Potsdamer Straße (2011.1)
ポツダム広場からM48かM85のバスに乗ってポツダム通りを南下すると、フィルハーモニーや国立図書館、新ナショナルギャラリーなどの斬新な建築が並ぶ「文化フォーラム」を過ぎ、運河にかかる橋を渡った辺りから、風景ががらりと変わることに気付く。戦前の古いアパートと戦後の安普請の建物が混在し、店の種類も道行く人々もどこか雑多。独特の活気は感じられるが、少なくとも美しい街並みとはちょっと言いがたい。
こんな背景がある。東西分断時代、壁に近いポツダム通りは、文字通り西ベルリンの果てに位置する場所だった。家賃が安いためトルコやアラブ系の住民が多く、街角にはフィクサーや売春婦が立ち、社会問題の発火点としても度々取り上げられた。映画『クリスチーネ・F』や橋口譲二の『ベルリン物語』に描かれた、この通りの場末感は今でもどこか残っている。
このポツダム通りが、最近変わってきたという。「ここ1、2年の間に、ポツダム通りに引っ越すギャラリーが増えています」とベルリン在住のアートコーディネーターの河村恵理さんから聞き、Klosterfeldeというギャラリーを訪ねてみた。
ポツダム通りにあるKlosterfelde。評価の高いギャラリーに描かれるバナナマークが目印
ギャラリーと言っても、アパートの入り口に小さな表示があるだけで、何も知らなければ通り過ぎてしまうだろう。知人のアパートを訪問する時と同様、呼び鈴を押して玄関のドアを開けてもらう。最初は少し勇気がいるかもしれないが、臆する必要もない。階段を上って2階の入り口からギャラリーに入ると、真っ白な空間が目に飛び込んできた。部屋は改装されているものの、天井に見られる19世紀末のアパート特有の美しい装飾は、きれいに残されている。古いアパートとコンテンポラリーアートとの組み合わせが実に新鮮だ。
ここで働くジル・エッガーさんが、ポツダム通りに引っ越してきた理由を説明してくれた。「最近までギャラリーはチェックポイント・チャーリー近くのツィンマー通りにあったのですが、オーナーのマルティン・クロースターフェルデは、常にベルリンの新しい場所と空間を探し求めていて、その結果見付けたのがここだったのです」。
ベルリンで最も影響力の強いギャラリーの1つ、Arndtも昨年4月にポツダム通りに越してきた。ヴァリエテのヴィンターガルテン脇のアパートの3階。長い廊下を突き抜けた奥にある、19世紀末に高貴な市民が所有していた元ダンスホールの部屋が一際印象的だった。過去の人々のぬくもりがどこか残ったようなこの空間を、オーナーのマティアス・アルントが見付けた瞬間に惚れ込み、引っ越しを決意したという。
先の河村さんは語る。「ベルリンのアートシーンというのは、本当によく動いています。ギャラリーの引っ越しの多さが、アートシーンを進化させていると言っても過言ではないと思います」。
ポツダム通りから横に延びるクアフュルステン通り(Kurfürstenstraße)やポール通り(Pohlstraße)にも、ギャラリーや面白そうな店をちらほら見かけるようになった。
バスから眺めた限りでは、ポツダム通りの変化は見えにくい。裏に隠れていることが多いのだ。それだけに、発掘のし甲斐もまたある。ポツダム通りの情報は、www.potsdamer-strassekompakt.deなどをご参考に。英語版もあるが、やはりドイツ語版の方がより充実している。
(ドイツニュースダイジェスト 1月14日)
Information
クロースターフェルデ
Klosterfelde
1996年にハンブルク出身のマルティン・クロースターフェルデが始めたギャラリー。2月初頭までTobias Buche展を開催。2軒隣のポツダム通り97番地の姉妹ギャラリーHelga Maria Klosterfelde(写真)では、写真や映像を中心に扱い、元文房具店の引き出しや床をそのまま生かした内装も一見の価値がある。
オープン時間: 火~土11:00~18:00
住所: Potsdamer Str. 93, 10785 Berlin
TEL:(030)283 53 05
URL: www.klosterfelde.de
ギャラリー・アルント
Galerie Arndt
ギャラリー・アルントのかつてダンスホールだった部屋
1994年ハッケシェ・ヘーフェにArndt & Partnerとしてオープンして以来、アウグスト通り、ツィンマー通りなど、常にベルリンの先端をゆく場所に居を構えてきた。これまでトーマス・ヒルシュホルン、ソフィ・カルなど国際的作家の作品を紹介し、2月5日まではクロアチア人作家Julije Knifer展を開催。
オープン時間: 火~土11:00~18:00
住所:Potsdamer Str. 96, 10785 Berlin
TEL:(030)206 138 70
URL: www.arndtberlin.com
SECRET: 0
PASS:
ギャラリーとバナナマークにはそんな関係があったのですね。
以前、シュトゥットガルトの州立美術館を訪れた際、入り口のところにバナナマークがあるので不思議な感じがしたのですが、ようやく意味がわかりました。
調べてみるとこちらの方が書いてるようです。
http://www.bananensprayer.de/pages/index.html
アンディ・ウォーホールによるこのアルバムカバーとよく似ていますが、何か関係でもあるのでしょうか(笑)。
http://en.wikipedia.org/wiki/File:Velvet_Underground_and_Nico.jpg
SECRET: 0
PASS:
Satoさん
コメントありがとうございます。
このバナナマークは明らかにウォーホルのバナナですよね。ただ、どういう由来によるものかは私もわかりません。どなたか教えていただけるとありがたいのですが・・・。