが音楽を掛け、飲み物やピザも注文できる。「当初、ショッピングセンターの運営部や駐車場のオーナーは我々の計画に懐疑的でしたが、クルンカークラニッヒのプロジェクトが多くの人を惹き付けているのを見て、理解してくれたようです」とシェレンベルク氏は語る。クラブに限定することなく、ジャズやクラシック音楽のコンサート、朗読会がここで開かれることもある。
オーナーの2人は、「見掛けや年齢に関係なく、誰もが来られる場所を目指しています。また、地元ノイケルンの皆さんにも参加していただきたい。この場を生かすためのアイデアを募集しています」と語る。ベルリンの中でも、とりわけ多様性とオープンな雰囲気溢れるノイケルンに、また新しい遊び場を見付けた。
(ドイツニュースダイジェスト 1月9日)
Information
クルンカークラニッヒ
Klunkerkranich
2013年6月にオープンしたノイケルン地区の屋上テラス。U7のラートハウス・ノイケルン駅前のショッピングセンターの6階にあり、2500㎡のスペースを持つ。コンサートのほか、蚤の市、フードマーケット、クリスマスマーケットなど、季節に応じて様々な行事が開催されている。冬の間、ガーデンはお休み、レストランは週末のみの営業。
オープン:火〜木18:00〜1:30、金~日12:00〜1:30
住所:Karl-Marx-Str. 66, 12049 Berlin
電話番号:030-666666
URL:www.klunkerkranich.de
デック5
Deck5
Sバーンのシェーンハウザー・アレー駅前のショッピングセンター「アルカーデン」の屋上にあるバー。クルンカークラニッヒとは違い、こちらは夏期のみの営業。デッキチェアが置かれ、ヤシの実や砂浜がリラックスムードを盛り上げる。眼下に広がるプレンツラウアー・ベルク地区のパノラマも魅力的。5月からの夏期シーズンに向けて現在は改装中。
オープン:月〜土10:00〜、日祝12:00〜(2015年5月から営業予定)
住所:Schönhauser Allee 79, 10439 Berlin
電話番号:030-41728905
URL:www.freiluftrebellen.de