「カラヤンとフルトヴェングラー」(中川右介著)

2日間通った週末のビールフェスティバルの余韻がまだ抜けませんが^^;)、最近読んだ本のこととかも少しずつ書いていきたいと思います。
まずは先月読んだ「カラヤンとフルトヴェングラー」という新書。
フルトヴェングラーとカラヤン、そして題名には入っていないがチェリビダッケという3人の指揮者をめぐる、戦中、戦後の混乱期の血みどろの権力争いが、筆者のかなり強い主観も交えて描れている。
これまであまり知ることのなかったフルトヴェングラーの意外な一面にも結構驚いたが、私としては「帝王」になる以前のカラヤンの話がとりわけ面白かった。
「カラヤン」は間違いなく私をクラシック音楽の世界に誘ってくれたうちの一人であるけれど、この人の録音や経歴を知るにつれていろいろな疑問が湧いてくることがある。例えば、
「1938年のカラヤン最初の録音は、(ベルリン・フィルでなく)なぜベルリンのシュターツカペレだったのか?」
「カラヤンが合唱曲で必ずといっていいほど起用するウィーン楽友協会合唱団というのはどういう団体なのか?(他の著名指揮者がこの団体を起用することはまずないので)」
「1953年の時点で、カラヤンがそれまでベルリン・フィルを振ったのは10回に満たないのに(ちなみに、ライバルのチェリビダッケはすでに403回も振っていたという)、なぜその数年後ベルリン・フィルの監督になれたのか?」
この本を読むと、それらの出来事の裏にある生々しい政治的な背景、カラヤンの策謀やその時々の思いが浮かび上がってくる。カラヤンにとって大きな転機となった、1955年のベルリン・フィルの初めてのアメリカ・ツアーが「首相のアデナウアー自身が企画したようなものだった」というのにも驚いたが、いまでもドイツでは政治と芸術の結び付きが日本とは比較にならないほど強いのをよく感じる。
ところで、今年創立125周年を迎えるベルリン・フィルは、記念の年にこれまで深くメスの入ることのなかったナチス時代のこのオケについて追求することを発表している。8月末からホール内で展示会が始まる他、ミシャ・アスターによる「帝国オーケストラ」という本の出版もその一環だ。中でも興味を引かれるのが、rbbで11月に放映される75分のドキュメンタリー番組(監督は”Rythm is it!”のエンリケ・サンチェス・ランチ)。1945年以前にベルリン・フィルで演奏していた最後の生き残りメンバー2人のインタビューも含まれているらしく、ぜひ見てみたいと思う。
写真は昨年再オープンしたフリードリヒ・シュトラーセ駅前のアドミラル・パラスト(Admiralspalast)。旧フィルハーモニーが44年に1月に空爆されてから、この劇場に移して終戦直前までベルリン・フィルのコンサートは続けられたという。
今日は広島の原爆の日だ。あの年から62年。昨年の秋に初めて広島を訪れたので、いろいろな情景が目に浮かんでくる。



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13 Responses

  1. しゅり
    しゅり at · Reply

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    マサトさん、こんにちは!
    なんだか見覚えのある建物が・・・。
    これってもしや(私にとって問題の例の)Melia Berlinの
    隣の建物ですよね????
    Admiralspalastだったのですか???
    日本でいう1階部分ってカフェ?ですよね?
    なんだろう、この建物と思いながら何度も往復したのですが・・・。
    そういえば中庭?のような奥にKasseと書かれた看板とか駐車場とかも
    あるみたいだったしずっとずっと疑問でした。
    ちなみに涙の宮殿も工事中で囲いがしてあって
    これも私の泊った部屋からよぉーく見えたのですが
    涙の宮殿だと気がついたのは帰国後・・・・。
    やんなっちゃいます(汗)。

  2. しゅり
    しゅり at · Reply

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    マサトさん、こんにちは!
    なんだか見覚えのある建物が・・・。
    これってもしや(私にとって問題の例の)Melia Berlinの
    隣の建物ですよね????
    Admiralspalastだったのですか???
    日本でいう1階部分ってカフェ?ですよね?
    なんだろう、この建物と思いながら何度も往復したのですが・・・。
    そういえば中庭?のような奥にKasseと書かれた看板とか駐車場とかも
    あるみたいだったしずっとずっと疑問でした。
    ちなみに涙の宮殿も工事中で囲いがしてあって
    これも私の泊った部屋からよぉーく見えたのですが
    涙の宮殿だと気がついたのは帰国後・・・・。
    やんなっちゃいます(汗)。

  3. gramophon
    gramophon at · Reply

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    そんな所にアドミラル・パラストは在ったんですね。知りませんでした。

    通常、普通の人が知らない舞台裏の駆け引きが色々出てて、この本は面白かったですね。

    カラヤンはベルリン・フィルではなく、げーリングの招きで最初にStaatsoperを振った所為なのでしょうね。その最初の録音、《魔笛》序曲のSP盤を持ってますが、実に平凡な演奏です。とても、のちに帝王と呼ばれるようには全然感じられません。

  4. gramophon
    gramophon at · Reply

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    そんな所にアドミラル・パラストは在ったんですね。知りませんでした。

    通常、普通の人が知らない舞台裏の駆け引きが色々出てて、この本は面白かったですね。

    カラヤンはベルリン・フィルではなく、げーリングの招きで最初にStaatsoperを振った所為なのでしょうね。その最初の録音、《魔笛》序曲のSP盤を持ってますが、実に平凡な演奏です。とても、のちに帝王と呼ばれるようには全然感じられません。

  5. kon'no
    kon'no at · Reply

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    PASS:
    今日の産経に伯林伝で以下の記事があります。

    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070806-00000907-san-int

  6. kon'no
    kon'no at · Reply

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    今日の産経に伯林伝で以下の記事があります。

    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070806-00000907-san-int

  7. kon'no
    kon'no at · Reply

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    今日の産経に伯林伝で以下の記事があります。

    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070806-00000907-san-int

  8. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >しゅりさん
    Melia Berlinはいかがでしたか?
    まさにその隣がアドミラル・パラストなわけです。僕もまだあの中で劇を見たことはないのですが、中庭を抜けたところにカッセがあって、劇場への入り口もそこからのはずです。涙の宮殿は工事中だから、よくわからなかったでしょう。

  9. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >しゅりさん
    Melia Berlinはいかがでしたか?
    まさにその隣がアドミラル・パラストなわけです。僕もまだあの中で劇を見たことはないのですが、中庭を抜けたところにカッセがあって、劇場への入り口もそこからのはずです。涙の宮殿は工事中だから、よくわからなかったでしょう。

  10. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >gramophonさん
    意外かもしれませんが、アドミラル・パラストはまさにあのフリードリヒの駅前です。Sバーンのホームからもよく見えますね。

    カラヤンの最初の録音はそんな感じなんですか。ただ、この本を読んでから、帝王以前のカラヤンの録音がまた違った趣で聞くことができそうです。

  11. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >gramophonさん
    意外かもしれませんが、アドミラル・パラストはまさにあのフリードリヒの駅前です。Sバーンのホームからもよく見えますね。

    カラヤンの最初の録音はそんな感じなんですか。ただ、この本を読んでから、帝王以前のカラヤンの録音がまた違った趣で聞くことができそうです。

  12. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >kon'noさん
    先日はビール祭りでどうも(笑)。

    教えていただいた新聞記事、興味深く読みました。例えば、ドイツとオーストリア、ベルリンとウィーンとでもカラヤンの受容のされ方というのは違うのでしょうかね。僕はベルリンで今まで、カラヤンのことをやたらと悪く言う人には出会ったことがないのですけど。

  13. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >kon'noさん
    先日はビール祭りでどうも(笑)。

    教えていただいた新聞記事、興味深く読みました。例えば、ドイツとオーストリア、ベルリンとウィーンとでもカラヤンの受容のされ方というのは違うのでしょうかね。僕はベルリンで今まで、カラヤンのことをやたらと悪く言う人には出会ったことがないのですけど。

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