7月末、東日本大震災で被災した岩手県在住の6人の高校生がベルリンを訪れ、同年代のドイツの若者たちと交流をしました。
このプロジェクト「翼」を主催したのは、震災後にベルリン在住のドイツ人と日本人によって生まれたNPO法人「絆・ベルリン」。NPO「遠野まごころネット」が日本側の窓口となって、2013年に行われた第1回目から今年の第5回まで、ロベルト・ボッシュ財団の助成により実現してきました。
7月28日にミッテ地区のセミナーハウスで行われたワークキャンプにお邪魔しました。最初に「絆・ベルリン」の代表を務める福澤啓臣さん(ベルリン自由大学元准教授)が、これまで東北の被災地で行った計7回のボランティア活動を紹介しながら、「出会いと喜びに満ちていた」と振り返りました。
続いて岩手から参加した高校生が、震災の体験と今の被災地の様子を英語でスピーチします。質疑応答では、「おじいちゃんを震災で亡くした。その3日前の誕生日に会いに行けなかったことを今も後悔している」「感謝の気持ちを伝えるといった、一つ一つの当たり前のことをするのが一番大事だと思う」など、彼らがいま抱える気持ちを率直に語る場面もありました。
8日間の滞在中、ドイツの参加者とペアになって、日独の教育や歴史、エネルギー問題などをテーマに発表したほか、ベルリン市内の様々な場所を見学しました。第1回からプログラムのオーガナイズをしてきたのが、フランク・ブローゼさんと妻のブリギッテさんです。「ただ観光名所を巡るだけでなく、ベルリンの地域活性や社会プロジェクトを紹介しながら、参加者の皆さんにアイデアや刺激を与えられたらと思った。例えば昨日は、障害者の人々によって運営されているベルリン市庁舎の食堂を見学した」とブリギッテさん。
参加者の声をご紹介します。盛岡中央高校2年の菅田春樹さん:「ベルリンでは、公共交通に乗っても、高齢者や身障者を助ける環境が整っていると感じた。震災の時を振り返って思うのは、人のために働くのは勇気がいるし、決断力や判断力も必要になるということ。当時何もできなかった分、将来は医療関係の仕事に就いて、直接人と接することで果たしたい」
一関第一高校2年の佐藤暢(のん)さん:「ドイツの教育や救急医療の環境を知りたいと思って参加した。ここで出会った方は皆優しく接してくれる。特にホロコーストの記念碑に感銘を受けた。このプロジェクトの事前研修で大槌町を訪れて、被災地の今後も大事だけれども、亡くなった方の弔いも続けていかなければと思う」
フンボルト大で日本学を学ぶディルク・ヴォーヴェラートさんは、「ドイツのメディアで報じられるのは福島の原発事故のことばかりなので、様々な地域の現状を彼らから直に知ることができて良かった」と語りました。
「翼」プロジェクトは今年が最後とのことですが、岩手から参加した高校生と話していると、「知ること」と「伝えること」の面白さに目覚めているように見えました。どんなお土産を持って故郷に帰ったのでしょう。
www.kizuna-in-berlin.de
(ドイツニュースダイジェスト 8月18日)