※昨年12月に書いた記事をここにアップしたいと思います。
毎年11月末から、カイザー・ヴィルヘルム記念教会前のブライトシャイト広場で開催されるクリスマスマーケットは、ベルリン西地区に住む私にとって特に馴染み深い冬の風物詩です。2016年末にここでテロ事件が起きて間もなく2年、今年の様子をお伝えしたいと思います。
第2アドヴェントの日曜の夜に訪れたマーケットは、まばゆい光に照らされ、多くの人々で賑わっていました。以前と違うのはマーケットと接する車道にコンクリートの厳重なバリケードが設置されていたこと。ベルリン市は今回250万ユーロの費用をかけて、この広場のマーケットの安全対策を強化したと言います。「2016年のテロ攻撃では40トンもの力がかかった。通常の壁ではそのような攻撃に持ちこたえられない」とベルリン市のガイゼル内務大臣は述べていますが、この防御壁はなんともものものしい存在感を放っており、もはやバリゲードというよりは要塞のようです。
「ちょうど夫と話していましたが、楽しい祝いの場から身を守るためにここまでの安全対策をしなければいけないなんて、なんだか泣けてきますね」。地元紙の記事を読んでいると、市民のこんな率直な声も聞こえてきます。
2016年12月19日にトラックが突っ込んだ現場近くには、教会へと続く階段を利用して追悼碑が設置されています。犠牲になった12人の名前と国籍が刻まれた碑の前には、今もろうそくや花が供えられ、人々が足を止めていました。この追悼碑から1本の金色の線が道路に向かって埋め込まれているのをご存知でしょうか。これは亀裂を象徴し、日本の伝統工芸である金継ぎの技巧からヒントを得てデザインされたものだそうです。
今年の12月19日は、昨年のような大規模な追悼式典は行われず、通常通りマーケットが開催されるとのこと。「あれから2年が経ち、悲しみとの向き合い方も含めて、われわれは正しい道を歩んでいます。クリスマスマーケットは普通の生活の一部ですから」と記念教会のゲルマー牧師は語ります。
屋台で焼きソーセージを食べ、スパイスが効いたグリューワインを飲み、いつもと変わらないマーケットでの時間を楽しみましたが、この追悼碑が象徴する社会の亀裂や分断は、今年もドイツや世界全体で顕著に見られました。クリスマスマーケットの安全対策は、来年アレクサンダー広場やフンボルト・フォーラムなどベルリンのほかの場所にも拡大されるそうですが、暗澹(あんたん)たる思いにも駆られます。
(ドイツニュースダイジェスト 2018年12月21日)