ヨーロッパの4つの大国から、その首都の市長が集まって大都市の抱える問題を話し合うMetropolen-Konferenz(通称M4)という会議があることは、意外と知られていません。
2004年の9月にモスクワで開催されたのが最初で、その第2回目が先月末ベルリンで開かれました。今回の参加者はベルリン市長クラウス・ヴォーヴェライト、パリ市長ベルトラン・ドラノエ、ロンドン市長ケン・リビングストン、モスクワ市長ユーリ・ルシコフの4人。大都市の抱えるテーマというのは多かれ少なかれ似たようなものがあるらしく、今回話し合われた内容は交通政策、環境保護、そして外国人の融和統合(Integration)等々。また最近のテーマからは、鳥インフルエンザ対策についても話題に上ったとか。
2月23日のベルリーナー・ツァイトゥング紙に、この4つの都市を比較したちょっとしたプロフィールが掲載されていたので、ここで見てみましょう(ただし、データがどこまで正確なのか、怪しいところもありますが)。
– 人口(Einwohner) –
ベルリン
330万人。そのうち約4分の1が25歳以下。
パリ
220万人。そのうち18,3%が19歳以下。
ロンドン
730万人。そのうちほぼ25%が19歳以下。人口の23%が外国人。
モスクワ
1110万人。そのうち18%が15歳以下。
– 旅行者(Touristen) –
Berlin
2005年は650万人がベルリンで宿泊した。1億2300万人(123 Millionen)もの人が、1日だけこの町に滞在した(1230万人の間違いではないかという気が・・)。
Paris
2005年は2600万人が訪れた。
London
2004年は1300万人が訪れた。
Moscow(なぜかモスクワは「旅行者」の代わりに、教育(Bildung)のことが書かれている)
モスクワだけで75の大学があり、25万人の学生が学んでいる。
数字だけ見たら、「さすがはパリ!」という感じです。パリ、ロンドン、その次に来るのはローマとウィーンあたりかな(?)、この4つが日本人観光客に最も人気のあるヨーロッパの都市ではないかと私は思っています。
ベルリンの123Millionenというのはやはり間違いのような気がしますが(多過ぎませんか?)、要するに宿泊せずに1日だけで帰ってしまった人がこれだけいますよ、ということが言いたいのでしょう。私が思うに、ベルリンという町にはいわゆる観光名所はそれほど多くはありません。のんびり散歩しながらカフェに入ったり、コンサートに行ったり、美術館めぐりをしたり、そのゆったりした時間感覚の中にこそこの町のよさがあるんじゃないかと思っています(うまく説明するのが難しいですが)。ウンター・デン・リンデン周辺を急ぎ足で見て、また次の町に移ってしまうというのはやはりもったいない。昨日のラジオ出演でも少しアピールさせていただきましたが、ベルリンはヨーロッパの都市の中でも、いま最もおもしろい町のひとつだと思うので、もっと多くの方々に訪れてほしいと願っています。
– 文化(Kultur) –
Berlin
3つのオペラハウス。175のミュージアム。100の映画館。それ以外に135の劇場。
Paris
3つのオペラハウス。150の劇場。85の映画館。ルーブル美術館以外に140ものミュージアム。
London
5つのオペラハウス。49の劇場。69のミュージアム。
Москва
70以上のミュージアム。60のプロの劇場。20以上のコンサートホール。100以上の映画館と2つのサーカス。
大小含めて言っているのでしょうけど、ベルリンに175ものミュージアム(博物館・美術館)があるというのは驚きでした。あと、オペラハウスが3つもあるのはベルリンぐらいだと思っていましたが、パリにも3つ、ロンドンに至っては5つもあるとは・・ロイヤル・オペラだけではなかったんですね。さすがにいずれの都市も文化面での充実ぶりはすばらしいものがあります。パリ、ロンドン、モスクワもいつかゆっくり訪ねてみたいものです。
– 姉妹都市(Städtepartnerschaften) –
伯林
ブリュッセル、ブダペスト、ブエノスアイレス、ジャカルタ、ロンドン、マドリッド・・
巴里
カイロ、東京、シカゴ、北京、ワシントン、サン・パウロ、サヌア・・
倫敦
モスクワ、ニューヨーク、パリ、東京・・
莫斯科
ブエノスアイレス、ソウル、ウィーン、東京、パリ、ローマ、テルアビブ、デュッセルドルフ
ところで、この新聞の記事でちょっと印象に残ったのは、4人の市長のうち2人が、自分がゲイであることを公言しているということでしょうか。ベルリンのヴォーヴェライト氏についてはこの町に住む人なら誰でも知っていますが(とてもオープンな感じの人で人気があります。愛称はヴォーヴィ)、パリ市長さんもそうだったとは・・ベルリンでは毎年7月にゲイ・レズビアンのためのChristopher-Street-Dayという有名なパレードが行われていますが、パリやロンドンでも盛んなんだそうです。
今回の会議の共同記者会見中、あるジャーナリストがモスクワ市長にこういう質問をしたそうです。「あなたの町では、どうしてゲイのパレードが認められていないのですか?」 その場に緊張が走ります。 「ホモセクシャルというのは不自然な関係ですし、そのようなパレードのための申請書もありませんでしたから」 ここでパリ市長のドラノエさんがすかさずフォロー。 「こういう質問はわれわれの親密な関係にいい影響を及ぼしませんからやめましょう」 そしてこう付け加えます。 「ホモセクシャルが不自然なのではなく、自然が人間を形作るのです。少数のグループがもっと自由になったら、社会全体もより自由になれるでしょう(Wenn eine Minderheit freier ist, dann ist die ganze Gesellschaft freier.)」
この会議の始まる前から、ベルリン赤の市庁舎に同性愛者団体から多くのメールが寄せられたことを受けて、ベルリンのヴォーヴェライト氏は会議初日の食事会でモスクワのルシコフ氏とこのテーマについて話し合ったそうです。 「ベルリンでもこのパレードが始まった当初は、全てがうまくいったわけではないんです。モスクワでも実現に向かって進んでいくといいですね」
この会議では、いつの日かパリ発ベルリン経由モスクワ行きの超特急を走らせるという共通の夢についても語り合ったそうです。そして最後に、ベルリン市長は、他の3人をベルリンで行われるワールドカップの試合に招待することも約束しました(←いいな~)。
次回のM4はロンドンにて、北京市長をゲストに招いて行われます。
SECRET: 0
PASS:
モスクワで、CSD・・・。なんだか道のりはまだ遠そうですが。
でも実現したら自由への第一歩でしょうか。
日本はそうしたパレードをやるのは自由だけど、受け容れられて
いるかというと、そういうものでもない気が。どうしてもまだ好奇の目で
見てしまうでしょうしね。人種も信条も性的指向もいろんな人がいて
当たり前、っていう考え方はヨーロッパにいると避けて通れませんね。
SECRET: 0
PASS:
しっかしなんで、石原君よばなかったんだろう?(いやね、東京都ということですよ。)特に同性愛の質問を彼にした日にゃ・・・
それにしても、BerlinerZeitung(BZの間違いじゃなくて?)のいんちきぶりは新聞・報道そのもののクオリティーに関わると思いますがねぇ。
同紙は政治的にどちら側なんでしょうかねぇ?
SECRET: 0
PASS:
>akberlinさん
日本からドイツに、特にベルリンに来ると、同性愛者のオープンぶりに誰もが驚きますよね。逆に日本の同性愛者の人たちが、いかに窮屈な社会の中で暮らしているのかということに思いを寄せざるを得ませんでした。東京でもCSDのようなパレードが実現する日は来るのでしょうかね。
>konnoさん
Berliner zeitungのデータ、あまりに統一性がなくて、私も訳していて少々苛立ってきました。ベルリンの新聞の中では一番部数が多いそうなのですが、これでは一ローカル紙の域を出ないと思います。同紙はどちらかというと左寄りなのではないでしょうかね。
「あの」東京都知事をこういう場に招いてはまずいでしょう。最近のことは知りませんが、何か問題発言をしてその場をぶち壊すのは目に見えているような・・