音楽朗読劇「借りた風景」の広島上演について

新年あけましておめでとうございます。

この年末は、音楽朗読劇「借りた風景」の翻訳作業の仕上げに追われていました。「明子さんの被爆ピアノ、その記憶とともに」という日本語版の副題が示す通り、広島の原爆で亡くなった河本明子さんが弾いていたピアノ、同様に第二次世界大戦を生き延びたヴァイオリンとコントラバスという実在する3つの楽器の記憶をテーマにした作品です。

このプロジェクトには私自身、特別な思いがあります。ご縁あって岩波ブックレット『明子のピアノ』を刊行したのが2020年夏。コロナ禍の最中だった翌年の初頭、ふと明子さんのピアノの物語をドイツでも紹介できないだろうかと思い立ち、ベルリン在住のある知人に相談したところ、紹介していただいたのが脚本家ユニットtauchgoldのフロリアン・ゴルトベルクさんとハイケ・タウフさん夫妻でした。初めてお会いしたときに明子さんのピアノの話をしたところ、お2人とも深い関心と共感を寄せてくださり、やがてラジオ音楽劇「借りた風景」(作曲:藤倉大)へと結実し、2022年6月にドイツの公共放送局Deutschlandfunkにて放送されました。

2023年11月にはニューヨークのノグチ美術館で英語版が舞台上演されました。ちょうど1年前の年末、ベルリンのカフェでフロリアンさん、ハイケさんとお会いし、ニューヨークの舞台の話を聞きながら、「次は広島での舞台が実現するといいね」という話をしたのがつい先日のことのように思い出されます。

被爆80年の広島で「借りた風景」の日本初演を実現させたいという多くの方々の熱意と尽力のおかげで、この2月16日(日)に広島での上演が本当に実現することになりました。舞台となるのは、明子さん自身がかつて学んでいた広島女学院のゲーンスホールです。

ヴァイオリン:北田 千尋(広島交響楽団コンサートマスター)
コントラバス:エディクソン・ルイス(ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)
ピアノ:小菅 優
朗読:大山 大輔、多和田 さち子、西名 みずほ、日髙 徹郎
私から見ても信じられないような、素晴らしいキャスティングです・・・。実は、昨年夏にハイケさんがご病気で亡くなられるという悲しい出来事があり、この数ヶ月の翻訳作業には常に喪失の感覚がともなっていました。困難な世界情勢の中で実現する広島での舞台が、多くの方の心に残るものになることを願っています。もしよろしかったら、ぜひいらしてください。詳細はこちらでご覧いただけます。
https://www.kajimotomusic.com/concerts/borrowed-landscape/

本年もどうぞよろしくお願いいたします。



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