先日、小学校時代の同級生に渋谷で久々に会った際、「物を書いて何かを伝えていくつもりなら、ぜひ読んでおくといい。あの佐藤優も推薦しているみたいだし」と言って勧められた新書。筆者は朝日新聞の編集局長で、「情報をつかむ」「よむ」「伝える」の3章に分け、記者としての長年の経験をわかりやすく、惜しげもなく披露している。とてもいい本だった。本書のひとつの「鍵」となっているのが疋田桂一郎さんという筆者の先輩記者の言葉で、本の中で何度も紹介されるのだが、これが示唆に富んでいる。
自分がとりわけ興味深く読んだのは、最近自分でも関わる機会のある「インタビュー」についての箇所(カッコ内は疋田さんの言葉)。
上手なインタビューとは、相手が話しながら、自分でも想定していなかった言葉を見いだし、その言葉の発見に思わず心を動かすような場面を引き出す対話です。下手なインタビューとは、これまでのインタビュー記事をなぞるような定型の問答に終始し、相手も自分も、何の発見もなく終わる対話です。
「取材の時は、どういう順序で聞いたら相手が答えやすいかを考える。記事にまとめる時は、どうしたら理解しやすいかで順序を考える。多くの場合、両者は一致しない。質問のしかた、質問内容も実際と記事では全く違ってくる。これは話し言葉と書き言葉の違いだけではない」
「間違っても、こちらの論理を押しつけて相手を誘導することがないようにと心掛ける。とりわけ寡黙なひとの場合に、そうする。じれないで、何分間でも、その人の答えが出て来るのを待つ」。ここが肝心です。自分の頭で考えた論理を押しつけて、相手の発言にしてしまう取材には説得力がありません。相手が自分の言葉を見つけるまで待ち、その人ならではの言葉を発見したときに、初めて語ったという喜び、聞き出せた、という嬉しさがこみあげます。その感動を共有できたときに、インタビューは成功した、といえるでしょう。
この他にも、「情報力の基本はインデックス情報」、「文章における『事』『理』『情』のバランス」、「『位置情報』の基本は地理と歴史」、といったテーマから、メモをとるコツや写真を撮るときの重要な点にも触れられ、お得感の高い1冊でした。
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インタビューって、される側の人物にスポットがあてられますが、する側の人物像も透けて見えるところがおもしろいですよね。
マサトさんのメヒティルトさんへのインタビューは活字でじっくり読みたいと思いました。とても良いインタビューだと思います。
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>Tsu-buさん
コメントありがとうございます。
メヒティルトさんへのインタビュー、なつかしいです。あのときは面白い話が次から次へと飛び出したので、私も相当のめり込んでしまいました。「活字でじっくり読みたい」というお言葉、ありがたく頂戴します。