昨年12月6日、トランプ米大統領が「エルサレムをイスラエルの首都と認定する」と宣言したことは、世界に大きな波紋と困惑を引き起こしました。そのわずか5日後、ベルリン・ユダヤ博物館にて「Welcome to Jerusalem」(エルサレムへようこそ)という大規模な展覧会が始まったのは不思議な巡り合わせといえます。この年始、思わぬ形で話題を呼ぶことになった展覧会に足を運んできました。
エルサレムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の3つの宗教の聖地を抱える世界でも稀有な都市です。当展覧会は、古代の第二神殿の時代からローマ帝国、オスマン帝国による支配、英国委任統治領を経て21世紀に至るまでの都市の歴史を、日常、宗教、政治、文化などから多面的に描いた試みです。
最初の部屋では、大きなスクリーンに「エルサレム24時間」というドキュメンタリー映像が流れ、訪問者はいきなりこの都市の空気に触れることになります。続く部屋にはエルサレムの歴史的な地図が数多く展示され、古代から現代までのエルサレムの支配関係や領域の変遷を数分間に凝縮したデジタル地図を見ると、あまりに錯綜した歴史にため息が出ました。
エルサレムでやはり重要なのは、三大宗教の聖地としての側面です。2000年前から現在に至る巡礼者にも光が当てられ、展示の中心となる部屋では、ユダヤ教の嘆きの壁、イスラム教の岩のドーム、キリスト教の聖墳墓教会といった場所が、精密な模型と共に展示されています。1917年から現在までの中東の政治紛争をまとめた映像には、訪れた人たちはただじっと見入っていました。「敬虔な挑発者たち」という主題の部屋では、イスラエルを国家として認めない超正統派と呼ばれる中でもさらに少数派のグループや、嘆きの壁の前の祈りで男女同権を求める女性たちなど、ほかの宗派としばしば対立を生み出すユダヤ人のグループが紹介されていました。
ユダヤ博物館のペーター・シェーファー館長は、「われわれの展覧会は何らかの答えを提供するものではありませんが、訪問者の皆さまにエルサレムの特異な状況への理解を呼び覚まし、自分の意見を形作るためのお役には立てるでしょう」と話します。
エルサレムが歩んできた深く濃い歴史の年輪に感嘆し、数々の悲劇に震撼させられながらも、いつか訪ねてみたいという気持ちが一層高まったのは、この都市が持つ魔力ゆえでしょうか。
当展覧会は2019年4月30日までの開催。現在常設展は組み替え作業中で、2019年中にリニューアルオープンすることになっています。
www.jmberlin.de
(ドイツニュースダイジェスト 1月19日)