アウシュヴィッツから帰って数週間後の昨年12月半ば、ヴェディング地区に住む友達からちょっと耳寄りな話を聞いた。彼女が住むアパートの前にいくつかの新しい「つまずきの石」が埋め込まれるらしく、その後小さなセレモニーが行われるというのだ。つまずきの石はベルリンの通りを歩いているとよく見かけるが、いつ、どのようなきっかけで埋め込まれるものなのかは何も知らなかった。かなり興味を引かれたので、その日の昼ヴェディングのオステンダー通り2番に行ってみることにした。
1時少し前、その場所に着くともう作業が始まっていた。「つまずきの石(Stolpersteine)」は、ベルリンに生まれ現在はケルン在住のアーティスト、グンター・デムニッヒ(Gunter Demnig)氏が1992年に始めたプロジェクトで、ナチス政権の犠牲になったユダヤ人、反体制活動家、同性愛者、ロマといった人々を弔い、記憶の忘却から防ぐために、彼らがかつて住んでいた場所に赴いて、名前、生れた年、死亡年とその場所が刻まれた10センチの正方形の石を、その町の協力を求めながら埋め込んでいったのだ。ベルリンで初めてつまずきの石が埋められたのは、1996年のこと。現在まで、その数はドイツを中心に約1万4000個にも達するという(日本にもあるらしいのですが、本当?)。
これがそのデムニッヒ氏ご本人で、カウボーイハットがトレードマークらしい。1万個以上の石は全て本人が現地に赴いて、自分で埋め込んだのだろうか?だとしたらすごいことである。まず路上の敷石を取り除き、次にコンクリートの土台に固定されたつまずきの石を埋め込んで、いま最後の仕上げをしているところ。
アパートの住人や通りすがりの人が彼の周りに集まり、その様子を興味深く見守っている。5つの石の埋め込み作業は15分ぐらいで終わり、その後小さなセレモニーが始まった。
(つづく)
SECRET: 0
PASS:
約1万4000個ですか、それは凄い数ですね。ネオナチの連中が一つ一つ撤去できる数字ではないですね。彼らは、それだけこつこつとした仕事の出来る連中ではありませんし。
SECRET: 0
PASS:
わぁいわぁいついに!!!続きも楽しみにしています。
日本にもあるなんてびっくりです。帰国したら探さなくっちゃ!
SECRET: 0
PASS:
>pfaelzerweinさん
約1万4000個という数は、このとき話した牧師さんから聞いたのですが、ちょっと多いかなという気はします。手元の資料では、ドイツだけで約7500個だそうですから。他の国にどれだけあるのかも知りたいところです。
SECRET: 0
PASS:
>にわやまさん
ようやく(!)あの日のことをアップしました。
次回は牧師さんに突撃インタビューしたときの話を書くつもりです。
SECRET: 0
PASS:
つまずきの石はベルリンでずいぶん見ましたが、ケルン在住の
アーティストによるものだとは初めて知りました。
また1992年から、と比較的、新しいプロジェクトであることにも
驚きました。
ドイツにいると「戦後は終わっていない」を実感することが多いですね。
広島、長崎のことすら、だんだんと風化していきそうな日本と大変な
違いだと思います。
SECRET: 0
PASS:
>akberlinさん
そうなんですよ、ケルンの方なんです。せっかくの機会なので話しかけてみようと思ったんですが、埋め込み作業が終わったら、いつの間にかいなくなっていました。
>ドイツにいると「戦後は終わっていない」を
まったく同感です。いかにあの大戦が世界を変えてしまったかを実感する機会が増え、それが今の自分のどこかでつながっているということを意識するようになりました。
SECRET: 0
PASS:
>jardin-de-parisさん
はじめまして。リンクありがとうございます。
このブログはベルリンの話が中心ですが、ドイツに来られる際に何かのご参考になれば幸いです。
SECRET: 0
PASS:
先日、プラハに行った折、同じ石を見つけました。
わたしのブログで中村さんのこの記事を紹介させてもらっています。
SECRET: 0
PASS:
ウメさん
お久しぶりです。ブログでのご紹介、ありがとうございました。プラハでのつまづきの石は初めて見ました。当然ながらチェコ語で書かれてあるのですね。おそらくポーランドや周辺の国にもあるのでしょう。旅で訪れるときは注意して歩いてみたいと思います。
SECRET: 0
PASS:
ドレスデンの宮廷教会正面にあるのを見つけてきましたよ。
SECRET: 0
PASS:
HIDAMARIさん
コメントありがとうございます。つまずきの石はドレスデンにもあるのですね。実は日本にもあると聞いたことがあるのですが、まだ確認できていません。