今年のドイツでは、5年に一度カッセルで開催される現代アート展「ドクメンタ」や10年に一度のミュンスターの彫刻プロジェクトが大きな話題を集めている。それらに比べると知名度は劣るかもしれないが、この4月からベルリン東部のマルツァーン・ヘラースドルフ地区で開催されている国際庭園博覧会(略してIGAイガ)も、当地ではよく話題になる。7月に入ってからの不安定な天気とにらめっこしながら、ある平日、ようやく家族で出かけることができた。
会場は東の郊外だが、行き方は意外と簡単。中心部からSバーンのS5に乗り、ヴーレタール駅で降りると、向かいのホームに地下鉄U5が接続している。最近リニューアルされたキーンベルク駅で下車して地上に上がると、IGAのシンボルともいえるゴンドラが見えた。ここがメインの入口だ。
今回の博覧会場は、「世界の庭園」で有名なマルツァーン保養公園(当連載の第16回・2011年11月で紹介済み)を拡張する形で整備された。メインの入口から西側の主会場まで1.5キロのゴンドラが結んでいる(1日券で何度でも乗り降り自由)。
ベビーカーごと乗り込めるゴンドラは、ふわっと浮遊すると、そのまま標高102メートルのキーンベルクという山まで一気に上昇。緑の向こうには、東独時代に建てられたカラフルな団地街が無数に広がるパノラマが展開され、私たちのテンションはいきなり上がった。山頂で降りることもできるが、まずは終点まで乗り通した。
ゴンドラを降りると、目の前にBlumenhalleと呼ばれるホールがあり、園芸のショーが展示されている。なかなか見る機会のないエキゾチックな花から、ジャガイモやニンジンなど、野菜を織り交ぜた展示もあって楽しめた。このホールと北側のビジターセンターBesucherzentrumに面してレストランやソーセージのスタンドがある(地元の平均よりは高めなので、飲食物を持参するのも手かもしれない)。
その近くに新設された古代劇場風のアリーナでは、会期中多くのコンサートやイベントが行われる。展示の中で新鮮に映ったのは、墓地に特化した花の展示コーナーGrabgestaltungだった。墓に添えられる花もまた美しい。もちろん、以前からここにある様々な庭園(オリエント、英国、迷路風、韓国、日本など)も、さすがに手入れが行き届いている。
中国庭園の茶館で一休みしてから、山に登る。山といっても、氷河時代に生まれた高地の上に、1970年代この一帯の高層アパート群を造る際に生まれた土砂や瓦礫を積み上げて生まれたものだが、普段平地のベルリンに住んでいると新鮮な気分だ。Tälchenbrückeという橋の手前には音を使ったアート作品が置かれ、そこで出会ったワーグナーの「森のささやき」の音楽に癒された。
汗をかきながらさらに登ると、ヴォルケンハインという展望台が見えてきた。高さ120メートルのてっぺんからは、中心部のテレビ塔方面までくっきりと見渡せる。1日ですべてを見て回ることはできなかったが、多種多様な庭園や風景、地形を体感しながら、世界の箱庭のような博覧会をたっぷり楽しんだ。
(ドイツニュースダイジェスト 8月4日)
Information
国際庭園博覧会2017
Internationale Gartenausstellung 2017
ドイツで10年に一度開催される国際博覧会。100ヘクターの広大な展示会場は、大きく5つのブロックに分けられている。親子連れも楽しめる工夫もなされ、特に水を使った公園Wasserspielplatzでは、エーリッヒ・ケストナーの小説『五月三十五日』からアイデアを得たという大きなクジラ型のアトラクションが目を引く。4月13日から10月15日までの会期中に、国内外から約200万人の訪問者が見込まれている。ゴンドラを含め、IGAに合わせて作られた施設の大部分は、会期終了後も残される予定だという。
オープン:毎日9:00〜20:00(入場は19:00まで)
行き方:上記の行き方で中心部からU5のKienberg – Gärten der Welt駅まで約30〜40分ほど。少し離れた場所に専用の駐車場もあり、シャトルバスが会場との間を結んでいる。
入場料:1日券20€(割引18€、7歳〜17歳までは5€、6歳までは無料)、ナイトチケット(日曜から木曜までの17時以降)10€、会期中のフリーパス90€
電話番号:01801-4422017(ホットライン)
URL:https://iga-berlin-2017.de