12月は宗教音楽のコンサートがとても多いのですが、めったに聴けないという意味で貴重な機会だったのが、ベルリン・フィルが演奏するドヴォルザークのレクイエムでした(7日)。「新世界」や「ドボコン」などと比較するまでもなく、この「ドボレク」は本当に演奏されることが稀で、ベルリン・フィルがこの作品を取り上げるのも実に44年ぶりだとか!しかしこれがすばらしく、充実の1時間40分でした。
ドヴォルザークのレクイエムはあの交響曲第8番やピアノ3重奏曲の「ドゥムキー」とほぼ同時期に書かれ、1891年にバーミンガムで初演されたことを見ると、この作曲家の円熟期の作品のひとつと見ていいのでしょう。全体は13部から成り、ヴェルディほど激烈な表現は見られないものの、ドラマチックな迫力は十分ですし、代わりにドヴォルザークならではと言うべきか、自然からそのまま零れ落ちてきたような瑞々しいメロディーが随所から聴こえて来ます。
何といっても、プラハ・フィルハーモニー合唱団が出色の出来でした。わざわざプラハから呼んで来ただけのことはあります。ドラマティックな部分では時にベルリン・フィルのトゥッティを突き抜けてくるほどの迫力でしたし、響きのバランスも最上。ところどころで聴かれる男声合唱のアカペラは、本当に息を飲むような静寂な時間でした。壮大なスケールのフーガが登場する第2部は特に圧巻で、それらに触発されたのか、ニコラ・ルイゾッティ(写真)のイタリアオペラを思わせるやや派手でドラマチックな音楽作りも、ここではプラスに作用していたように思います。聴けてよかったです。
Berliner Philharmoniker
Nicola Luisotti, Dirigent
Anja Harteros, Sopran
Nino Surguladze, Mezzosopran
Giuseppe Sabbatini, Tenor
Giacomo Prestia, Bariton
Prager Philharmonischer Chor
Lukáš Vasilek, Einstudierung
Antonín Dvořák
Requiem op. 89
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20数年前、この曲を日本の合唱団で歌いました。忘れられない音楽です。特にアカペラの「ピエ・イエス」などが印象的です。確かに、「スターバト・マーテル」にくらべて演奏頻度がいちじるしく低いですね。ベルリンフィルに登場したことで、電波にも乗るでしょうし、演奏が増えるといいのですが。
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>焼きそうせいじさん
なんと、この曲を実際に歌われたことがあるとは!
「ピエ・イエス」を聴きなおしてみましたが、短いながらも美しい音楽ですね。「スターバト・マーテル」は実はまだちゃんと聴いたことがないのです。「レクイエム」よりは演奏頻度が高そうですが、それでもめったなことではプログラムに見ないのでチャンスがあったら聴き逃さないようにしないと。