先週、ベルリン在住の作家、多和田葉子さんによる『理性へ、彼女は静かに訴える』というエッセイが朝日新聞に掲載されました。現在のドイツとベルリンの様子がよく伝わってくる内容だったのですが、その中で特に印象に残った箇所を下記に引用したいと思います。
行きつけの書店は店舗は閉めているがメールや電話で本を注文すると取り寄せて家まで届けてくれる。お持ち帰りサービスを始めたレストランもあり、店の前に一メートル半の間隔を開けて人が並んでいる。生き残るためにどの店も必死なのだ。フリーの演奏家は七月までのコンサートが全部キャンセルになり収入がゼロだと嘆いている。ライブハウスもジャズ喫茶もこのままでは潰れてしまう。個人経営のヨガ教室も理髪店も同じ心配を始めた。その不安に答えるように、国の予算が赤字になるのは承知の上で補助金を出す、とメルケル首相が発表した。零細企業は雇用者に払う給料の一部と家賃を肩代わりしてもらえる。フリーの俳優、演奏家、朗読会の謝礼を主な収入源にしている作家などは、蓄えがなくて生活が苦しくなった場合は申請すればすぐに九千ユーロの補助金がもらえる、と書かれた手紙が組合から来た。わたし自身は補助金をもらう気はないが、文化が大切にされていることを実感するだけで気持ちが明るくなった。『多和田葉子のベルリン通信』の「理性へ、彼女は静かに訴える」より(朝日新聞2020年4月14日)
この文章を引用したいと思ったのは、私もベルリンに住むフリーランスとして「気持ちが明るくなった」一人だからです。
仕事柄、日本の文化関係者の方からの声がよく届きます。例えば日本のオーケストラや音楽マネージメント。国から何ら具体的な支援策や補償を提示されないまま、公演の自粛を要請され、先がまったく見えない中で過ごしている方々の困窮した声に触れるたびに悲しい気持ちになります。
世界が同じ状況下にある今だからこそ、国による対策の相違が露骨なまでに露わになっています。そんな折、15年来交流のある神戸大学教授の藤野一夫先生から、今回の新型コロナ危機に際したドイツの文化政策に関する論考が送られてきました。「文化的生存配慮」というキーワードを軸にした、とても興味深い内容です。モニカ・グリュッタース文化大臣の言葉やベルリン市の芸術家・フリーランスへの支援策は最近日本でもかなり取り上げられたようですが、文化政策の視点から論じられたものはあまり多くないように思います。この論考がネット上に掲載されるのであればぜひシェアしたい旨を伝えたところ、「もしお役に立つのであれば、中村さんのHPなどで活用してください。緊急性が大切ですので」とおっしゃってくださいました。ご好意に感謝して、以下に掲載させていただきたいと思います。グリュッタース文化大臣が日本を初訪問した時のエピソードを読み、ドイツの文化政策が(負の歴史の)記憶の文化を通して育まれてきたものであることを強く感じました。多くの方にお読みいただけると幸いです。
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新型コロナ危機に対するドイツの文化施策 藤野一夫(神戸大学)
文化とは、よい時代にだけ営まれる贅沢ではない。
ドイツ連邦政府文化大臣モニカ・グリュッタースは3月23日、文化領域への大規模な支援策を発表した。芸術団体や文化・創造産業に対して、零細企業・自営業者向緊急支援枠500億€(約6兆円)を適用し、助成金および貸付のかたちで提供。それに加えて、個人の生活維持のために100億€(約1兆2000億円)を供与する。プロジェクトが中止になっても助成金の返還は可能な限り求めない、という内容である。グリュッタースは連日メディアに登場し、とくにフリーランスの芸術家に希望を与えている。3月22日のドイツ放送のインタビューから抄訳してみよう。
「この分野がいかに大切かという認識は大きく広がっている。目下、文化は大切なのだということを、わたしたちは自分たちだけで語り合っているのではない。また政治の中で発言しているだけでもない。社会においても多くの人たちが文化の大切さを理解してきている。文化とは、よい時代にだけ営まれる贅沢ではない。文化は本当に必要不可欠なものである。文化が中止となったその最初の瞬間、わたしたちから文化が失われているにしても、そのことに気付くのである。こうした芸術家が創造するものは人間性の表現である。そしてわたしたちは今日、このことを以前にも増して必要としている。だからこそ、大きな支援プログラムもまた必要なのである」。
他方、宮田文化庁長官は3月27日にメッセージを出した。「日本の文化芸術の灯を消してはなりません。この困難を乗り越え、ウイルスに打ち勝つために、文化庁長官として、私が先頭に立って、これまで以上に文化芸術への支援を行って行きたいと考えています。明けない夜はありません! いまこそ私たちは文化の力を信じ、共に前に進みましょう」。けれども、具体的な支援策には一切言及しなかった。政府も、芸術家や芸術団体に対して税金を使って救済することには難色を示している。日本の文化政策の脆弱さが露わとなった。
現代ドイツの文化政策論の中心には「文化的生存配慮」というキーワードがある。もともとは、市場原理主義のグローバル化の中で、民営化によって淘汰されてはならない公共文化政策の本質をめぐる哲学的議論だ。ドイツ憲法で保障された「人格の自由な発展」を可能にする条件を、芸術の自律性および現代市民社会の民主主義的基盤の形成という観点から基礎付けたのである。
公共文化政策の基本枠組みは、1)文化施設の設置と維持、2)芸術・文化の振興と文化的人格形成の促進、3)文化事業の発案と資金調達、4)芸術家と文化を生業とする者、市民活動、文化領域で働くフリーランサー、文化産業のための条件整備にある。今回のコロナ危機のように、ドイツに居住する者の「文化権」が損なわれた場合、「文化的生存配慮」を法的根拠として、国家や自治体には公的支援を行う責務が生じるのである。
[解説]
日本では新型コロナ禍による文化施設の閉館、公演やイベントの中止が始まって6週間になりますが、具体的な救済策が打たれず、芸術文化関係者の不安と不満が限界に達しています。そのなかで、とりわけドイツの文化大臣の力強い発言に注目が集まると同時に、その支援額の巨大さがなぜか一人歩きしております。先の国会でも、「ドイツでは芸術家に6兆円もの支援がなされている」といった議員の発言がありました。どうやら誤解があるようですので、わかる範囲で説明いたします。
まず、500億ユーロ(6兆円)という支援額ですが、これは次のような意味です。ドイツ連邦政府経済・エネルギー省は3月23日、「零細企業と自営業者のためのコロナ-緊急支援」のパッケージを発表しました。その財政出動は総額で500億ユーロです。この中で、補助金として給付される対象は、従業員数10名までの全ての経済分野の零細企業、自営業者、そしてフリーランスに属するもの、です。
従業員5名までは3ヶ月分が9,000ユーロまで一括して給付、従業員10名までは15,000ユーロが一括給付されます。つまり、文化・創造経済の分野でも、上記の条件で補助金が支給されることになります。ですから、文化・創造経済の分野に特化した支援策ではありません。
さて、ドイツにおける文化・創造経済の年間の価値創出総額は12兆円に上ります。添付の白書は、経済・エネルギー省のもので、その10ページの図(Abbildung2.1)をご覧ください。自動車産業の166.7、機械産業107.1の次が文化・創造産業(経済)の100.5(1005億ユーロ)です。日本円で12兆円強となります。
次に、文化・創造経済分野の従事者は120万人、企業数は25万6千ですので、一企業(事業者)あたり4~5名です。つまり、ほとんどが零細企業、自営業者もしくはフリーランスに該当します。やはりその大半が、先の支援策の対象者になると予想されます。
6兆円の支援額のうち、文化・創造経済の分野でどのくらい補助金が給付されるかは、まだ申請ー給付の段階なので発表されておりません。現状では12兆円の総生産額が大幅に落ち込み、大半の従事者が収入源を失います。仮に100万人が平均で5000ユーロ(60万円)の補助金を給付されるとすると6,000億円程度です。最大でも1兆円でしょう。観光業や飲食業も零細、自営業者が大半ですので、同じ枠組みで支援されることになります。
ただし、これは連邦政府による支援策です。ドイツでは文化振興は地域主権の立場から、州と自治体が主体で行い、連邦文化庁の予算は全体の10数%です。したがって、各州と市町村も独自に芸術家や文化団体への支援策を打ち出しています。これらを合算して初めて、ドイツ全体の文化・創造経済分野への支援総額が明らかとなりますが、まだデータとしては上がってきておりません。
ちなみにドイツ全体の、創造産業を除いた公的文化歳出(いわゆる税金による文化予算)は年間1兆3千億円です。これには設備投資は含まれませんので、そのほとんどが人件費と事業費です。
さて、この間に文化大臣グリュッタースは、財務省と経済・エネルギー省が出した、零細事業向け支援パッケージの内容を、文化・芸術・創造産業関係者に周知徹底(「ひとりも脱落させない」)させるために、各メディアを通して精力的に談話を出しています。そのような背景を知らない読者は、6兆円の支援が、すべて文化・創造経済分野の零細、個人事業者に特化されたものであると誤解してしまうでしょうが。
本来、グリュッタースは、連邦レベルでの国内の公共文化政策のみを所管しており、経済・エネルギー省が所管する創造経済分野にはタッチしません。これは日本でも同じで、文化庁の管轄と、経産相の管轄を横串することは簡単ではありません。もっともアベノミクスの流れで「稼ぐ文化」を合言葉に、文化経済戦略が文化芸術政策に食い込んできています。その功罪については、拙著『基礎自治体の文化政策』250ページ以下で論じました。
今回、グリュッタースが、いわば越境して「文化・創造経済」を一括りにして支援策を打ち出している背景には、様々な理由が推測されます。ドイツの公共文化政策は高度に制度化されており、インスティテューショナル(施設=機構)な助成が公共文化予算の90パーセント以上を占めています。
たとえば、ドイツの公共劇場は、大学や病院のように、ほぼ税金で賄われおり、その職員(芸術家)は準公務員です。その総数は4万人なので、日本の国立大学の教職員数よりも大きいのです。このような公的機関の場合、州や自治体からの恒常的な補助金で運営されておりますので、すぐに倒産することはありません。組合や職員協議会がありますので、簡単に失業することもありません。(長期化すれば給料カットはありえますが)。もっと言えば、公共劇場やオーケストラの自己収益は平均15%なので、公演がなければ、その分経費が節約できるというわけです。
これにたいし、フリーランスの芸術家への支援は十分ではなく、プロジェクト助成を資金に活動しています。といっても、その総額は日本の文化予算全体よりも大きいのですが。最近の調査では、ドイツのフリーランスの芸術家の平均月収は1200 ユーロ、15万円です。これは大学生の生活費よりは少しましな程度で、生活保護ギリギリです。
他方、創造産業の従事者も様々です。しかし個人での起業が多いため、スタートアップの支援はあるのですが、恒常的な支援はありません。劇場のような公営企業ではなく、民間企業です。コロナ危機のダメージはかなり大きいでしょう。したがって、グリュッタースは、近年「稼ぐ文化」として成長している創造経済のクリエーターの危機と、その支援の根拠を表に出すことで、(もともと稼げない)アーティストへの支援と一体化し、(これまで仲が悪い)芸術家とクリエーター(デザイナー)との連帯・団結を促そうとしたのでしょう。そうしなければ、文化全体の危機を乗り越えることはできないのですから。
ある意味で、したたかな高等戦略ですが、文化大臣のリーダーシップに、ドイツのすべての文化関係者は勇気を与えられています。希望をもって、今できることから取り組んでいます。メルケル首相もそうですが、女性政治家の存在感、倫理観が半端ではありません。このような緊急事態のときに「詩(芸術)と哲学の国」の本領が発揮されるものだと痛感します。
余談ですが、グリュッタースとは個人的に面識があり、数年前に京都と広島を訪れた時にはお相手をさせてもらいました(写真は京都での夕食、モニカの左が私です)。彼女は国内の文化政策に責任をもっていますが、対外文化政策は管轄外なので、公務での海外渡航は原則できません。そこで「お忍び」で日本に初めて来られたのですが、理由は、どうしても広島を訪れて(負の歴史の)「記憶文化」について学びたかったとのこと。そして連邦レベルの文化政策の第一目標は「記憶文化を通して過去の過ちを反省し、平和と民主主義の礎を築くこと」ときっぱりおっしゃられました。今回のコロナ危機についても、彼女のモラルに基づく決然とした態度に感銘を受けました。
ちなみにメルケルの一番の盟友はグリュッタースです。通称は「文化大臣」ですが、ドイツには文化省はありません。ドイツの憲法では、全体主義への反省から、文化とメディアと教育に関する権限は、まずは州(と自治体)に置かれています。連邦政府の文化に関する権限は非常に限定されております。長い議論の末に1998年、社民党と緑の党の連立政権の誕生とともに、内閣府の中に文化とメディアを担当する委任官のポストを作りました。日本の政務次官級なのですが、内閣府つまり首相直轄であるために、メルケルとの連携は緊密です。それで、グリュッタースは菅官房長官?のような存在感を示すことができる。ここが、文科省の外局のために政治権限がほとんど無い文化庁長官との決定的な違いです。
さて次に、連邦ではなく、州単位での支援策を見てみましょう。下記に、ベルリン州文化大臣クラウス・レーデラーのプレスリリースがあります。先日の東京ゲーテの番組では、津田大介さんも間違って紹介していましたが、レーデラーは文化担当の副市長(州政府なので文化大臣と呼んでもよい)です。「ベルリンには三人市長がいて」というのは間違いです。
それはともかく、彼は下記の4月1日のプレスリリースで面白いことを述べています。ベルリン市州政府は、コロナ危機で損害を受けた自営業やフリーランスに既に9億ユーロ(1080億円)補助金の支払いを済ませ、その総数10万人の中には多数の芸術家が含まれているとのこと。しかもこの支援策は3月27日に始まり、プレスリリースの4月1日の時点で(4日間?)9億ユーロに達した。この迅速な対応は、IBB(ベルリン投資銀行)の卓越した協力によって可能となった。他の州の先例となる快挙として感謝を捧げている。私たちが要求している連邦からの更なる資金も、もうすぐ利用できるようになるだろう。このような内容です。
https://www.berlin.de/sen/kulteu/aktuelles/pressemitteilungen/2020/pressemitteilung.914566.php
ベルリン州の支援策が、連邦政府の支援策の発表を受けて迅速に実施されたものなのか、それとも連邦政府とは別に、独自の財源から行われたものなのか、プレスリリースでも判然としません。私の推測ですが、このような流れではないかと思います。
3月23日の連邦政府経済・エネルギー省の緊急支援策パッケージは、各州を通して支給もしくは融資されるものです。緊急支援とはいえ、それが個々の事業者に振り込まれるには、(日本でも問題になっているように)通常は煩瑣な手続きが必要で、それは「官僚主義的」と批判されます。
今回、ベルリン州政府が取った方法は、連邦からの資金提供を待つのではなく、ベルリン投資銀行のノウハウをフルに活用して、いわば州政府(もしくは投資銀行)が建て替えるかたちで、また手続きを可能な限り簡素化して、迅速に自営業者やフリーランスに補助金が振り込まれることだった、と。実際に、ベルリン在住の日本人アーティストは、3月末には5,000ユーロ、もしくは9,000ユーロが振り込まれていたそうです。
4月2日のグリュッタースのインタビューには、確かに「官僚主義的」で遅いという声も(インタビュアーから)語られていましたが、全体としてはスムーズに支援が進んでいると、グリュッタースは見ています。つまり州ごとに手続きやスピード感には違いがあるが、ベルリンのように迅速な対応をした州もある、という事実を踏まえた発言だと思われます。
連邦だけでなく、各州や各都市の支援策について調べておりますが、決まって出てくる言葉が「迅速で非官僚主義的救済 schnelle und unbürokratische Hilfe」です。自治体のHPを見ていると、連邦や州よりも、民間の財団が先にフリーランスのアーティスト支援をスタートしている例が多々あります。下記はライプツィヒ市文化局のサイトに掲載されているものですが、「これがライプツィヒだ!」という、芸術文化と創造産業を横串したプラットフォームです。 https://dasistleipzig.de
これを見ると、デジタル配信のアートシーンと、公的ならびに民間の支援プログラムが網羅されています。ゲーテのインタビューではベルリン・ア・ライブが話題になりました。 https://www.berlinalive.de このようなプラットフォームが各地で立ち上がり、市民とアーティストをつなぐ連帯・団結の場になっています。
さて、ハンブルク市州の事例を紹介しましょう。ハンブルクはベルリンと同じく、市でありながら州のステータスを持っています。ハンブルクはベルリンよりも遅れて、3月31日からの申請受付となりましたが、特徴的なのはハンブルク市州独自の追加支援がセットになっていることです。
ハンブルク 連邦 合計
一人自営業者 2.500€ 9.000€ 11.500€
従業員1ー5人 5.000€ 9.000€ 14.000€
従業員6ー10人 5.000€ 15.000€ 20.000€
11ー50人 25.000€ 無し 25.000€
51ー250人 30.000€ 無し 30.000€
お分かりのように、零細もしくは単独事業者までは連邦からの給付金+ハンブルク州の給付金となっておりますが、従業員11人以上の中小企業については、連邦からの給付金が無いため(10年間無利子の貸付はありますが)、ハンブルク州政府が財政出動して支給しています。(なお従業員数はフルタイム換算なので、短時間雇用の場合は人数が増えます)。
もうひとつ、ハンブルク市州が1988年に設立したハンブルク文化財団がイニシアティブをとって、他の10あまりの民間財団と個人寄付者をとりまとめ、3月27日に40万€以上(5000万円)の救援基金を創設しました。これはハンブルクで活動する若手フリーランスのアーティストに特化したものです。この基金は「芸術はシャットダウンを知らない」をモットーに、今後さらに大きくなるものと期待されます。
もともとハンブルクの芸術文化振興は、ベルリンとは異なり民間主導の伝統があります。民間の芸術支援財団は100を数え、ハンブルク市民はそれを誇りにしています。人口が倍のベルリンにはその半分の財団しかありません。
ところで調べた範囲では、ドイツでは、中止されたイベントへの補償は見当たりません。ドイツと日本の基本的な考え方の違いでしょう。「文化的生存配慮」の概念でも触れましたが、あくまでも芸術文化を担う人たちの仕事と暮らしを守ることが最優先ですので、イベント単位での補償は難しいと思われます(ただし段階的にその方向の支援も出て来る可能性はあります)。また、公共文化政策の基本は「人格の自由な発展」を可能にすることですので、エンターテイメントとアートには一線が引かれます。
アートに対しては潤沢な助成金が投入されますが、公演や展示が中止になっても助成金の返還は要求されません。他方、文化産業はエンターテイメントによって稼ぐことが目的ですので、ベンチャー起業のスタートアップ支援以外には、恒常的な助成はありません。したがってイベントが中止になっても補償はされませんが、反対にその業界で生計を立てている人たち、つまりクリエーターの事業所と暮らしを守ることには手厚い支援(緊急給付と無利子貸付など)をします。
ドイツの経済システムは、市場原理主義の自由放任主義ではなく、社会的市場経済です。ここでの「社会的」という意味が大切です。それを論じていると話が止まらなくなりますので、この辺にいたしましょう。
(2020/04/08 藤野一夫)
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