坂本あゆみ監督にお会いしたのは、今年2月のベルリン国際映画祭の期間中でした。それまでこの監督のことは全く存じ上げていなかったのですが、たまたまあるベルリン在住の知人がこの映画の関係者とお知り合いで、私にインタビューの仲介をしてくださったのでした。そんな不思議なご縁で、坂本監督の初監督作品である『FORMA』を観に行ったのですが、今回のベルリナーレで観た映画の中で(もっとも、そんなに多い数ではないけれど)もっとも強い印象に刻まれた作品となりました。約2時間半という長丁場を一切音楽を使わずに描いているにも関わらず、緊張感を途切らさずに観ることができましたし、やがて悲劇へと至る主人公の女性2人を「多面的」に描くその手法にも唸らされ、終演後は深い、そして複雑な余韻が残りました。坂本監督はこの映画を約6年の歳月をかけて完成させたそうで、じっくり考えて納得のいくものを作り上げていくその姿勢には、私自身刺激を受けました。
つい数日前、『FORMA』が第38回香港国際映画祭でもスペシャル・メンション(特別)賞を受賞したという朗報が入り、先月ドイツニュースダイジェストに掲載されたインタビュー記事を改めてここでご紹介しようと思いました。日本では8月16日(土)より渋谷のユーロスペース他にて公開されることが決まったとのこと。機会がありましたら、この注目すべき映画監督のデビュー作をぜひご覧いただきたいと思います。