カジミェシュのユダヤ人墓地にて(11月18日)
帰ってから大分時間が経ってしまいましたが、先月のポーランド小旅行の話をしていきたいと思います。
クラクフの旧市街から南に1キロほど行くと、カジミェシュ(Kazimierz)という地区があります。1335年にカジミェシュ大王によって建設されたカジミェシュは、1495年以降ポグロムによってクラクフを追われたユダヤ人が多く住み着くようになり、同じポーランドのワルシャワやウッジなどと並んで東欧のユダヤ文化の中心地となります。大戦の惨禍を免れたユダヤ人街はポーランドでは非常に稀だそうで、ぜひ行ってみたいと思っていました。
今回の滞在でお世話になった友人(ヒロくん)は、かれこれ10年近く前にボン大学のサマーコースで知り合った人で、最近結婚したポーランド人のカーシャさんとクラクフ郊外に住んでいます。旅先で案内してくれる友人がいるというのは、本当にありがたいことです。
11月第3週末のクラクフはご覧の通りの大雪でした。この日は午前中に世界遺産のヴィエリチカ岩塩坑を見てから、カジミェシュにやって来ました。
まず訪れたのはレーム・シナゴーグの隣、1552年にさかのぼるというクラクフ最古のユダヤ人墓地で、中欧ではプラハのそれと並んでよく知られています。キッパと呼ばれる小さな帽子を頭に載せて、中に入りました。
これは友人に教えてもらわなかったら、おそらく気付かないで過ぎ去っていたでしょう。第2次世界大戦中、墓地はナチスによって破壊されてしまうのですが、戦後この場所から見つかった墓石の破片を、墓地を囲む新しい壁にはめ込んでいったのだそうです。「嘆きの壁」を彷彿とさせるものがあります。
レーム・シナゴーグのすぐ横にあるレストランでお昼を食べました。正面に掛かっているイラストが示す通り、このお店は魚のスープで有名なんだとか。
スープは濃厚で具もたっぷり入っており、これだけでお腹いっぱいになりました。何より付け合せのパンがおいしかったです。カジミエシュ訪問の際は、よかったらお立ち寄りを。
Restauracja Szara Kazimierz
ul. Szeroka 39, Kraków
15世紀末に建てられたスタラ・シナゴーグは、カジミェシュで一番古く規模が大きいシナゴーグ。ルネサンス様式の外観は意外と地味ですが、内部は華美で、現在はユダヤ文化を紹介する博物館にもなっています。
カジミェシュは確かに古い建物が多く、雰囲気もまた独特です。これはスタラ・シナゴーグのすぐ近くにある、やはりかつての礼拝堂。
1938年当時、約6万8000人のユダヤ人(人口の25%)がカジミェシュに住んでいましたが、戦争が始まるとこの近くに作られたゲットー、やがてはアウシュヴィッツやプワシュフ強制収容所へと送られ、生き延びたのはわずかだったといいます。
スピルバーグの映画「シンドラーのリスト」は、こういう時代背景のクラクフが舞台です。後に1000人以上のユダヤ人を救うことになるドイツ人のオスカー・シンドラーは、カジミェシュの対岸の工場で働いていました(参考ページ)。
あの時代のことは後で詳しく触れることになるので、ひとまずこのぐらいにして、次回は旧市街を散策しましょう。
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約6万8000人のユダヤ人(人口の25%) ― 写真でみても分るのですが大きな町ですね。町の名前は耳にしたことがあっても、こうしたものが残されているのには驚きました。興味深いです。
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>pfaelzerweinさん
クラクフはポーランド第3の街です(人口75万人)。ワルシャワは言うまでもなく、プラハのユダヤ人街でさえ昔の名残はあまり残っていませんから、カジミェシュは貴重です。こんなにシナゴーグが多い街を歩くのは初めてのことでした。
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中央駅さん、よくぞこの地区を訪ねられました! この地区こそヨーロッパ、いや世界でも希有な場所だからです。私の記憶では、90年代前半までに日本で発行されているガイドブックでは確か、この地区のことを触れているものはほとんどなかったはずです。後半になって初めて名前だけが紹介されるようになったはずです。現在ではこの地区の簡単な散策地図も載るようにはなりましたが。英米のガイドブックでは以前から詳細な記述があり、私がそれをたよりにこの地区を知ったのは70年代後半でした。このレストラン、よく知っていますよ!
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この地区の建物には、いくつもヘブライ文字を見ることができます。ここを散策するほど中部ヨーロッパのユダヤ人の近代における歴史、そして彼らの悲しい運命を実感できる生きた勉強のできる場所はありません。社会主義時代にここを初めて訪れた時は冬の寒い日で、その時の感慨もひとしおでした。寒風を突き抜けてヴィスワ河を渡って遠く旧市街から聞こえてきたラッパの響き…..。途中で中断するこのラッパの音、お聞きになられましたか(クラクフ名物です)? 重々しいユダヤ人街の建物、冷たい風、遠くのラッパの響き、これが私にとってのクラクフ初訪問時の鮮烈な記憶でした。もう四半世紀以上前の不思議な体験でした。
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お久しぶりです。
私もここ、行きました。独特の空気を持つような、素晴らしいところだったと思います。教会もよかったけれど、鮮烈な印象だったのは、アンティークなカフェが沢山あったところ。歴史の重みもあり、それでいて現代っ子のためでもありました。
雪景色も素敵ですね。私が行ったときは、初夏で晴れていて、全然違った雰囲気でした。
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>la_vera_storiaさん
カジミェシュは、la_vera_storiaさんにとっても特別な場所でしたか!やはり行ってよかったとの思いが込み上げてきました(駆け足だったのが残念でしたが)。社会主義時代、あの場所はかなり荒れ果てていたと聞きます。あのレストランもご存知とは!「中欧」サイトでの続きのお話も楽しみにしています。
>途中で中断するこのラッパの音、
偶然聞きました!中央広場のマリア教会前に着いたのが4時で、ちょうどラッパの音が上から聞こえてきたんです。実に印象的で、でもあのラッパがクラクフ名物で、背景にああいう話があることは後になって知りました。
クラクフはまたいつかゆっくり再訪したいです。
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>miharuさん
お久しぶりです。miharuさんもあそこに行かれたんですか!
今回お店をゆっくり回る時間はありませんでしたが、興味を引かれる店は確かに多かったです。建物は古いものの、暗い感じはあまりなかったですし。そして雪によって印象はさらに強まりました。
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それにしても、まったく素晴らしい本が翻訳されたものです。その本のタイトルは、「ポーランド旅行」、著者はあの有名な小説「ベルリン・アレクサンダー広場」を書いたアルフレート・デーブリンです。
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4862650902.html
http://www.amazon.de/Reise-Polen-Alfred-D%C3%B6blin/dp/3423128194/ref=sr_1_17?ie=UTF8&s=books&qid=1200469413&sr=1-17
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>la_vera_storiaさん
デープリンのポーランド旅行記!こんな本があったとは、しかも日本語訳が出たことに驚きました。大変興味があります!値段もそこまで高価ではありませんし、春に日本に帰ったら真っ先に探すことになりそうです。アウシュヴィッツ紀行の残り2回分も、近いうちにアップします!