東ベルリン廃墟めぐり

Molecule Men(7月23日)
ミュンスターの彫刻プロジェクトで「アートと公共性」の話が出てきたが、ベルリンもまたパブリックアートが非常に盛んな街だ。例えばクロイツベルク、トレプトウ、フリードリヒスハインの3つの地域がちょうど交わる地点にそびえる、ジョナサン・ボロフスキーによる巨大な像「分子の人(Molecule Men)」はよく知られている。
7月末のある日、散歩仲間のKくんとオーバーバウム橋からシュプレー川沿いに東へと散策してみた。その先にはこの「分子の人」も真っ青の、もはやパブリックアートと化した(?)廃墟が横たわっていたのである。
Sバーンのトレプトウ公園駅の橋のたもとから東側はこんな眺めになっている。この写真では判別しにくいけれど、一番向こう側のプレンターヴァルトという森には廃墟となった観覧車がポツンと立っている(経営が破綻した後、経営者が南米へとんずらしたこの遊園地のことは一度こちらで触れた)。今回取り上げる廃墟というのは、写真左側に広がるシュトラーラウ半島(Halbinsel Stralau)という細長い半島の中に眠っている。
Sバーンの線路に面した広大な空き地を歩いて行った。
いくつかの廃墟が寂しげに立っている。一体いつの時代のものだろうか?
中でも目立つのがこの2つの廃墟だ。DDR時代のものであることは容易に想像がつくが、建物自体の歴史はそのはるか昔にさかのぼることが後になってわかった。まず左側の建物から。
これはかつてのガラス工場らしい。正確な年代はわからないが、この地域が急激に工業化した20世紀初頭に建てられたものだと思われる。この廃線跡の雰囲気がなんともいえない。21世紀になってもベルリンにはまだこんな風景が残っているということに、いまさらながら驚く。
その隣の建物についてはWikipediaの記事が参考になった。1920年代に建てられたかつてのビール工場らしい。確かに、正面から撮られた別の写真を見ると、まぎれもなく20年代の建築だった。この2つの工場は、どちらもDDR時代末期の1990年まで稼働していたのだという。Flaschenturm(ビンの塔)という名前が付いているのは、かつてここで1日30万本のビールが瓶詰めにされていたから。
SバーンOstkreuz駅方面にはなにやら怪しげな形態の塔が立っていた。給水塔かなにかだろうか?
夏の午後の、不思議な散策でありました。Sバーンのルメルスブルク駅から列車に乗って帰途へ。
帰り際、SバーンのWarschauer Straßeを通ったら、駅前の橋の横でこんな工事が行われていた。歩行者用の橋を新たに建設しているようだ。
ここからのテレビ塔方面への眺めはベルリンの中でも好きなもののひとつだが、周囲の風景はいまや急激な勢いで変わろうとしている。あの廃墟だって、これからどうなるかわからない。

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17 Responses

  1. Ken
    Ken at · Reply

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    ヨーロッパの経済大国の首都にこのような場所があるんですね。古いまま残してるでも新しくしちゃうでもない場所があるのは興味をそそられます。「ひとがいなくなっちゃった」というのも魅力ポイント。

  2. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >Kenさん
    こういう場所は少し郊外に出ればベルリンにはまだたくさんあると思います。ただ、ここは中心部からそう離れてないところだけに、何か「発見」した気分でした。

  3. hiro_hrkz
    hiro_hrkz at · Reply

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    こんばんわ。
    オストクロイツ駅の塔ですが、手許のSバーン環状線を扱った本を見たところWasserturmとありましたので、配水塔でよいようです。なお、本にはつづけて、charakteristischen "Pickelhaube" と続けて書いてありましたが、意味がよくわかりませんでした・・。

  4. しゅり
    しゅり at · Reply

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    こんにちは、マサトさん。
    なんて心踊る内容なのでしょうか(笑)。
    シリーズ化期待しています。

    さて、上から4枚目の廃虚の住宅。
    なんだか結構由緒ある?邸宅のような気がしてなりません。
    激動のベルリンの歴史の中で、どんな運命をたどったのか
    想像が膨らみます。
    実際はいけないことだし、しませんが
    こういう廃虚って中に入ってみたい衝動にかられます。

  5. のりあき
    のりあき at · Reply

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    ちょくちょく拝見させていただいてましたが、コメントは初めてです。
    でも廃墟好きとしては黙ってられなくて(笑)。
    あ、KIKIさんのところからやってきました。

    この半島も興味深いですよね。
    壁が崩壊した直後はすぐにたくさんのお金が流れて高級アパートが作られたけど、思ったよりも人が入らず、関連各社破産したとか・・・。
    でもこの前遊びに行ったときは割と人が住んでいる感じでした。
    またこのエリアも人気がでてきたのかな?

    オストクロイツの駅も前面改修されるみたいだし、廃墟が廃墟のままでいられるのもあとどれくらいなんだろう~。
    そのうちオシャレなレストランとかになってそうな気がします。

  6. キートス
    キートス at · Reply

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    いつも面白いブログをありがとう。ベルリンの廃墟なら、容易にシリーズが作れてしまいますね。

    こういう古い建築物、とくに廃墟が、大好きです。かつては人が住んでいたり勤めていたりした重要な役割を果たした建物がいま、忘れられていると思うと、寂しくなります。また、これを再発見すると、その建物もまた少しだけ生き返るような気もします。

    あの配水塔は、蒸気機関車の給水に使われていたようです。かつては汽車の整備場で欠かせない存在でしたが、今やただの廃墟です。

    > hiro_hrkzさん
    Pickelhaubeとは、19世紀にプロイセン、そしてドイツ帝国の軍隊で使われたヘルメット。頭頂部に角のようなPickel(つるはし、登山界で言うピッケル)が乗っているのが特徴です。ドイツ軍国主義のシンボルの一つでもあります。

  7. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >hiro_hrkzさん
    このオストクロイツ駅は独特の風格がありますよね。
    列車が交差する様を見て、友達は「秋葉原駅みたい!」と言っていました^^;)。あれはやはり給水塔でしたか!

  8. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >しゅりさん
    こんにちは!廃墟を見て、心を躍らせる人は意外と少なくないのかもしれません。想像力が膨らみますからね。

    あの建物は邸宅にしてはちょっと大き過ぎるかなという気もしますが、これだけは何なのかわかりませんでした。続編は、あまり期待しないで待っててください!

  9. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >のりあきさん
    こちらでははじめまして!この辺りにずいぶんお詳しそうですね。

    >高級アパートが作られたけど、思ったよりも人が入らず、
    そういえば、Rummelsburger Seeの湖沿いにモダンな建物をたくさん見かけましたが、あれがそうだったのでしょうか。人通りはまばらでしたが、ジョギングしている人を何人か見かけました。

    >オストクロイツの駅も前面改修されるみたいだし、
    そうなんですよね。そうなる前に、一度ちゃんと見に行こうと思っています。よかったらまた書き込んでくださいね!

  10. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >キートスさん
    初書き込みありがとう!いろいろ教えていただきました。
    ベルリンの廃墟については僕よりずっと詳しそうですね。おすすめの場所があったら今度教えてください!

    オストクロイツ駅の給水塔が蒸気機関車のものだったとは知りませんでした!そしてPickelhaubeのことも!なるほど、確かにあのヘルメットによく似ていますよね。なるほどと納得しました。またいつでも書き込んでくださいね。

  11. hiro_hrkz
    hiro_hrkz at · Reply

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    >>マサトさん
    東十字駅も改修されるんですか。
    あの古色蒼然とした立体交差部分がいい味だしていると思います。

    >>キートスさん
    ありがとうございます。
    画像を調べてみました。たしかに給水塔の形は、とんがった部分を連想させますね。

  12. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >hiro_hrkzさん
    あの駅の方面に行くことはめったにないので、工事の概要もそれがいつ始まるのかどうかも把握していないのですが、一度じっくり観察したい場所です。そのときはまた報告しますね。

  13. la_vera_storia
    la_vera_storia at · Reply

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    Wasserturmというのは旧社会主義国の一部においては、ある特別の意味を持つ場合がありました。 ベルリンのWasserturmで印象的なのはもちろんあのPrenzlauerbergのRykestr.の端っこにあるやつです(中央駅さんも確か写真をアップしていませんでしたっけ?)。以前、分断時代にこのRykestr.の突き当たりでこのWasserturmを見上げるのにはちょっとした注意が必要だと感じていました(あとから考えれば完全な杞憂であったわけですが)。
    http://www.berliner-stadtplan.com/adresse/karte/berlin/pos/5988,4906/stadt/Berlin-Prenzlauer+Berg/strasse/Wasserturm.html

  14. la_vera_storia
    la_vera_storia at · Reply

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    ソ連において30年代以降、あのスターリンが農業の集団化を強力かつ過酷に推し進めた時、ロシアの農村に存在していた「給水塔」は、当局の担当者が農民の動向を上から監視する目的で利用されたわけです。かつてソ連時代、航空機があのモスクワのシェレメチェヴォ空港への最終着陸態勢に入ったところで地上を見下ろしますと、ロシアの農村(農場)にいくつもの給水塔をみてとることができました(現在の同様)。特に夕方、地上が雪景色であった場合などには、その給水塔の存在そのものが実に不気味に感じられてスリルがありました。(もうそのブレジネフ時代には給水塔が「監視塔」としては利用されてはいなかったわけですが。)

  15. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >la_vera_storiaさん
    なるほど、給水塔にはそんな役割というか意味合いがあったのですか!ここに写っているものはおそらく戦前に作られたものでしょうが、DDR時代に別の用途で使われていた可能性は確かにありえますね。

    PrenzlauerbergのRykestr.の給水塔は、おそらく写真でご紹介したことはまだないように思いますが、私にもあれはとても印象的ですね。私の近所のシャミッソー広場近くにある給水塔は赤レンガ作りのどっしりしたもので、いかにも19世紀末に建てられた趣を残しています。こちらも好きです。

  16. la_vera_storia
    la_vera_storia at · Reply

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    この下の「上海マニア」の方のブログのページを開いてみて下さい。
    http://yaplog.jp/tangguohao/daily/200703/17/
    上から何枚目かに、荒地にポツンと建っている建物の写真があります。なんだか旧東ベルリンの風景に似ていませんか? ここ上海は、中央駅さんが興味を持つようなものがいっぱいありますよ! 以下、ざっと見ていただきますと、興味深々ですね。私も当地では昼間に自由な時間がないものですから、もう少し余裕のある来年にでも「上海と中欧」というテーマでまとまったレポートをしたいと思っています。
    http://yaplog.jp/tangguohao/category_5/

  17. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >la_vera_storiaさん
    いつも面白いサイトをご紹介いただき感謝です!上海は先日ユダヤ人との関連でも紹介してくださいましたが、この町にますます興味が湧きました。5枚目の写真など本当に旧東ベルリンのどこかにありそうな光景です。世界的な大都市というのは、思わぬ接点や共通点があるものなのですね。

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