ベルリン・フィルのシーズン開幕公演

●8月25日、ベルリン・フィルの2007/08シーズン開幕公演を聴いた。毎年この日だけは通常より1時間早い19時開演で、私は2年前それに引っかかってしまったことがある(そのときの話はこちら)。
●この日のメインはマーラーの交響曲第9番。フィルハーモニーでこの曲を聴くのは初めてだった。プログラムによると、ベルリン・フィルがこの作品を取り上げること自体、1999年9月のアバド以来とのこと。
●まずその巨大な編成に圧倒される。コントラバスだけで10本並ぶ様は壮観。ヴァイオリンは左右対称に並べるやり方で、その効果も十分あった。実はこの曲をCDであまり熱心に聴いたことがなかったのだが、やっぱりいい曲だなあと思った。特に1楽章。万感の思いが込められた、冒頭の弦楽器のメロディーからその世界に引き込まれてしまう。大管弦楽の響きは圧倒的ともいえる迫力だが、突如室内楽的ともいえるひそやかな音が聞こえてきたり、思わぬ場所からソロが聞こえてきたりと、舞台を見ているだけでもドキドキした。最後まで暗譜で指揮したラトルは、これだけの大編成にも関わらずオケを細部に至るまでコントロールし、大げさな絶叫やセンチメンタリズムとも無縁なのがありがたかった。これは昨年のブルックナーの4番でも感じたこと。
●生命力と不気味さが同居した2楽章のグロテスクなワルツ。続く3楽章の終結部での猛烈なスピードと迫力は、私がこの曲を初めて聴いたバーンスタイン指揮ベルリン・フィルの録音もさぞや、と思わせるものだった。急き込むようにこの楽章が終わると、間髪おかずにフィナーレへ。
●長大な4楽章は、私には身をもてあますというか聴いていてつらい気分になるときがある。自分にはマーラー晩年のこの世界が、まだよくわからないのかもしれない。ただ、彼岸のような最後の静かな部分には息をのんだ。コールアングレが加わってのやわらかい響き。永遠を感じさせる最後のヴィオラのふしも実に印象的に奏でられた。
●この日は舞台と聴衆との間にいい緊張感があった。最後の和音が消えると30秒ぐらい沈黙があり、それから熱狂的な拍手へと変わっていく。ホルンソロのラデク・バボラクには一際盛大なブラボーが飛んでいた。11月にはこの第9に加え、マーラーが生前聴くことのなかった10番と「大地の歌」が、3週間の間で集中的に演奏されることになっている。
Berliner Philharmoniker
Sir Simon Rattle Dirigent
Magnus Lindberg
Seht die Sonne Uraufführung eines Auftragswerks der Stiftung Berliner Philharmoniker gemeinsam mit San Francisco Symphony
Gustav Mahler
Symphonie Nr. 9 D-Dur



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10 Responses

  1. よーた
    よーた at · Reply

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    ぼくもマーラーの9番の1楽章好きだよ。
    ワセオケは今第9を熱心に練習してるよ。
    あんなに難しい曲だと思わなかったよ。

  2. らっぱ@たか
    らっぱ@たか at · Reply

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    羨ましいですね!!!
    11月のアメリカ公演でもマラ9を演奏しますね♪
    ちなみにラッパのソロはどうでしたか?

  3. まじっくばすーん
    まじっくばすーん at · Reply

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    私はマーラーの9番というと1963年だかの録音のバルビローリのものと、バーンスタインのベルリン芸術週間ライヴとが好きです。たまたま2つともベルリン・フィルなので、生で聴いてみたいと思っていたところでした。うらやましいです。

  4. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >よーた
    ワセオケがやっているのはベトベンの方じゃなかったっけ?
    僕も一度吹いてみたいなあ。特にピッコロのパート♪

  5. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >らっぱ@たかさん
    ラッパソロはタルコヴィさんでした。
    朗々とした見事なソロだったと思います。
    しかし、金管にとっても相当ハードな曲なのでしょうね。

  6. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >まじっくばすーんさん
    ベルリン・フィルとマーラーの9番はなぜか不思議な縁がありますよね。名演が多い一方で、限られた指揮者しか振っていない気がします。バルビローリのCDはいま探しているところなのですが、こちらでは廃盤中なのかもしれません。CDは日本の方が全然品揃えがいいです。

  7. らっぱ@たか
    らっぱ@たか at · Reply

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    3楽章のソロがラッパとしては聴かせ何処ですかね♪
    ガボーさんであれば素晴らしい演奏だったのでしょうね!

  8. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >らっぱ@たかさん
    今度はラッパに注目して3楽章を聴いてみますね!

  9. gramophon
    gramophon at · Reply

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    マラ9は四楽章が好きですね。好きな曲なので、結構うるさいですよ。

    1989年にカラヤン追悼コンサートでベルリン・フィルをシャイーが振った時に聴きました。それが、熱血イタリア魂で振るのに、オケは全然シラーッとして反応せず、盛り上がらない演奏だったことをよく覚えています。それと、1994年の来日公演、アバドの素晴らしさを、フィルハーモニーとは残響が違うサントリーホールで堪能しました。

    バルビローリも名演ですが、是非、マサトさんに聴いて頂きたいのは、1938年1月16日のライブ録音(勿論、モノラル)、ワルター指揮、ウィーン・フィル。オーストリアがナチスに併合される直前、ワルター戦前最後の告別演奏です。自分はもっぱらSP盤ですが、CDのよい復刻が出てます。時代背景を考えなくても、とてつもなく凄い演奏です。

  10. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >gramophonさん
    コメントとメールありがとうございました!
    カラヤン追悼コンサートにシャイーとは、ちょっとミスマッチのような気もしますが^^;)、こんなことがあったんですね。シャイー指揮のベルリン・フィルは一度聴いていますが、そのときはよかったです。曲がチャイコの4番だったのでさすがに盛り上がりました。アバドの94年のマラ9はいまでも語り草になっていますよね。

    ワルターの第9は実は持っていてあまり聴いていなかったのですが、久々に聴くとやはりすごい演奏ですね。モノラルなのに音が生々しくて、何かがはち切れんばかりです。

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