ベルリン中央駅
Menu
  • ホーム
  • ベルリン
    • ベルリン中央駅
    • ベルリンあれこれ
    • ベルリンのいま
    • ベルリンの人々
    • ベルリン文化生活
    • ベルリン音楽日記
    • ベルリン発掘
      • ベルリン発掘(西)
      • ベルリン発掘(東)
      • ベルリン発掘(全般)
      • ベルリン発掘(境界)
  • プロフィール
  • 個人ガイド
  • お問い合わせ
Browse: Home » 2015 » 7月 » 08 » 発掘の散歩術(60) – 番外編:ブランデンブルク州 『リベックじいさんのなしの木』の村を訪ねて –

発掘の散歩術(60) – 番外編:ブランデンブルク州 『リベックじいさんのなしの木』の村を訪ねて –

2015年7月8日 · in ドイツ全般

R0031102 のコピー 2「ハーフェルラントのリベック村のおじいさんの話、知ってる?」と知人のおばさんが一緒にお茶を飲んでいるときに言った。ドイツの国民的な作家テオドール・フォンターネ(1819〜98)が書いた、ドイツではよく知られた物語詩だそうだ。ドイツ語の「ヘア・フォン・リベック・アウフ・リベック・イム・ハーフェルラント」というリズミカルな題名が印象に残ったものの、どんな内容かも知らないまま、6月のある日、詩の舞台となった村に連れて行ってもらえることになった。

R0031132 のコピー 2

ハーフェルラント郡にある、のどかなリベック村の様子

R0031140 のコピー 2

村にあるカフェAlte Schuleにて

ベルリンからハンブルクへと続く連邦道路B5をひたすら西に走る。緩やかな丘陵のある並木道を心地良く進むうちに、40分ほどでリベック村に到着した。人口380人ほどの小さな集落だ。昔の村の学校の建物を利用したカフェで、コーヒーと名物の洋梨のトルテをほお張りながら、知人がフォンターネの詩を基にした絵本を見せてくれた。

R0031145 のコピー 2「昔々、リベックじいさんの屋敷に梨の木があった。黄金の秋に梨が実ると、おじいさんは子どもたちに優しい声をかけて梨を分け与えた。彼は亡くなる直前、「墓の下に梨を1つ埋めてほしい」という遺言を残す。彼の跡取り息子はけちな人で、梨の木の周りに柵を作って人を立ち入らせないようにしてしまうが、数年後、おじいさんの墓の脇から、あのとき一緒に埋めた梨の芽が出て成長し、やがて果実を実らせ、そばを通る子どもたちに再び恵みをもたらす……」

マルク地方独特の方言で書かれているため、原語ですらすら読むのはかなり難しいが、読後温かな気持ちにさせてくれる作品だ。この詩のモデルになったのは、18世紀にここの領主を務めたハンス・ゲオルク・フォン・リベック(1689〜1759)という人物だという。リベックじいさんの詩に描かれる梨の木は、1911年の嵐で切り倒されてしまったが、近年、同じ場所に植え直された。オリジナルの木の切り株の一部は、村の小さな教会の中に残されている。

R0031221 のコピー 2教会の横には、この村ゆかりのリベック家の墓地があった。一際目を引いたのは、リベック家最後の領主ハンス・ゲオルク・カール・アントン(1880〜1945)のお墓。君主制の復活を目指してナチスに抵抗した彼は、後にザクセンハウゼン強制収容所に送られ、終戦直前の4月に殺されたという。その事実を示す記念プレートには、フォンターネが描いた牧歌的な伝承の先に、彼が知る由などなかった20世紀の激動のドイツ史が刻印されていた。

R0031234 のコピー 2

村で見つけた梨の木

戦後、リベック村は東ドイツに属したが、長い村の歩みに比べると数十年の時間などわずかな歩みに過ぎないと思わせるほど、のんびりとした時間が流れている。昔、穀物の製粉所だった建物の煙突のてっぺんには、巣を張ったコウノトリの姿が見え、村を歩くといくつもの梨の木を見掛けた。まだ実は熟していなかったけれど、黄金の秋の収穫の季節になったら、“Ick hebb ’ne Birn.(ここに梨があるよ)”と声をかけてくれる領主のおじいさんが、ふと現われそうだった。
(ドイツニュースダイジェスト 7月3日)


Information

『リベックじいさんのなしの木』
Herr von Ribbeck auf Ribbeck im Havelland

1889年にテオドール・フォンターネが書いた物語詩。現在に至るまで、ドイツの学校で頻繁に教材として使われ、ドイツではもっとも有名な詩の1つとして知られている。邦訳の絵本(藤本朝巳訳、岩波書店)も出ており、米国の児童文学作家、ナニー・ホグロギアンの味わい深い版画と共に楽しめる。

リベックじいさんのなしの木

リベック
Ribbeck

ブランデンブルク州ハーフェルラント郡ナウエンにある村。リベックの名が文書に初めて登場する13世紀から、リベック家が歴代の領主を担ってきた。公共交通機関での行き方は、ベルリン中央駅からナウエンまで地域間急行で約35分。そこからバス(661か669)に乗り換えて、Ribbeck下車(約15分)。

住所:Theodor-Fontane-Str. 10, 14641 Nauen OT
Ribbeck(観光担当)
電話番号:033237 8590-30
URL:www.ribbeck-havelland.de

Ribbeck

—————————
ドイツニュースダイジェストで2010年から連載させていただいている『ベルリン 発掘の散歩術』が、おかげさまで今回丸5年となる60回目を迎えることができました。これからは折に触れてブランデンブルク州の街や村も取り上げていきたいと思っています。今後ともどうぞよろしくお願いします。

関連記事:

発掘の散歩術(57) -ベルリン国立歌劇場の工事現場は今- 発掘の散歩術(54) -ノイケルンの天井で遊ぶ- 発掘の散歩術(56) -「隔絶された場所」ホーエンシェーンハウゼン- 発掘の散歩術(58) – Sバーン博物館でノスタルジーに浸る – 発掘の散歩術(59) – 70年目の「解放」の日、ドイツ・ロシア博物館にて – ベルリン 発掘の散歩術(61) – バイエルン広場の隣人たち – 発掘の散歩術(50) -ピアノ・サロン・クリストフォリでアンティークの音色を愉しむ- ブランデンブルク州ユーターボークの旧市街を歩く(1)
Tags: オラニエンブルク, ブランデンブルク州, 発掘の散歩術, 読書


Tweet
Facebook にシェア
このエントリーをはてなブックマークに追加
LINEで送る
Pocket

← ポツダムの新庭園へ!
指揮者キリル・ペトレンコのこと →


One Response

  1. 発掘の散歩術(62) – 番外編:ブランデンブルク州 彫刻家 大黒貴之さんと巡るハーフェルラント | ベルリン中央駅
    発掘の散歩術(62) – 番外編:ブランデンブルク州 彫刻家 大黒貴之さんと巡るハーフェルラント | ベルリン中央駅 2015年9月6日 at 4:00 PM ·

    […] ーフェルラント郡のラーテノウ市を拠点に活動しており、最近、当コラムでも取り上げたリベック(弊誌第1005号、2015年7月3日発行)などで展示を行っているという。興味を示した私に対 […]

Comment Click here to cancel reply.

CAPTCHA


ブログ内検索


ベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。
「ベルリン中央駅」を購読する

プロフィール

中村真人(なかむら・まさと)
twitter
神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。フリーライター、ジャーナリスト。著書『新装改訂版 ベルリンガイドブック』、『街歩きのドイツ語』

詳しいプロフィール お問い合わせ


ベルリン観光の個人ガイドも承っております。詳細はこちらからご確認ください。

最近の投稿

  • 久々に自転車に乗って
  • ピアノとモーツァルトと平和と
  • 久々の日本行き
  • ドイチュラントフンクのラジオ音楽劇『借りた風景』
  • フンボルト・フォーラムの展示「ベルリン・グローバル」(2)
  • フンボルト・フォーラムの展示「ベルリン・グローバル」(1)
  • オクサーナ・リーニフ、リヴィウ、そしてウクライナのこと
  • U5に乗ってベルリン中央駅からアレクサンダー広場へ (2)
  • 岩波書店『世界』2022年1月号&2月号「つまずきの石」, リリアナ・セグレさんの証言集
  • U5に乗ってベルリン中央駅からアレクサンダー広場へ (1)

過去の記事


カテゴリー

  • ▼ベルリン (1043)
    • ベルリンあれこれ (73)
    • ベルリンのいま (157)
    • ベルリンの人々 (66)
    • ベルリンを「観る」 (24)
    • ベルリンを「読む」 (51)
    • ベルリンクイズ100 (8)
    • ベルリン中央駅 (28)
    • ベルリン天使の降りた場所 (26)
    • ベルリン子育て日記 (3)
    • ベルリン思い出話 (10)
    • ベルリン文化生活 (79)
    • ベルリン音のある街 (27)
    • ベルリン音楽日記 (164)
    • ▼ベルリン発掘 (327)
      • ベルリン発掘(全般) (49)
      • ベルリン発掘(境界) (51)
      • ベルリン発掘(東) (99)
      • ベルリン発掘(西) (128)
  • ▼ドイツ (149)
    • Deutsch (6)
    • サッカーWM2006他 (51)
    • ドイツ全般 (65)
    • ドイツ語関連 (27)
  • ▼日本 (136)
    • ドイツから見た日本 (55)
    • ニッポン再発見 (80)
  • ▼その他 (263)
    • 欧州を感じる旅 (54)
    • – 2005ウクライナ紀行 (11)
    • 未分類 (13)
    • ▼BZ Lexikon (166)
      • BZ Lexikon (1-50) (49)
      • BZ Lexikon (101-150) (48)
      • BZ Lexikon (151-200) (12)
      • BZ Lexikon (51-100) (45)
      • BZ Lexikon (Berlin) (12)

タグ

Berlin (Border) Berlin (Ost) Berlin (West) Café Hamburg Interview Ostkreuz 『ベルリンガイドブック』 『ベルリン・天使の詩』 アマチュアオケ アート インタビュー ウクライナ オペラ オラニエンブルク クリスマス クロイツベルク クーダム周辺 ケストナー ケーペニック コンツェルトハウス サッカー シェーネベルク シュテーグリッツ シュパンダウ スナップ スポーツ ツェーレンドルフ ティーアガルテン トレプトウ ドイツ ドイツ語 ノイケルン ハンザ都市 バイロイト バッハ パノラマ ピアノ フリードリヒスハイン フリードリヒ通り ブランデンブルク州 プレンツラウアー・ベルク ベルリンの壁 ベルリン・フィル ベルリン中央駅 ベルリン王宮 ベルリン郊外 ベルリン(全般) ホーエンシェーンハウゼン ポツダム ポツダム広場周辺 マルツァーン メンデルスゾーン ライニッケンドルフ リヒテンベルク ロシア ワールドカップ2014 ヴィルマースドルフ ヴェディング 中欧 仕事 共和国宮殿 写真 北ドイツ 北欧 古楽 地理 子育て 室内楽 展覧会 山梨 広島 政治 文化政策 旅 日本 日本の旅 日独交流 映画 時事 東北地方 横須賀 欧州 歴史(1933-45) 歴史(Geschichte) 歴史(プロイセン時代) 歴史(ワイマール時代) 歴史(中世) 歴史(古代) 歴史(東独) 歴史(西独) 演劇 発掘の散歩術 自転車 記憶の文化 読書 鉄道 雑感 音楽 食


最近のコメント

  • ピアノがやってきた! に 空 より
  • ヘーア通りの森の墓地を歩く に Yozakura より
  • オクサーナ・リーニフ、リヴィウ、そしてウクライナのこと に BerlinHbf より
  • ヘーア通りの森の墓地を歩く に BerlinHbf より
  • オクサーナ・リーニフ、リヴィウ、そしてウクライナのこと に 榎本達郎 より


-

このブログについて

ベルリン-東と西が出会う場所。ドイツにありながらドイツではない町。歴史の影に彩られた栄光と悲運の世界都市。そんなベルリンの奥深い魅力をリアルタイムでお届けするブログです。Since 1. August 2005

「ベルリン中央駅」を購読

中村真人 プロフィール

中村真人(なかむら・まさと)
twitter

神奈川県横須賀市生まれ。早稲田大学第一文学部を卒業後、2000年よりベルリン在住。ベルリンの映像制作会社勤務を経て、現在はフリーのライター、ジャーナリスト。
詳しいプロフィール

2015年7月
日月火水木金土
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
« 6月 8月 »

Twitter

@masatoberlinさんのツイート

Copyright © 2023 ベルリン中央駅

Posting....