10月12日。前日は長時間の移動だったので、この日の朝はゆっくり起きる。キエフの宿はカーチャさんが予め押さえてくれていた。ホテルではなく、家具付きの普通のアパートで、短期滞在者でも借りられるようになっている。キエフのホテルは西ヨーロッパの大都市とそう変わらないぐらい高いので、短期の滞在でもアパートを借りた方が安く上がることが多いようだ。このことは、lonely planetのガイドブックにも書いてあった。
さて、キエフはどこから見て回ろうか。前日カーチャさんから、このアパートの近くに大きなマーケットがあることを聞いていたので、キエフの町歩きはまずそこから始めることにした。どこの町でもマーケットをぶらぶら歩くのは楽しい。ここでおいしいぶどうとパンを買って食べた。
ここまで毎日すばらしい天気に恵まれてきたが、ついに運が尽きてしまったか。朝から厚い雲が立ち込めている。今日は何といってもウクライナ対日本のサッカーを観る日なので、雨だけは降らないでほしいと願う。
もう10月だというのに、スイカが山積みになって売られていた。日本の感覚とは違うようだ。
キエフは人口250万人の大都市だが、町の距離感を知るためまずはできるだけ歩こうと、地下鉄を使わないで私たちは中心部へと向かった。歩けない距離では決してない。町を東西に横切る大通り、タラス・シェフチェンコ通りの入り口には、今もレーニン像が立っている。この通りの名前の由来となっているのは、ACミランのサッカー選手ではもちろんなく、ウクライナ史上最大と言われる19世紀の文学者である。アンドリュー・シェフチェンコ通りも、いずれできるのかもしれないが。
この通りを登り切ったところで右折し、オペラ座のある通りをさらに真っ直ぐ歩くと、宮崎アニメにも出てきそうな異様な形態の建築物が見えてくる。キエフの町のシンボルである、この「黄金の門」を私はまず見ておきたかった。
クラシック音楽に興味のある方なら、「キエフの門」でピンとこないだろうか。そして、この絵に見覚えがないだろうか。
19世紀ロシアの作曲家ムソルグスキーは、友人ハルトマンの残した絵画の印象をもとに「展覧会の絵」というピアノ曲を作曲したが、一番最後の曲「キエフの大門」の門とはここのことである。
コンスタンティノープル(現在のイスタンブール)にある黄金の門をモデルにこの門が建てられたのは、1037年のこと。当時はこの門が旧市街の入り口だった。1240年のモンゴル人の襲来で大部分が破壊されてしまい、現在のこの門は1982年に再建されたものである。少し見比べたらわかるが、ハルトマンの絵と実際の門とはかなり(というか全く)外観が違う。というのも、ハルトマンが生きた時代、この門は荒れ果てていて、ここに新しく門を再建する際のデッサンとして彼は描いたということらしい。残念ながら、ハルトマンが描いた大門は実現することはなかった。
ムソルグスキーはいわば架空の想像図をもとに、あの音楽を作曲したことになる。とはいえ、この門の前に立つと、私はあの壮大な終曲を思わずにはいられなかった。ベルリンに戻ると、私は早速ホロヴィッツが弾く「展覧会の絵」のCDを聴いた。大ピアニストのウラディーミル・ホロヴィッツはここキエフ出身である。
キエフの歴史は大変古い。ロシア文化の発祥とされるキエフ公国(キエフ・ルーシ)の首都となったのは、882年のこと。このソフィア聖堂は、ヤロスラフ賢王によって1037年に建てられた。ここを中心とした旧市街は丘の上にある。
いわゆるビザンチン様式の内部のモザイク画には、本当に感銘を受けた。この教会が世界遺産に登録されているのも頷ける。玉ねぎ型のドームがまた印象的。ところで、ついにしとしと雨が降ってきてしまった。
このまま地底までもぐるのではないかと思うほど、深く掘られているキエフの地下鉄。モスクワの地下鉄はこんな感じだと話に聞いたことはあるが、これにはびっくり。冷戦時代、核シェルターとしても使えるようこの深さにしたのだろうと何となく想像がいく。
下から見上げるとこんな感じ。エスカレーターの速度が異様に速いので、乗る時のタイミングをつかむのに最初は戸惑う。それはそうだ。日本のエスカレーターの速度で動かしていたら、地下鉄のホームにたどり着くまで5分ぐらいは優にかかるだろう。
昨年のオレンジ革命の際、世界中にここでの集会の映像が流れた独立広場の地下はショッピングモールになっている。マクドナルドなどもあって、西側世界と全く変わらない風景だ。
このようにハリボの屋台まで。ハリボのグミに目がないというこーどーくんも買い込むが、思ったより高かったらしく、買い過ぎたと少し後悔していたようだ。
地下から出ると、雨は一段と強くなっている。こんな天気でサッカーを観るのか、と私たちは少々足取り重く、試合の行われる五輪競技場へと向かった。キックオフは夕方の5時である。
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サッカーは次回までお預けですね(笑)
建物や風景の写真も素敵ですが市場や買い物中の人々など
「そこの生活」が見える写真は楽しいですね。
そして地下へ続くエスカレーターの長さ!
私は上野駅のエスカレーターでも「長い!」と驚きましたが
きっと比ではないのでしょうね。
それにしてもステキなエスカレータ♪
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地下鉄のエスカレーターの深さと速さ、そしてジェトンは印象に残っています。今もあのジェトンを使っているのでしょうか? 3年前はすごくちゃちなプラスチック製だったんですけれど。
独立広場の下のショッピングセンターも懐かしいです。
キエフ滞在中は、あそこのファーストフード店にほんとうにお世話になりました。
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>かおるさん
地下鉄の切符の代わりのあのジェトン、まだ使われていましたよ!ブルーのプラスチック製で、簡単に複製できるのでは、なんて思ってしまいました。
>havigoさん
上野駅の新幹線ホームのエスカレーターもそういえば長かったのですね。でも、キエフの地下鉄はあの比ではないと思います。地下に吸い込まれるようなあの感覚は、一度体験していただきたいです。
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地下鉄のエスカレーターのライトはステンドグラスですか?きれいですね。ガラスだとしたら割れることもあるのでやっぱりプラスチック?でもあのようなデザインは中々思いつきませんね。長いエスかレターも退屈しないでしょう。停電になったら怖いけど。どの写真も解説も楽しかったですよ。
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エスカレーターのライトは残念ながらステンドグラスではなく(でも確かにそう見えますね)、広告をライトアップしたものです。地下鉄のホームにはモザイク画がところどころにはめ込まれていて、とても雰囲気がありました。うっかり写真を撮り損なってしまったのが残念です。