ドイツのお城といえば、多くの人はライン川や南ドイツの古城を思い浮かべるかもしれません。城のイメージには遠いベルリンにも、かつて壮麗な王宮がありました。この「ベルリン王宮」をテーマにした展覧会「王宮。都市。ベルリン。」(Schloss.Stadt.Berlin.)が現在、ミッテ地区のエフライム宮殿で開催されています。
2階の展示室に入ってまず目に飛び込んできたのは、1688年のベルリンの街の様子を詳細に再現した模型。当時この街は要塞に囲まれており、近代的な都市へと変貌を遂げる過程にありました。シュプレー川に面したブランデンブルク辺境伯の居城であった当時の模型を見ると、いくつもの三角屋根が建ち並び、増築を繰り返してきたことが窺えます。がらっと装いを変えるのは、1701年にプロイセン王に即位したフリードリヒ1世の時代になってから。建築家のアンドレアス・シュリューター指揮のもと、バロック様式の宮殿に生まれ変わるのです。
この展覧会では1650年から1800年までの時間軸で、ベルリン王宮が都市の発展とともにどのような道を歩んできたのかが分かる資料が多数展示されています。まるでタイムマシンに乗って時空旅行に出たような感覚で、地図や模型、オリジナルの装飾品や出土品を見て回ることができます。王宮の歴史といっても支配者側の視点だけでなく、街に重要な刺激を与えた商業や、難民として流れ着いた人々にも光を当てているのが印象的でした。例えば、17世紀末から18世紀にかけて、信仰上の理由でフランスを追われたユグノー教徒がベルリンに定住します。彼らの多くは手に職があり、絹や宝石、貴金属など高価な製品を扱う職人もいました。当時、王宮で実際に使われたタペストリーや時計が展示されており、王家の人々も彼らから恩恵を受けていたことが伝わってきます。
現在、戦後解体されたベルリン王宮を「フンボルトフォーラム」という複合文化施設として再建する工事が着々と進められています。展覧会最後の部屋では、ベルリン在住の作家ソーニャ・シェーンベルガー氏によるビデオ・インスタレーションが上映されていました。この街に住む多様な国籍の人々(中にはシリアから難民として来た人もいました)が自分の子供時代について独り語りをする内容は、一見、王宮とはあまり関係がないようにも見えます。しかし、将来的に非ヨーロッパ圏の美術館を収容するフンボルトフォーラムが、様々な世界との対話や交流を主たる目的としていることを考えると、展示の意図が浮かび上がってきました。当展覧会は4月23日まで開催されます。
www.stadtmuseum.de
(ドイツニュースダイジェスト 1月20日)