(前回の続き)リューゲン島のビンツまで来たからには、バルト海の砂浜のほかに、もう一つ体験しておきたいものがあった。9月16日の10時過ぎ、ホテルの近くから出るバスに乗って駅に向かった。といっても、ベルリンから来る際に利用したドイツ鉄道の駅ではなく、そこから南に1キロ離れたところにある別のビンツ駅にである。
割と最近になって知ったのだが、リューゲン島にはリューゲン保養地鉄道(Rügensche Bäderbahn)という狭軌鉄道が走っているのだ。プットブスPutbusからビンツを経由して終点のゲーレンGöhrenまでの24キロを蒸気機関車が現役で走っているという。できれば全線通して乗ってみたいところだが、今回はビンツからゲーレンまでを往復することにした。往復12ユーロの切符を買ってホームで待っていると、煙をもくもくと上げながら、古い蒸気がおしりを向けて入ってきた。
10時8分にプットブスを出たこの列車、10時40分にビンツを発車するとなだらかな坂を上って森の中を走る。これは最初に停まったJagdschloß(狩猟の館)という駅で撮ったもの。こうして見ると結構長い編成だ。客車に混じってトロッコが1輛連結されており、特に家族連れで賑わっていた。
こちらは私たちが乗った古めかしい客車の様子。いつ頃の車両だろうか。
駅でもらったパンフレットによると、1895年にプットブスービンツ間が開業したのを皮切りに、1896年から1899年にかけてゲーレンまでの路線が完成した。もともとは農業用の貨物輸送のために造られたそうだが、やがてリューゲン島を訪れる観光客にも親しまれるようになったという。最盛期はリューゲン島の最北などにも線が延びていたが、1970年代初頭には廃止され(地図の緑色の線)、現在残るのはプットブスとゲーレン間のみ。
パンフレットによると、現在8台の蒸気機関車が現役で走っており、一番古いのは1914年製。この99 4011-5というタイプは1931年に製造されたもので、保存状態は大変良さそうだ。
観光客だけでなく、地元らしき人もちらほら見かける。時刻表を見ると、プットブスからゲーレンまで年間を通して2時間おきに走っており、夏のシーズン中は、ビンツからゲーレンまで1時間おきに列車が出ている。最終列車がゲーレンに着くのは23時27分ということを見ても、ただの観光用路線ではないということがわかる。
車窓からは海は全く見えないが、森や牧草地、最後の方は湖に沿って走ったりとそれなりに変化に富んでいた。11時23分に終点のゲーレン駅に到着。
駅から数分歩くと、もうゲーレンの海水浴場が見えてくる。ビンツと同じく、木の橋が延びていて、左右には砂浜が広がる。ビンツに比べると規模はずっと小さいが、夏場は賑わうのだろう。1時間半ほど時間があったので、レストランに入り魚のスープを食べてから駅に戻る。
再びゲーレンの駅から、12時49分発のビンツ行き列車に乗る。
帰りは息子を妻に預け、前方がよく見える特等席で楽しませてもらうことにした^^。小さな列車だから私たちは抱っこ紐で来たのだが、各車両には自転車も置ける荷物スペースがあり、ベビーカーで乗っている人たちもいた。こういうところの配慮はさすが。
それにしても、蒸気機関車が汽笛を鳴らしながら走るサウンドの迫力のあること!沿道の人たちもこちらに向かって手を振ってくれる。
再び森の中に入り、ビンツに向かってひた走る。といっても最高速度は時速30キロほど。
帰りの列車を引っ張ったのは、1953年製造の東独時代の機関車。それにしても、ドイツの北の果てにこんな本格的な保存鉄道が走っているとは思わなかった。大満足である^^v。ドイツにはこういう鉄道がほかにもいくつかあり、息子がもう少し大きくなったらまた乗りに出かけたいと思う。