ベルリンの市立博物館の一つ、メルキッシェ博物館(Märkisches Museum)で展覧会「ようこそドイツへ(Willkommen in Deutschland)」が開催されています。これは、ドイツに移民や難民としてやって来た子供たちが通うベルリン市内の学校と、市立博物館とが共同で実現したプロジェクトです。「故郷から遠く離れた子供たちは、ベルリンでどういう毎日を過ごしているのだろうか?」。日々報道される難民に関するニュースを見ながら時々抱く疑問に対して、何かしら答えをくれるかもしれない。そんな思いから4月29日に行われたオープニング行事に足を運んでみました。
関係者のあいさつとシリア出身の音楽家によるパフォーマンスの後、展覧会場に案内されました。100点以上の作品は、ベルリンの各学校の「歓迎クラス」で主にドイツ語を学ぶ生徒(7歳から19歳まで。出身国は30以上に上るそうです)が、絵本作家パトリツィア・トーマ氏による数週間のワークショップの過程で描いたもの。自分の出身国にまつわる小さな物語がドイツ語とそれぞれの母語で表現されており、ベルリンへの長く不安な道のりを文章とともに描いたコソボ出身の14歳の生徒、内戦の最中にあるシリアのアレッポ城とベルリンのブランデンブルク門を並べて描いたシリア出身の16歳の生徒など、彼らが味わった過酷な境遇を主題にした作品が並ぶ一方、スポーツに興じる姿や家族との団らんなど、普遍的な日常生活を題材にした絵にも出会いました。
ワークショップの参加者の一人、アフガニスタン出身のリマさん(19歳)と話すことができました。彼は9歳のとき、戦争状態にあった故国から家族と脱出し、イラン、トルコを(徒歩とバスで)経由してギリシャへ逃れたそうです。その後、イタリアに2年、スウェーデンに3年住んだ後、ベルリンへ移住。現在はパンコウ地区の職業学校に通うリマさんは、「将来の夢は自動車の修理工になること」と嬉しそうに話してくれました。「イタリアやスウェーデンでは、住まいや食べ物、学校など必要なものは与えられていましたが、自分たちはあくまで『客人』なのだという意識が消えることはありませんでした。でも、ベルリンでは自分の家にいるのと同じように過ごすことができます」という彼の言葉は、受け入れる側が何を大切にすべきかを示唆しているように感じました。
ベルリンの市立博物館はこれまで一貫して難民への歓迎の立場を取っており、関連施設では難民の人びとに対して入場無料としています。当展覧会は9月9日までの開催。www.stadtmuseum.de
(ドイツニュースダイジェスト 5月20日)