最近発売になった「音楽の友」の6月号に2本の記事を寄稿させていただきました。
1本目は小澤征爾さんが7年ぶりにベルリン・フィルに復帰された公演のレポートで、「小澤征爾と世界の名門オーケストラ」という特集の冒頭に4ページに渡って紹介されています。私は初日の4月8日の公演を聴きました。演奏が素晴らしかったのはもちろんのこと、小澤さんが最初に舞台に登場したときの割れんばかりの歓声はいまも鮮やかに記憶に残っています。
もう1本は6月に来日するヴァイオリンのギドン・クレーメルのインタビュー。昔から好きなヴァイオリニストだっただけに、とても嬉しい出来事でした。フランクフルト郊外のクロンベルクという小さな美しい街を訪ね、そこで若手音楽家に室内楽の指導をしているクレーメルさんに1時間ほどお話を伺いました。インタビューは毎回が自分にとって学びの機会でもあるのですが、今回ほどそう感じたこともあまりありません。特にこのインタビューの最後に話されている内容は、物書きの自分にとっても噛み締めたい言葉です。
先月間近に接する機会があった中でもう1人忘れられないのが、作家の村上春樹さんです。小澤さんと親交のある村上さんも4月の公演を聴きに来られ、「文藝春秋」6月号で「ベルリンは熱狂をもって小澤征爾を迎えた」という大変興味深いレポートを寄稿されています。今回文藝春秋の編集者の方を通して村上さんと接点が生まれ、ほんのわずかですが取材のお手伝いをさせていただきました(私が訳した公演の批評記事から引用してくださっています)。村上さんはベルリン滞在中毎朝ティーアガルテンをジョギングされていたとか。実際に言葉を交わしたのはコンサートの休憩中の二言三言でしたが、その若々しさが印象に残っています。