10月8日、Berlin Friedrichstrasse13時48分発の列車で出発。これは偶然にも、その一週間前にフランクフルト・オーデルに行く時に乗った列車と同じだった。あの時のどんよりした天気に比べ、この日は本当にいい天気に恵まれた。15時04分、フランクフルト・オーデル着。
隣のホームにはご覧のような、ポーランド国鉄の緑色の車体が横たわっていた。車内は思いのほかきれいで、乗り心地のいいコンパートメント車だった。接続よく、ポズナニ行きの鈍行列車が15時21分に発車。ポーランド随一の商業都市ポズナニ(Poznan)まで、約3時間の旅となる。
オーデル川を越えて列車はポーランドに入る。パスポートチェックの後、女性の車掌さんが切符の検札にやって来た。私たちはフランクフルト・オーデルまでの切符しか持っていなかったので、ポズナニ行きの切符を2枚買う。今回の行程は、できるだけ安くウクライナに行くという見地から、同行者のこーどーくんが発案したものである。ベルリンからキエフまで、普通に直通列車の切符を買うと、約100ユーロほどかかる。私たちはキエフに行く前にリヴィウ(L’viv)の町も見ておきたかったし、そこまでの道程も楽しみたかった。では、このルートでキエフまで行くと一体いくらかかるのか。それはまた後でお話したいと思う。
ポーランドの国名は、「野原」「空き地」を意味する言葉に由来するという。それだけに国土の大半がなだらかな平地である。
定刻より少し遅れて18時半頃、ポズナニ中央駅に到着。次の列車まで5時間もの待ち時間がある。町に出る前に、まず夜行列車の切符を買わねばならない。
ポズナニは人口58万人のポーランドで5番目に大きい町。しかし、駅の構内の案内には、どこにも英語表記がない。窓口のおばさんに「プシェミシルまでの切符を買いたいのですが、英語かドイツ語はできますか?」と聞くと、反対方向の窓口を指差した。そこに行くと若いお兄さんが窓口に座っている。今度は大丈夫かと思ったが、この人も英語はだめとのこと。困っていたら、そばにいた学生風の男の人が通訳を名乗り出て、切符を買うのを手伝ってくれた。
やれやれ、切符一枚買うだけでも大変だ。だが、考えてみたらここはポーランド語の国。その場所にある濃密な地域性に身を置くということも、旅することの意義であり、醍醐味である。世界のどこに行っても英語が通じるようになったら便利だろうが、それはそれで味気ないものだ。
旧市街までは少し離れていたが、市電の乗り方がよくわからなくて、結局30分ぐらい歩いてたどり着く。この日は土曜日ということもあって、旧市街はとても賑わっていた。もっと地味な町を想像していたが、旧市街は歴史的な建物がよく保存(というか再現か)されていて、華やかだった。適当なレストランを見つけ、旅の安全を願ってこーどーくんとビールで乾杯。私はピエロギという餃子に少し似た料理を食べたが、これがビールによく合う。
23時18分、プシェミシル行きの夜行列車は定刻に発車した。私たちは座席車だったが、少し多めに払っても簡易寝台車(クシェット)にすればよかったと、深夜になってから後悔する。座席車は自由席なので、頻繁に客が出入りするし、深夜でも容赦なく切符の検札でたたき起こされる。1時頃だったか、2人の中年の男が同じコンパートメントに乗り込んでくると、一人はでかい声で向かいのおばさんにしゃべり始め、それがようやく終わったと思ったのもつかの間、今度は別の男がすごいいびきを立てて寝始めた。こちらはたまったものではないが、持参していた耳栓がこういう時に役立ち、なんとか再び眠りにつく。
目が覚めたら9時を回っている。あれから意外とよく眠れたようで、列車はいつの間にかクラクフも通り過ぎていた。
10時50分頃、ポーランドとウクライナの国境近くの町、プシェミシル(Przemysl)に到着。今日もすばらしい天気だ。プシェミシルからウクライナの最初の目的地リヴィウまでは、直通バスが一日に何本か出ている。私たちは11時のバスに乗るつもりだったのだが、バス乗り場に行って聞いてみると、そのバスが出るのは週末のみという。次のバスは15時半。それまで町で時間をつぶすしかないかと諦めてバス乗り場を出ようとしたら、入り口近くにマイクロバスが停まっているのが目に入った。その行き先の地名に見覚えがあるというので、こーどーくんがそばのバックパッカーの人に聞いてみたら、国境まで行くバスだという。ウクライナ国境は徒歩で越えることができ、そこから先はリヴィウまでのバスが出ていると親切に教えてくれ、私たちは喜んでそれに従った。ガイドブックには、さすがにこういうことまでは載っていない。
狭いバスに20分ほど揺られると、そこはもう国境近く。バスを降り、ポーランド人のバックパッカーの後ろについて歩くと、検問所が見えてきた。
ここでまずポーランドの出国手続きをする。並んでいる人はほとんどいなく、手続きは簡単に終わった。
そこを出て細い通路に沿って歩くと、今度はウクライナ側の検問所が出現する。
こちらではずいぶん待たされた。並んでいる人を見ると、買い物袋を持って日常的に国境を行き来している人が多いようだ。30分近く経ってようやく自分たちの番になる。パスポートチェックはかなりの時間がかかり、係の人はどこかに電話までしている模様。日本人をビザなしで入れてもいいのかどうか、その確認をしていたのかもしれない。
こうして晴れてウクライナに入国。後ろを振り向くと、ウクライナからポーランドに向かう車の長い列ができていた。
通りに並んでいる両替所で20ユーロほどウクライナ通貨に両替し、ここでリヴィウ行きのマイクロバスに乗り込む。
狭い車内のバスに揺られること約1時間40分、ドイツ時間の14時40分頃、バスはご覧のような豪奢なリヴィウ中央駅の前に停車した。前日の午後にベルリンを出てから、ちょうど25時間が経過していたが、なかなかスリリングな道のりだった。ウクライナと西ヨーロッパとの間には1時間の時差があるので、時計の針を1時間進める。早速ベルリンからここまでの切符代を計算してみたら、約29ユーロということがわかった。
(つづく)
(スリリングな国境越えでした。ベルリンからウクライナまでの距離感を感じていただけたら、ワンクリックお願いします!)
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すごいすごい!始まりから、もう自分も一緒に旅にでてるかんじがしたー!!!
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29ユーロ!参りました・・・
青空が映え、リヴィウの駅はさわやかですねー。
国境超えしてようやく辿り付いた先に
この駅があってはきっと感動もひとしおだったでしょうね。
そういえば、、、ピエロギ、なーんか聞いたことあるなあと
思ったら、、、食べました、食べました。
愛知万博で食べました(笑)
旅行したいな~・・・しばらくはここで
ウクライナ旅行気分を味合わせていただきます☆
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読んでいてぞくぞくしてきます。いいですね、旅に出たくなります。壁が開いた当初、リュックひとつで東欧あちこちをまわったことがありますが、それを思い出しました。
>約29ユーロ
ウクライナまでが、、これには驚きです!BerlinHbfが完成したら、陸路の交通網がこれからもっと発展してゆくことでしょうね。
続き楽しみにしています。
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>KSさん
旅の臨場感が伝わったのなら、とてもうれしいです。
>ゴン太くん
リヴィウのあの駅を見た時は、やはり喜びもひとしおでした。愛知万博にはポーランド館もあったのですか。おもしろいですねー。
>フンメルさん
「読んでいてぞくぞくしてきます」なんて言っていただけるとは、私にとっては最高の褒め言葉です(汗)。道中まだ長いですが、がんばって書きますのでお付き合いください。ロシアやウクライナ行きの列車はベルリンのリヒテンシュタイン駅発着なのですが、おそらくこれは中央駅ができても変わらないのではないかと思われます。あのガラス張りのピカピカの駅に、旧ソ連製の車両が入線することは私には想像しにくいです(笑)。