指揮者角田鋼亮さんインタビュー(1)

今回は新春特別企画(?)として、若き指揮者角田鋼亮さん(名前は「こうすけ」と読みます)のインタビューを2回に分けて掲載します。ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学に留学中の角田さんと知り合ったのは、2005年の秋でした(彼の詳しいプロフィールはこちらにて)。ポツダム広場の地下鉄のホームで友達を通じて紹介されたときから、どういうわけか意気投合し、コンサートやこのブログのベルリン散策でも何度もご一緒してきました。角田さんは昨年夏から半年間日本で活動中なのですが、多忙な生活の中、メールでのやり取りを通じてインタビューに答えてくださいました。もっと突っ込んで聞いてみたい箇所もありますが、それはいずれまた機会があったらということでしょうか。将来が楽しみな若き音楽家を、「ベルリン中央駅」でご紹介できるのをとてもうれしく思います。
まず始めに角田さんが留学先としてベルリンという都市を選んだ経緯について、話を聞かせてもらえませんか?他の世界的な音楽都市、例えばウィーンやパリやニューヨークではなく、どうしてベルリンだったのですか?

ベルリンというのは子供の頃からの夢の都市でした。最初に意識したのは壁が壊れた時の映像で、ロストロポーヴィッチさんがバッハの作品を演奏していましたよね。政治や社会情勢の事とかあまり分からなかったのですが、子供心にいたく感動したのを覚えています。その後は放送があるとベルリン・フィルの演奏を欠かさずチェックしていました。時差の関係からか深夜にやることも多かったと思いますが、徹夜をしてでも見ていましたね。
また、中学からオーケストラ部に入るようになってということもあるのですが、アッバード指揮のブラームスの交響曲第2番の映像を、毎日必ず一回は見るようにしていました。あとは来日公演のマーラーの「復活」ですね。これもテープが擦り切れるまでみて、5楽章では必ず感動して泣いていたのを思い出します。
初めてベルリン・フィルを聴いたのは実家の名古屋でのブルックナーの5番が最初でした。演奏後イスに張り付いてすぐに動き出せなかったのを覚えています。そんなわけでいつか必ずフィルハーモニーで聴いてみたいと思い続けていたのが、かなった形になりました。
ベルリンには大学時代から3回ほど旅行で訪れていましたから、街の雰囲気は知っていました。こちらに先に留学している友達からも住みやすく、芸術の面で刺激の大きい街と聞いていたので、不安や心配はあまりなく、楽しみにしていました。
そうそう、高校生の時にサイモン・ラトルがバーミンガム市響と日本に来て東京まで出ていって聴いたのですが、その時に間違いなくこの人が次期監督になるという確信を持っていました。本当に監督になって嬉しかった反面、ファン心からあまり有名になって欲しくないという変な願望もありました(笑)。
ハンス・アイスラー音大での生活についてお話を聞かせてください。
ベルリンで音大に入り、とてつもなく充実した生活を過ごさせていただいています。朝ベルリン・フィルのリハーサルを見て、昼から学校へ行き、夕方からまたリハーサルを見る。もしくは本番を聴くなどという生活をしています。オケの方も親切で気さくに話しかけて下さる方が多いです。またホールが若手の指揮者を育てようという雰囲気があるので、団員の方に止められたことは一度もありません。学校では今のところ8種類個人レッスンがあったり、半期に4、5度プロのオーケストラを振る機会があったり、それはもう本当に恵まれています。教授陣がベルリンのオーケストラの首席の方だったり、一流演奏家だったりするので、たまに授業のお手伝いに行くと、彼らからとても有益な話が聞けたりします。
いつかウィーンやローマ、ミラノ、パリにも行ってみたいですが、今この世界情勢の中でどういう演奏が必要とされているのか、もしくは生み出されようとしているのか、そういう事を身近に肌で感じるにはやはりベルリンがいいのではと思っています。何より生活費があまりかからないのが良いです。
ベルリン・フィルの演奏を間近で観察していて、特に感じることはありますか?
とにかく個人の能力が高いのは言うまでもありませんが、それを全員が生かし合って音楽を創っているのが面白いですね。また音のうねりや波といったものが感じられます。とても横の流れを大事にしています。
2006年11月には、コンツェルトハウス管弦楽団(旧ベルリン響)を指揮されたそうですね。
はい、今思い出してもとても感慨深いです。リハーサルの時から凄く雰囲気が良く、自然とその中に入っていける気がしました。練習が終わってから、奏者の何人かが指揮台のところに集まって話しかけて下さったり、僕が練習を終えてもその後、各自自主的に残ってセクション練習している姿を見たりしていると、仕事のために音楽しているのではなくて、音楽するために音楽しているのだなという事が強く感じられました。本番はとても良いものになったと思います。
(つづく)



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2 Responses

  1. bach!!
    bach!! at · Reply

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    娘の幼なじみは、東海のオケでヴァイオリンを弾いていましたので、彼が在学中、家内と娘は3月の定演に毎年出かけていました。
    それで、角田さんというお名前に記憶があるみたいです!
    もちろん角田さんには面識はないのですが、こちらのブログでご活躍のお話が聞けて、地元の者として何だか嬉しくなりました。

  2. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >bachさん
    そうでしたか!実は私も彼の中高の同級生を通じて、角田さんの名前は大学時代から知っていたのでした。3月までの間に名古屋近辺で振る機会はまたあるようですから、もしよろしかったら足をお運びください。

    フロイエン交響楽団
     日時:2008年3月9日(日)
     開演:未定
     会場:中京大学文化市民会館(オーロラホール)
     曲目:ブラームス…悲劇的序曲
        チャイコフスキー…「くるみ割り人形」組曲
        ブラームス…交響曲第1番

    セントラル愛知交響楽団
     日時:2008年3月30日(日)
     開演:未定
     会場:土岐市文化会館
    ピアノ:外山啓介
     曲目:ショパン…ピアノ協奏曲第1番など

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