この夏、岩手県の高校生5人がベルリンの高校生と交流しました。主催したのはNPOの「絆・ベルリン」。2011年3月の東日本大震災後、ベルリン在住のドイツ人と日本人によって組織されたこの団体は、同年秋から今年5月まで、岩手県大船渡市を中心に陸前高田市や大槌町などで計4回のボランティア活動を行ってきました。
「最初のボランティア活動で大船渡高校の生徒たちと交流したとき、彼らから『地域復興のために役立ちたい。そのために、外国の人たちと交流をして見聞を広めたい』という話が出ました。そこで彼らをドイツに招待し、同じ年代のドイツの若者と交流して少しでもドイツの社会を知ってもらえれば、何かの役に立つだろうと考えたのです。具体的に動き出すまでに時間は掛かりましたが、幸い日本側の窓口となるNPO『遠野まごころネット』、助成金を出してくださるロベルト・ボッシュ財団との共催という形で交流プロジェクト『翼』が実現することになりました」と、代表の福澤啓臣さん(ベルリン自由大学元准教授)。
今回ベルリンを訪れたのは、面接で選ばれた被災地の久慈、宮古、釜石、大船渡の高校生5人。彼らはドイツ人家庭でのホームステイやドイツの高校生との交流を通して、9日間にわたり現地の実際の生活や社会を学びました。
8月10日、福澤さんのお宅で行われたワークキャンプにお邪魔すると、日独の生徒が1人ずつ、食文化やスポーツ、グリム童話、音楽などのテーマで発表し、それについて討論している最中でした。ドイツ側の参加者はベルリンのカニジウス校や自由大学で日本語を学ぶ若者で、日本語を共通語として活発な意見交換が行われました。
参加者の声をご紹介しましょう。宮古高校2年の阿部美月さん:「初めての海外で緊張しましたが、毎日とても充実しています。ベルリンは都会なのに自然が多く、地元の岩手に近い感覚がありますね。カニジウス校の日本語の授業を見学する機会があったのですが、日本と違って生徒主体で行われているのがすごいなと思いました。将来海外で日本語を教えたいという夢があり、いつかまたドイツに来たいです」
久慈東高校1年の山根省吾君:「現地の生徒の前で震災時の様子や被災地の話をしたら、皆さん真剣に耳を傾けてくれました。ベルリンは至る所で歴史に触れ合える街ですね。大好きなサッカーも本場で体験してみたいです」
「翼」プロジェクトでは2017年まで計5年間、毎年5人の高校生がドイツに招待されます。「『絆・ベルリン』のボランティア活動が一区切り付き、今後は『翼』のような息の長い復興支援活動を続けていきたい」と語る福澤さん。若い世代による実りある交流が蓄積されることを願いたいと思います。
www.kizuna-in-berlin.de
(ドイツニュースダイジェスト 9月6日)