発掘の散歩術(83) – 実物大で世界を知るドイツ技術博物館 –
冴えない天気が続いた5月半ばのある土曜の朝、屋内で過ごせて、かつ乗り物好きの子供も楽しめそうな場所が何かないかと考えていたら、ふと思い付いた。地下鉄U1の車窓からよく見えるドイツ技術博物館はどうだろう。この博物館は膨大な…
発掘の散歩術(82) – デュッペル村で味わう中世の春 –
オーク材を組んで作った防御柵から中に入ると、わらぶき屋根の家々が見えてきた。中央の広場には二人の男がバグパイプと太鼓の陽気な音楽を奏で、親子連れが集まっている……。 ここはベルリンの西の郊外、ツェーレンドルフ地区にあるデ…
発掘の散歩術(81) – チェロとフランス風ケーキを味わいながら –
昨年末、ベルリンのシェーネベルク地区に日本人パティシテのカフェがオープンしたと聞き、ヴィッテンベルク広場駅から近い閑静な住宅街にあるカフェを訪れた。オーナーの小峯晋さんと立ち話をしていると、10年以上前に、あるチェリスト…
発掘の散歩術(80) 光に彩られた生と死の空間 —ドロテーエンシュタット墓地を歩く—
書店に設けられたベルリンのコーナーに行くと、ガイドブックや都市の歴史を紹介した本に混じって、必ずといっていいほどベルリンの墓地に関する本が置かれている。多くの著名人がこの街を永遠の住処に選び、眠っているだけに、「墓地巡り…
発掘の散歩術(79) -あの夜から1ヶ月 カイザー・ヴィルヘルム記念教会前で-
ベルリンのクリスマスマーケットにトラックが突っ込み、12人が死亡、50人が重軽傷を負ったテロ事件の一報を、私はちょうど一時帰国中に、実家の寝床の中で知った。トラックが突っ込んだ先がカイザー・ヴィルヘルム記念教会前のブライ…
発掘の散歩術(78) 「ユートピアの響き」を奏でること —バレンボイム・サイード・アカデミーのオープニングから―
指揮者・ピアニストのダニエル・バレンボイムによると、音楽には二つの可能性があるという。一つ目は現実から逃避させる手段になるということ。そして二つ目は、現実をより深く理解するための助けになるということ。どちらかといえば抽象…
発掘の散歩術(77) 不寛容の行き着く先にあるもの ― ナチスの恐怖政治の原点を訪ねて ―
ベルリンにある鉄道ターミナルの一つ、ズュートクロイツ駅のホームに立つと、青いイケアの買い物袋を持った人の姿によく出会う。この近くに大型家庭用品の店がいくつも並んでいるからだ。いつもは自分たちも通る買い物客の流れから外れて…
発掘の散歩術(76) -アレッポ商人の応接間に笑みが戻る日は-
ペルガモン博物館2階のイスラム美術の展示はこの部屋から始まる。背の低い入口から入ると、T字型の部屋の9面の壁に隙間なく描き込まれた赤地の装飾に目を奪われた。次々とやって来る世界中からの客人も、イヤホンガイドを聞きながら、…
発掘の散歩術(75) -番外編:ブランデンブルク州 市制800年 ラーテノウを歩く-
ブランデンブルク州にあるラーテノウという街は、時々見かける赤いレギオナル・エクスプレスの終着駅というイメージぐらいしか持っていなかった。この夏、ラーテノウに住む彫刻家の大黒貴之さん(当連載の第62回 / 2015年9月4…
発掘の散歩術(74) -「安楽死」殺人の記念碑で考える人間の命-
光を浴びて輝くベルリン・フィルハーモニーのジグザグの屋根に向かって、透明の青いガラスの壁が伸びている。その横には様々な歴史的情報や写真が掲載されたプレートが設置され、コンサートのオフ・シーズンにもかかわらず、旅行者や地元…
発掘の散歩術(73) -ミュッゲルトゥルムの展望台へ-
ベルリンの広域図を見ると、3つの大きな湖が目に付く。前回ご紹介した西のヴァンゼー、北のテーゲラーゼー、そして東のミュッゲルゼーだ。西側に住んでいる私は、どうしても行動範囲が西に限られる傾向があるが、たまには東の郊外にも足…
発掘の散歩術(72) -公共フェリーに乗ってアルト・クラドウへ-
ベルリンの西の郊外ヴァンゼー駅に降り立つと、すぐ目の前にヴァンゼーの湖が広がる。中心部のツォー駅からSバーンで20分ほど揺られて来ただけなのに、避暑地に来たようなすがすがしさを感じる。今日はここからフェリーに乗って対岸の…
発掘の散歩術(71) – リクシャでめぐる初夏のティーアガルテン –
数年前、私がベルリンに来てからずっとお世話になっているドイツ人の知人からリクシャの招待券をいただいた。リクシャとは自転車タクシーのことで、実は日本語の力車に由来する言葉。知人の息子がリクシャのツアーのガイドをやっていたの…
発掘の散歩術(70) – 春のベルリン・ハーフマラソン –
昨年9月、日本からやって来た弟がベルリン・マラソンを完走したのに感化された私は、その半年後のハーフマラソンの参加を申し込んだ。正直なところ、「とりあえず」申し込んでみたという感じだった。それまで10キロとまとまって走った…
発掘の散歩術(69) -東ドイツの日常に触れるミュージアム-
「なんだか別の街に来たみたい」と妻がコルヴィッツ広場近くの通りを歩きながら若干興奮した口調で言う。無理もない。同じベルリンの冬空の下でも、私たちが普段住む西側のエリアよりも数段こちらの方がカラフルに見える。戦前の古いアパ…
発掘の散歩術(68) -ケーテ・コルヴィッツと戦争体験-
西側の繁華街、クーダムから一歩入ったファザーネン通りにあるケーテ・コルヴィッツ美術館がこの春オープンから30周年を迎える。1月末に行われた記念行事に足を運ぶと、そこは和やかな雰囲気に包まれていた。 私はそこで1枚の写真に…
発掘の散歩術(67) -ベルリン動物園 子供たちの笑顔の向こうに-
昨年初頭、息子が誕生して少し経ってからベルリン動物園の年間カードを購入した。年間カードにもいくつか種類があるが、子供が満1歳の誕生日の翌月末まで有効なBabyCard XLは、赤ん坊と両親の分の入場料を含め35ユーロで購…
最近のコメント