ドレスデンのゼンパーオーパー前にて(3月21日)
1985年に再オープンした、ドレスデンの芸術のシンボルともいえるゼンパーオーパー。秋の来日公演の演目に入っているR.シュトラウスの「ばらの騎士」(1911年にここで初演)を、私は今回幸運にも聴くことができたのだが、オーケストラの響き(もちろん歌もよかったですよ^^)、そして劇場の雰囲気にはやはり抗し難い魅力を感じた。加えて今回貴重だったのは、オペラの舞台裏を見せてもらえる機会に恵まれたことだ。大道具と小道具を作る別館の工房のスケールはただただびっくり。ドレスデンの人々がこの劇場へかける思いの集積、その一端を垣間見れたような気がした。
旧市街の再建が着々と進む中、私が今回一番驚いたのが、ホテル・ヒルトン前にできた一連の建物群だ。私が2000年に初めて来た時は、まだ何もなかったはず。前回来た時も、奥に見える「君主の行列」の壁画の辺りからフラウエン教会がよく見えたものだが。
ノイマルクト広場にそびえるフラウエン(聖母)教会。1945年2月のドレスデン空襲で瓦礫の山と化したこの教会を再建することは、統一後のドイツの一大国家プロジェクトだった。手前で掘り起こされているのは何かの遺跡のように見えたのだが、実際は何だったのだろう。
黒い部分はオリジナルの石。これらが破壊前どこにあったかを1つ1つ厳密に検証し、新しい部分と組み合わせたという、信じられないような気の長い作業の末、2005年に再建された教会。まさにドレスデンの復活のシンボルだ。
そのフラウエン教会のてっぺんに初めて上ることができた。こちらはゼンパーオーパーや王宮方面。
その反対のカローラ橋方面。エルベ川のこの向こうに、新しい橋を作るか作らないかで今大きな論議を呼んでいる地点がある。
こちらは南側のノイマルクト広場。歴史的建築物が並ぶこの広場の中で、DDR時代に建てられた「文化宮殿(Kulturpalast)」が一際目立つ。ゼンパーオーパーが再館する前、シュターツカペレ・ドレスデンのコンサートはここで行われていた。私の大学時代のオケの演奏旅行で、ここで演奏したのも懐かしい思い出だ。
今回はつくづく天気に恵まれなかったけれど^^;)、カローラ橋からのこの眺望はやはりすばらしい。
ドレスデンはやはり美しい街だった。だが私は同時に奇妙な印象も抱いた。重厚な建築物が並ぶ旧市街は夜になると人通りがぱったりなくなる。まるで死んだ街のようだった。観光客があふれる昼間の旧市街を除くと、全体的に活気がない。その中で私が一番活気があると感じたのは、アルトマルクト広場に面した今やドイツのどこにでもあるようなショッピングモールだった。車で少し中心部から離れると、DDR時代の廃墟をいくつも見かけただけに、資本主義(あるいはグローバリズム)との強烈な対照を感じずにはいられなかった。ドレスデンを中心とするザクセン州は失業率が高く、ネオナチの影も気になる。一方で私は今回、ドレスデンに熱い思いを寄せる地元の人々にもたくさん出会った。この街のこれからを静かに見守っていきたいと思う。
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統一後はまだ行ってないので、テレビでフラウエン教会のことをやっていたのを以前見た切りです。随分綺麗になったにもかかわらず、人が居ないのが寂しいですね。
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私も、ドレスデンは蘇ることによって死んでしまったという、パラドキシカルな印象を抱いています。ドイツの歴史的都市は、それぞれの時代の新しい要請と歴史的景観がせめぎ合いながら、今の姿を作っているわけです。しかし、ドレスデンはまるでテーマパークになってしまいました。
しかし、やはり聖母教会の姿には感動させられます。あと10年もするとまた黒ずんでいくらしいですから、今のうちに見ておきましょうか。
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私も去年の今頃でしたか、ドレスデン、行ってきました。
フラウエン教会のお昼の短い礼拝とそれに続く再建した建物の
解説も興味深かったです。外観も古い石と新しいのを混ぜてある
そうですが、内部の金の装飾もマット仕上げとつやあり仕上げで
新旧がわかるようになっているそうです。(この話、拙ブログの
別館に書いたことがあるんですが、あとでTBさせて頂いていい
でしょうか?)
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ついこの間ドレスデンに行ってきたばかりだったので、ふむふむ、とうなずきながら読みました。観光地としてもてはやされているドレスデンってのは、旧市街地のかなり狭い場所だと思います。そこを離れると、ドレスデンってのはザクセン王国の首都で(あったばかりで)はなく、DDRを経験した、ザクセン州(ザクセン・アンハルト州じゃないよぉ)の街ってことが痛感されますよね。川を隔てた新市街地なんか、全然「エルベ川の真珠」って感じじゃないし(笑)。私はウソクサイ観光地よりも、そういう現実感漂う街って好きです。
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>gramophonさん
フラウエン教会の周辺はレストランが多いですし、夜でもそれなりに人通りはあると思います。逆に王宮やゼンパーオペラの前などは不気味なくらい静まりかえっていました。
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焼きそうせいじさんが以前書かれていたドレスデンの印象を拝見して、自分だったらどのように感じるだろうかと思っていたのですが、「パラドキシカルな印象」は私も抱きました。ドレスデンはあの小さな一角の中に歴史的建造物が集中しているので、周囲とのコントラストがさらに際立ち、一種の悲哀が漂っていました。とはいえ、フラウエン教会の鮮やかさと再建の意義、それはやはり認めざるを得ません。再建後に初めて見た時は、私も素直に感動しました。
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>akberlinさん
>内部の金の装飾もマット仕上げとつやあり
それは知りませんでした。内部は残念ながらあまりゆっくり見る時間がなかったんです。TBはもちろん歓迎です。その記事はノーチェックでしたので、ぜひ拝読させてください。
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>KIKIさん
>ザクセン・アンハルト州じゃないよぉ
えっ、と思って地図を見て唖然。これはお恥ずかしい^^;)。早速訂正させていただきました。
>私はウソクサイ観光地よりも、そういう現実感漂う街って好きです。
ブランデンブルク州に精通したKIKIさんならではの視点ですね。
私も手始めに、コンビナートのあの街にでも行ってみましょうかね。
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中央駅さん、戦時中のドレスデンでのもろもろのことに御興味があれば、以下の本をどうしてもお読みいただかねばなりません!(もう読んでいらっしゃいますか?) この本、これは「推薦本」などという以上のものです。この時代を描いて、「お涙頂戴」の脚色・創作まがいのkitsch本(?)は数多くありますが、それらとは全く異なるものです。この本を読まれましたら時間のあるとき再びドレスデンを訪問することもおもしろいと思われます。風景がやや違った感じで見えてきます。
http://www.amazon.de/Das-Tagebuch-1933-Auswahl-Leser/dp/3746655161/ref=sr_1_3/028-5847909-8446960?ie=UTF8&s=books&qid=1175242383&sr=1-3
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中央駅さんに特別にもう一冊推薦しておきましょう(またまた偉そうに!― 笑)。これは「ベルリン本」です。(これは多分お読みになっていらっしゃらないと思います.....。) 中央駅さん好みの本のように思います。
http://www.amazon.de/Tageb%C3%BCcher-1918-Harry-Graf-Kessler/dp/3458334793/ref=sr_1_1/028-5847909-8446960?ie=UTF8&s=books&qid=1175241964&sr=1-1
帰国してみたら一気に桜の時期が到来していました。今年の冬は奇妙な冬でした。
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旧東時代も夜の街中は街灯も暗いせいか、人通りは非常にまばらだった気がします。それはベルリンも同じことで、東側の今のミッテには全然人が居なくて、弾痕の痛々しい煤けた古い建物に圧倒されて、オペラがはねると足早にフリードリヒ・シュトラーセ駅へ向かったものでした。
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>la_vera_storiaさん
本のご紹介ありがとうございます。
2冊とも分量がありそうですが、読者の感想などを見ても、これはぜひ読まねばと思いました。私の表層的なドレスデンへの見方も少し変わるかもしれませんし。 Harry Graf Kesslerの本も関心大です。イースター休みにでも読んでみましょうかね。
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>gramophonさん
>東側の今のミッテには全然人が居なくて、弾痕の痛々しい煤けた
>古い建物に圧倒され
その雰囲気が頭に浮かんでくるようです。メヒティルトさんのインタビューにも、子供時代初めてオペラを観に行った時、「よく覚えているのが、今と違って街灯が少なく外がとても暗かったことです」という話が出てきます。昔に限らず、今のポツダム広場にしても、東京などに比べるとずっと照明を落としていますよね。