ポツダム広場の「アルカーデン」に代表されるような大型ショッピングモールは、ベルリンに限らず、現代の消費生活の中心的存在と言えるだろう。便利な反面、中に構えているのは大手スーパーやドラッグストアのチェーン店、お馴染みのファストファッション店ばかり。どこでも代わり映えしないのもまた周知の事実だ。
このショッピングモールの「元祖」と言えるのが、マーケットホールを意味するマルクトハレである。ベルリンの人口が急増した19世紀末、この街には14の屋内市場が立て続けに建てられた。屋外の市場が主流だった当時、衛生面、また雨から商品を守れるという利点からも、マルクトハレはたちまち市民生活に浸透したのだった。
戦災を経て、現在まで生き残っているマルクトハレは市内で5つほど。その1つ、地下鉄U1のゲルリッツ駅(Görlitzer Bahnhof)から徒歩10分弱のところにあるマルクトハレ・ノインを4月の週末に訪ねてみた。
「9番目のマルクトハレ」を意味するここを訪ねたのは、近年小売業が衰退し、寂れた状態のマルクトハレが多い中、ある成功を収めていると聞いていたからだ。
堂々たるレンガ建築の中に入ると、高い天井にまず驚いた。この時代に建てられた駅や教会とも共通した、ベルリンが欧州屈指の大都市へと上り詰める予感に溢れている。そこに無数の店舗が並び、行き交う人々でごった返していた。
3人の仕掛人によって、マルクトハレ・ノインが再オープンしたのは2011年10月のこと。新しいコンセプトでは、地域産や季節もののオーガニック食品の提供にこだわり、生産者から直接仕入れることを重視した。さまざまな実験や修正を繰り返した結果、今の形態に落ち着いた。営業を金土のマーケットに重点を置いたことも、成功の要因と言えるだろう。
ブランデンブルク産の野菜、パン、ケーキにマカロン、薫製の魚、どれも新鮮そうで、威勢のいい声が飛び交う。中央にあるカンティーネという名のイートインコーナーでヴィーガンの野菜グラーシュを食べてみたら、確かに美味しい。子ども連れの家族も多く、奥では小さな音楽ライブも行われていた。
一緒に行ったドイツ人の友人がこんな感想を口にした。「うーん、みんなビオやエコの信者って感じだね。トルコ系住民が多い地区なのに、彼らの姿をほとんど見ないのもちょっと不自然」
この界隈に10年以上前から住む彼の言い分もわかる。確かに品質を重視している分、値段はやや高めだ。また、最近のプレンツラウアー・ベルク地区に見られるようなプチ・ブルジョア的な雰囲気が漂っていると言えなくもない。
それでも、数年前に初めてマルクトハレ・ノインを訪れ、その寂れ具合に唖然とした私にとって、この活気は自分の知らない往年のそれを彷彿とさせ、ショッピングモールにはない市場を徘徊する楽しみを存分に味わったのだった。よし、週末はまたマルクトハレへ行こう!
(ドイツニュースダイジェスト 5月3日)
Information
マルクトハレ・ノイン
Markthalle IX
1891年10月にオープンしたクロイツベルク地区のマルクトハレ(通りの名前から、アイゼンバーン・マルクトハレと呼ばれることも)。現在は食べ物だけでなく、ハンドメイドの製品なども扱っている。また、年に4回開催される„handmade supermarket “ では、手作りのオーナメントやコスメ、セラミック製品が販売され、人気を集めている。
オープン(マーケット):金土 10:00~18:00
住所:Eisenbahnstr. 42/43, 10997 Berlin
電話番号:030-577094661
URL: www.markthalleneun.de
マールハイネッケ・マルクトハレ
Marheineke Markthalle
クロイツベルク西部のマールハイネッケ広場に面している。2007年の大改装の際、南側の一面にガラスを大胆に取り入れ、雰囲気ががらりと変わった。「オーガニック、新鮮、地産」をモットーに、食材や豊富なイートインコーナーが並ぶ。マルチカルチュラルな土地柄を反映して、売り場の店員さんも多様だ。U7のGneisenaustr.駅より徒歩5分。
オープン:月~金 8:00~20:00、土 8:00~18:00
住所:Marheinekeplatz 15, 10961 Berlin
電話番号:030–61286146
URL: www.meine-markthalle.de