9月10日、第27回高松宮殿下記念世界文化賞の受賞者発表式が、ベルテルスマン・ベルリン支社にて行われました。世界文化賞は、1988年に故高松宮殿下の「世界の文化芸術の普及向上に広く寄与したい」という意志を受け継ぎ、日本美術協会により創設された文化賞で、絵画、彫刻、建築、音楽、映像・演劇の5つの部門の受賞者が毎年選ばれます。
今年度の受賞者は、美術家の横尾忠則氏、ピアニストの内田光子氏、バレリーナのシルヴィ・ギエム氏らいずれも各界で大きな業績を残してきた芸術家。発表式には牛乳や花粉など、命を育む素材を用いて「生命」の意味を問い続けてきた彫刻家のヴォルフガング・ライプ氏、若手芸術家奨励賞に輝いたミャンマーのヤンゴン映画学校の代表者が出席し、受賞の喜びを語りました。
この発表式で1つサプライズがありました。日本美術協会の日枝久会長が、ドイツに逃れてきた難民の子どもと若者の教育支援のため、ドイツの国際文化交流機関「ゲーテ・インスティトゥート」に1億円の寄付をすると発表したのです。
「日本を発つ直前にシリア難民の子どもが海に打ち上げられた悲惨な写真を見て、これは世界の問題だと思いました。まさにそんな時期、難民の問題で大きく揺れるドイツで発表式を行うに当たり、祝辞を述べるだけで良いのだろうかと悩んだ結果、ドイツや難民の皆さんに、少しでも何か手助けができないかという思いから決めました」(日枝会長)
午後にドイツの首相官邸で行われたレセプションでは、記念撮影のために現われたメルケル首相から今回の寄付への謝意が伝えられたほか、グリュッタース文化メディア相は「EU外の日本から連帯の気持ちをもらったことが嬉しい」と語ったそうです。
夜はベルリン王立磁器製陶所(KPM)の歴史的な窯のホールで、記念夕食会が催されました。世界文化賞の国際顧問を勤めるゲーテ・インスティトゥートのクラウス=ディーター・レーマン総裁や、名誉顧問だったリヒャルト・フォン・ヴァイツゼッカー元大統領夫人、中根猛・駐ドイツ大使など、日独の関係者や受賞者ら約90人が出席。「皆さんの熱気が素晴らしい雰囲気を生み出しました。文化芸術を育てるには時間がかかりますが、だからこそ、この賞を長く続けていきたい」と日枝氏が語ったように、27年間続いてきた国際文化賞の格式と、芸術が持つ人と人とを結びつける力で、会場は熱気に溢れていました。
世界文化賞の受賞式典は、10月21日に東京の明治記念館で行われます。