ちゃりんこ旅日記(2) – 初日〜4日目まで –

台風9号が過ぎ去った8月12日。旅は幕を開けた。「自転車だけで無事に九州までたどり着けるのだろうか」。
そんな不安や緊張も、青い空と海を見ながら湘南海岸を走り抜けるうちに次第に消えていった。お昼前に小田原に入り、本州で一番の難所である箱根の山登りも、自転車を降りることなく一気に頂上まで登り詰めた。初日は133kmを走り切り、静岡県の富士市までやってきた。
疲労と筋肉痛と猛暑に泣かされながらも、2日目(~浜松)、3日目(~知多半島)も無事に乗り越える。4日目は名古屋からのスタート。木曽川沿いに北上し、岐阜県に突入。途中、『養老の滝』という看板。「確か、滝の水がお酒になったという伝説の滝だ」。いつか古文の授業で習ったのを思い出した。「本当にあったんだ…。行ってみたい」。寄れば大きなタイムロスになる。でも行かないで後悔するのはイヤだ。「もうどうにでもなれ。何でも見てやろう」。そんな気持ちで行った。自転車を降り、しばらく山を登ると轟音と共に見えてきた養老の滝。そのあまりの迫力に目を奪われた(来て良かった!)。
再び勢いよく自転車を漕ぎ出し、関ヶ原の決戦場跡で天下を獲った気分に浸り、米原で見たピンク色の夕日に感動する。それらの興奮がパワーに変わり、自転車のスピードは更に上がる。19時半、なんとか滋賀県は彦根に到着。汗と疲れを洗い流しに銭湯へ行くと、人々の話し声はいつの間にか関西弁に変わっていた。「あぁ、ついに西日本に来たんだな」と実感。4日目までの総走行距離は460km。明日は西の都、京都。いよいよツール・ド・西日本は本編を迎える。「旅は寄り道」、そう感じた想い出に残る一日だった。
(つづく)



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