「4つのコラージュ」 -エマール&ベルリン・フィルのメンバー-

ベルリン・フィルの今シーズンの「ピアニスト・イン・レジデンス」であるピエール=ロラン・エマールとベルリン・フィルのメンバーによるコンサートを聴く
(11日。フィルハーモニー室内楽ホール)。
「4部からなるコラージュ – モンタージュ」と題され、4つの部分が休憩をはさまずに演奏されるという、これまでに体験したことのない試みのコンサートだった。
まず第1部は「繰り返された音のためのカルテット」。ベートーヴェンの「ラズモフスキー」の1楽章、それにクルタークとバルトークの弦楽四重奏曲の抜粋が続けざまに演奏される。時代やスタイルは異なっても、同じ精神、イデーのもとに書かれた音楽を並べたということだと思う。先日のケラー四重奏団のコンサートで似た演目を聴いているので、これは比較的意図がわかりやすかった。
第2部は「少しだけ叙情(リリック)」。シューマンの「子供のためのアルバム」とシューベルトの「レントラーとワルツ」の間に、シュトックハウゼンの「黄道十二宮」というピアノ伴奏とソロ楽器のための曲が挿入されるというもの。シュトックハウゼンの曲は、さまざまな星座のもとに生まれた人々の性格を描写するという音楽で、現代音楽なのに不思議とメロディック。シューベルトと並んで演奏してもあまり違和感がなかった。
第3部は「スケルツォ・ブリリアンテ」。これには度肝を抜かれた。プログラムにはドラティ、ヒンデミット、オネゲル、クライスラー、クルターク、リゲティ、ストラヴィンスキーのソロ曲が並べられていたので、それらを1曲ずつ順番に演奏するのだと普通は思う。ところが、全ての奏者が舞台上のさまざまな場所に一堂に集まり、1人が演奏し始めると、時間をおいてその上に重なるように各自の持ち曲を演奏していったのだ。しかもこれが原曲ではありえないような超スピードで、オリジナルがどうなのかよくわからないほど。なんだかすごい光景だったが、演奏は超絶的で、普段オケではバスクラリネットというどちらかというと地味な楽器を担当しているクラリネットのマンフレード・プライス氏が、いきなり舞台上で跳ねたりくるくる回りだしたりと水を得た魚のように生き生きとしていたのが印象的だった。10分も経たないうちに、いつの間にか7曲全部が終わっていて、お客さんは唖然(笑)。
最後の第4部は「リゲティへのオマージュ」。木管四重奏と弦楽四重奏の2つのグループが舞台に同時に並んで、木管楽器のための「バガテル」や弦楽四重奏曲第2番などが自由に組み合わさって演奏される。弦をこすらせたり、リゲティの音楽特有のポルタメント奏法(?)が随所に出てきたりするのだが、いずれも集中力のみなぎる演奏で最後まで飽きさせない。締めくくりの曲は「ポエム・サンフォニック」という、オリジナルの編成は100個のメトロノームという音楽(?)。ピアノのエマールが突然立って拍子木を打ち始め、ベルリン・フィルのメンバーがやはり隠し持っていた拍子木を取り出し、一定の間隔を置いて、それぞれ違うテンポでそれに続いていく。ホールは日本の拍子木を思わせるちょっと懐かしい壮大な響きで満たされたが、これはリゲティが幼い頃によく聞いていた父親が打つタイプライターの音に触発されて書いた曲だという。
休憩なし約1時間45分のコンサート。最初はどうなるんだろうと思ったが、コンセプトはお客さんによく伝わったようで最後は盛大な拍手に包まれた。普段のオケのコンサートではありえないことばかりで逆に新鮮だったのか、どのメンバーもとても楽しそうに音楽していたのが印象的。こういう趣旨のコンサートは、ライブでないと絶対伝わらないものがあると思った。

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