一時期に比べると、難民関連のニュースがドイツのメディアを賑わす頻度は減ったように感じられます。しかし今もアクチュアルな主題であることに変わりはなく、外交問題のこじれや紛争やテロの激化などで、いつ新たな難民が出現しても不思議ではない時代に私達は生きています。
ベルリンのミッテ地区にあるマキシム・ゴーリキー劇場は、この主題に真っ向から挑んでいます。昨年11月、ドイツに難民としてやって来た俳優たちによる演劇集団「亡命アンサンブル」を結成。4月8日、イスラエル出身のヤエル・ローネンの演出によりその第1作「冬の旅」がプレミエ上演され、国内外で大きな反響を呼びました。
毎公演が完売という中、5月中旬の上演に接することができました。演じるのはシリア、イスラエル、パレスチナ、アフガニスタン出身の6人の俳優と、1人のドイツ人俳優。「冬の旅」の素材の元になっているのは、今年1月の極寒の中、彼らがドイツ各都市とスイスのチューリッヒを巡った2週間のバス旅行です。
例えば、ドレスデンでは毎週月曜に行われている反イスラム運動「PEGIDA」のデモに遭遇します。「あれは確かに君達に向けられたものだが、君達個人のことを攻撃しているわけではないんだ」とドイツ人の立場から必死にフォローしようとするバス運転手。俳優達は、デモの支持者が掲げる見慣れないスローガンに反応して、「『ファティマ・メルケル』だって? メルケル首相のもう一つのファーストネームは『ファティマ』だったのか!?」「『ドネル(ケバブ)の代わりにじゃがいもを』だって? ケバブにもじゃがいもが入っていたりするじゃない」などと率直に言葉にすると、聴衆はどっと笑います。
彼らの異邦人としての視点で見るドイツ人やドイツでの生活は、確かに笑いの要素が満載です。しかし、旅は次第にシリアスな様相を呈してきます。彼らはその後ブーヘンヴァルト強制収容所跡を訪ね、自分達を受け入れてくれたドイツ人がかつて犯した大きな犯罪に思いを寄せ、さらには彼らが祖国で目にしてきた非人道的な行いと重ね合わせます。そして、彼らがどのような経緯でドイツに辿り着いたのか、故郷で家族や友人と別れることが自分に何を意味したのかという個人的な体験を語り始めるのです……。
作品の合間にブレヒトが亡命について綴った1937年の詩が朗読されたり、最後の方ではシューベルトの歌曲集「冬の旅」から「道しるべ」が流れるなど、彼らの旅が歴史の軸に置かれることで観劇後の印象はさらに強いものとなりました。
今回の「冬の旅」はこの夏から、バス旅行で訪ねたドイツ10都市でも上演されるそうです。「亡命アンサンブル」の次回作にも期待がかかります。
Winterreise رحلة الشتاء(英語字幕付き)
Yael Ronen & Exil Ensemble
www.gorki.de
(ドイツニュースダイジェスト 6月16日)
ぜひとも見てみたい舞台ですね。今回紹介してくださったあらすじだけ読んでも、ドイツが歴史に向き合いつつ、苦悩している姿が浮かんでくるようでした。
余談ですが、ウニオン・ベルリンは最後に失速してしまい残念でしたね。でも、来シーズンもチケットが容易に手に入れられそうで、よかった。
折井さん、コメントありがとうございます。
ウニオン・ベルリンは最後本当に残念でしたね。来シーズンまた来られるようでしたら、ご連絡くださいね。機会があれば、スタジアム観戦をご一緒したいものです。
ちなみに、最近の新聞に出ていましたが、あのスタジアムは2020年の100周年に向けて、2019年から大規模な拡張工事をするそうです。