地下鉄のヘルマンプラッツ駅から5分ほど歩くと、ハーゼンハイデ公園の向かいにカフェ「Macha-Macha」がありました。店内に入ると、白い壁とスカンジナビア産の松材で作られたカウンターのテーブルに明るい光が差し込みます。ベルリンに本格的な日本茶カフェがオープンしたと聞いてやって来た私を、ドイツ人オーナーのエリックさんが迎えてくれました。
子供の頃、日本庭園を通して日本の文化に興味を持つようになったというエリックさん。そもそもなぜベルリンにカフェを作ろうと思ったのでしょう。
「2012年に四国の八十八ヶ所霊場を巡ったときのことです。ふと緑茶を飲みたいと思ったのですが、カフェやスターバックスはあるのに、日本茶を飲める茶屋が見当たらない。その数日後、日本での緑茶の消費量が30年前から減り続けているという英字紙の記事を読みました。しかもシェアが増えているのはペットボトルなどのお茶ばかり。さらにその数日後、今度は民宿で出会った長年お茶の販売に携わっていたという方がこんなことをおっしゃいました。『緑茶に再びチャンスが訪れるとしたら、それは日本茶が海外で人気になり、逆輸入される形でだろうな……』と。いろいろな偶然と思いが後でひとつになり、『ベルリンで日本茶に絞ったカフェを作ろう!』と思ったんです」
エリックさんはその後、京都・宇治の信頼できる日本茶の輸入業者と知り合い、共同パートナーのデザイナーと日本を旅しながら、彼に内装のアイデアを膨らませる機会を作り、2014年10月、「Macha-Macha」はオープンしました。
和紙を壁紙に使った店内の奥には、茶室があります。日本の伝統的な形を取りながら、意表を突く素材を使うなど新しい要素も取り入れ、静寂の中でゆったりとくつろげる空間を提供しています。
エリックさんが丁寧に入れてくれた「かぶせ茶」のおいしかったこと。さらに人気メニューの抹茶チーズケーキの濃厚さとのコンビネーションを楽しみながら、しばし幸せなひとときを過ごしました。お茶のメニューは煎茶(3.50ユーロ)から一番高い玉露(10ユーロ)、さらに抹茶ラテまで値段も種類も多種多様。ベルリンのカフェの平均に比べると若干高めともいえますが、エリックさんは「利益を生み出すことを最優先させるのではなく、健康的でおいしいお茶を味わっていただくお客さんと、ここで働く従業員の双方が『喜び』や『意義』を感じられる経営を目指していきたい」とその経営理念を語ります。メニューには、「当店では適切な俸給の代わりに、お客様からチップはいただきません」と書かれていました。
エリックさんのほか、懐石料理をテーマに博士論文を書いたというマネージャーのマルテさんや、日本人スタッフも皆優しく、このカフェの心地良さとこだわりの強さにすっかり惹かれました。取材中、地元のパンク風の若者数人が茶室に入っていく様子を目撃。日本茶の魅力がこれからベルリンでじわじわと広がっていく予感がしました。営業時間は、水〜土13:00〜19:00、日13:00〜18:00。www.facebook.com/macha.macha.japanese.tea
(ドイツニュースダイジェスト 2月19日)