前回に続いて、ノイケルン地区にまつわる話題をもうひとつお届けしましょう。
今年の6月、ノイケルンの黄金のカフェを紹介したところ、このブログによくコメントをくださるla_vera_storiaさんが、Mitteleuropa(中欧)サイトの掲示板にある寄稿をされました。ご本人の許可をいただいたので、それを以下に引用します。
中央駅さん
カール・マルクス通りですが、このあたりは実はベルリンの壁が開き、そして1990年の通貨統合があった直後ですが、東ベルリンの人たちの西における「ショッピング・エリア」でした。といいますのも、ここでは西側としてはかなり安くいろいろなものが買えたからです。私も東ベルリンの人から「カールマルクス通りのあたりに行きたい。」というので一緒について行ったことがありました。彼女はいろいろとウィンドーをのぞいていましたが、結局何も買わずじまい。でも確かに東ベルリンから来た人を多く見かけましたね。 いやあ、このカフェ、よく見つけられましたね! 分断時代ですが、西側にあったにもかかわらずここは大変すすけていていました。再オープンした後のことは知りませんでした。すばらしいカフェに生まれ変わったようですね!
(中略)
ノイケルン...実は大変におもしろいものがいくつもあります。私の持っている某ガイドブックのページの一部を以下に御紹介してみます。
“An der Richardstrasse 12-13 bildet die Passage einen leicht skurrilen Durchgang zur Karl-Marx-Strasse. Die bürgerliche Anlage wurde 1909 von Paul Hoppe als “Gesellschaftshaus” errichtet. Im Brückengebäude fanden ein kommunales Sprechstheater, ein Lichtsspieltheater und schliesslich ein Möbellager Platz. Nach der Restaurierung sind hier wieder ein Kino mit Namen “Passage” und die Neuköllner Oper untergebracht. Wieder auf dem Hof und nur ein Haus an der Karl-Marx-Strasse weiter eine Idylle. Spur der Verstädterung Rixdorfs: Der Pasewaldtischen Hof, auch Buednerdreieck genannt, beherbergte Kleingewerbe wie ein Schmieder und ein Schlachthaus…….” (以下、延々とこのあたりについての「歴史的解説」が続きます。)
中央駅さん、お時間のある時で結構ですから、もしできましたら、このNeukoellner“Passage”の現時点の姿を写真にでも撮っていただいて、皆さんに紹介していただけませんでしょうか...。
というわけで、あれから大分経ってしまいましたが、期待にお応えして(元々私も興味あったこので)先月U8カール・マルクス通り駅近くのパサージュを見てきました。通りの名前から誤解されるかもしれませんが、このノイケルン一帯は東ではなく、れっきとしたかつての西ベルリンに属します!
パサージュというと、19世紀のパリのパサージュが思い浮かびますが(先日観た「ウジェーヌ・アジェ展」でも、パサージュの写真が目に留まりました)、このノイケルンのパサージュは建築様式的にはどのように位置づけられるのでしょう?ともあれ、1909年に複合商業施設として建てられた際、ここにはベルリンでも最古の部類に入る映画館(当時映画館はLichtspielhausと呼ばれていました)、ダンスホール、劇場などが含まれ、この地区の文化の中心となります。そしてこれは現在でも変わっていません。
左手の入り口を入ると、”Kofperde”というカフェがあります。歴史を感じさせる、なかなかいい雰囲気でした。
このパサージュの中で一番有名なのは、「ベルリン第4のオペラ劇場」と言われるノイケルン・オペラ(Neuköllner Oper)でしょう。ノイケルン・オペラはベルリンの他の3大オペラハウスとは比較にならない低予算ながら、注目すべき作品をいくつも生み出しています。
パサージュを出ると、カール・マルクス通りの喧騒が待っています。
というわけで、la_vera_storiaさん、ノイケルン・パサージュの様子がいくらかは伝わったでしょうか?
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中央駅さん、ありがとうございました! 現代に甦ったかのごとく、基本的なものはほとんど変わっていませんね。私はよく思うのですが、ヨーロッパでは比較的新しく見える建物でも、実のところはかなり以前に建てられた建物を非常にうまく改修、補修をほどこしているために、実はそれが歴史的建築物だった、などということがよくありますね。特にベルリンはこれが多いように思います。これからもそういう場所の発掘をお願いいたします。期待しています。
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>la_vera_storiaさん
早速のコメントありがとうございます。ノイケルン・オペラには何度か観に来ていましたが、la_vera_storiaさんのおかげでこのパサージュの歴史を知るきっかけをいただきました。実はこの近くには、ほぼ同時期に建てられた公共浴場(Stadtbad)もあります。先月初めて訪れましたが、大変すばらしい建築でした。ノイケルンには他にも面白いものがたくさんありそうです。
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オペラを観に行った折、写真のカフェの一番手前の席に掛けました。
こんな歴史があったとは知る由もなく、またご教示頂けて嬉しいです。
ホフの見下ろせる渡廊下にあるオペラ劇場のカフェ、気持ちいいですよね。
先日Seestr.にある反戦博物館に行ったら、ノイケルンの防空壕の扉が展示されていました。
何月何日何時にそこに隠れたかが記録されていました。
ここも厳しい戦場だったのですね。歴史はどこまでも深いものです。
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中央駅さん、パリのパッサージュとベルリンのこのパサージュとは実はかなりの相違があります。私の知る限りでは、パリのパッサージュは、あれは当時の新興勢力であったフランスのブルジョワジーがごっそりと街の一区画の所有権を得た時代に、その区画と別の区画をつなぐ「連絡通路」のような役割があったというのが当初の意義で、その両側には商店も作られた...そういうことだったと思います。しかしこのベルリンのノイケルンのパサージュは最初から何がしかの商業施設を構成する一要素...そういう感じがします。パリのパッサージュについては鹿島茂さんが抜群に詳しいです。以下のような本も書いていらっしゃいますが、私は残念ながら未読ですので自信を持ってお勧めできないのが残念ですが。
http://www.seidosha.co.jp/index.php?%A1%D8%A5%D1%A5%B5%A1%BC%A5%B8%A5%E5%CF%C0%A1%D9%BD%CF%C6%C9%B4%E1%CC%A3
でも、さすがの鹿島さんもベルリンのノイケルンのパサージュはご存知ないかもしれません。
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>にわやまさん
>ホフの見下ろせる渡廊下にあるオペラ劇場のカフェ
オペラ劇場としては実にユニークな環境だと思います。ちなみに数年前、ここで初めて観たのは、出演者が男性だけ(!)の「コジ・ファン・トゥッテ」でした。
>Seestr.にある反戦博物館
それは知りませんでしたね。Weddingにそんな博物館があったなんて。また近いうちに!
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>la_vera_storiaさん
お返事が遅くなり申し訳ありません!パリの「パッサージュ」についてのお話、ありがとうございます。鹿島さんの「パリ五段活用」を読んでパリのパッサージュに興味を持っていたのですが、la_vera_storiaさんのお話を読んで、いつかパリをゆっくり散策したいという思いが一層強まりました!
確かにノイケルンのパサージュは、パリのとは動機や目的が明らかに違うようですね。20世紀初頭に建てられた中庭付きのFabriketageと比較してみるとなかなか面白いです。
http://berlinhbf.exblog.jp/6404585/