フィルハーモニーのカラヤン展

先週からフィルハーモニーのホワイエで、今年生誕100周年のカラヤンとベルリン・フィルの歩みをテーマにした展示会が開かれています。「音楽に縦線は必要ない。流れなければならないのだ」という言葉は、カラヤンの音楽美学を集約したものと言えるのかもしれません。
そのオープニングの小さなセレモニーに参加してきました。準備に携わったドラマトゥルクのグルーネヴァルト氏が、最初に挨拶(中央はベルリン・フィルのインテンダント、ローゼンベルク氏)。カラヤン時代のオーケストラのメンバーと思われる人々もいて、全体的に年齢層は高めという印象。貫禄のある白髪の紳士が自分の目の前にいたので、話しかけてみたら、カラヤンの写真を長年撮り続けたラインハルト・フリードリヒ氏だったので驚きました。
簡素な展示内容ながら、1938年にカラヤンが初めてベルリン・フィルを振ったときから、89年の死に至るまでの歩みが、今まであまり公にならなかった写真も交えてセンスよくまとめらえているように思いました。それにしても、カラヤンの写真というのは、思わず見入ってしまう何かがあります。
「重要な演奏旅行」というコーナーでは、1955年のアメリカ旅行や、69年のプラハ―モスクワ―レニングラード旅行などと並んで、57年の初の日本ツアーのことも紹介されていました。これはそのときの様子を伝えたAsahi Evening Newsの記事。当時ベルリン・フィルのメンバーは2機に分かれて、テンペルホーフ空港を発ち、1機はアラスカ経由で29時間、もう1機はローマとバンコク経由で40時間かけて日本にたどり着いたというから、まさに隔世の感がします。
以前こちらで紹介したミシェル・シュヴァルベ氏の写真も見かけました。背後には、昨年亡くなったロストロポーヴィチの姿も。R.シュトラウス「ドン・キホーテ」の録音風景。
89年4月24日、ベルリン・フィル音楽監督の辞任の意向を伝える西ベルリン市文化大臣宛てのカラヤンの手紙。自分の体調が思わしくないことを伝え、さらに行政側への不信感を滲ませるぶっきら棒な文面は、あのカラヤン&ベルリン・フィルの最後にしては似つかわしくないというか、ある種の悲しさを感じてしまいます。この展示会は6月末まで開催。
ところで、ベルリン・フィルの往年のティンパニ奏者にして作曲家、さらに「フルトヴェングラーかカラヤンか」の著書で知られるヴェルナー・テーリヒェン氏が4月末に86歳で亡くなったそうです。あの時代を生きた人たちが、次第に少なくなりつつあるのを実感しました。ご冥福をお祈りします。



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4 Responses

  1. Urlicht
    Urlicht at · Reply

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    初めて投稿させていただきます。つい最近このブログを発見して
    楽しませていただいてます。昨年末29年ぶりにベルリンに行きフィルハーモニーでラトルを聴きました。そこで今カラヤン展をしているのですね!先日、スカパーで「カラヤンの思い出」という番組をしていましたが、カラヤンのマネジャーや執事、運転手の話がとてもおもしろかったです。
    2度しか行ったことのないベルリンですが、私は大好きな街です。ベルリンに行く前にこのブログを読ませていただいたらと思ってます。でもまた
    行きたいと思ってますのでいろいろと参考にさせてください。よろしく!

  2. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >Urlichtさん
    はじめまして、コメントありがとうございます。
    29年ぶりのベルリン、さぞや感慨深かったのではないでしょうか。ベルリンは訪れる度に変化し、 毎回発見がある街ですので、ぜひまたいらしてください。「カラヤンの思い出」という番組、見てみたいと思いました。彼のもとで演奏していた音楽家の話も面白いですが、そちらもまた興味深いですね。

  3. paukenschlagzeu
    paukenschlagzeu at · Reply

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    paukenです。テーリヒェン死去、うーん、やっぱり誰でも死は避けて通れないんですねぇ。今年もオケを楽しんでいますが、あとどれだけ本番やれるんだろう、と思わず考えてしまいます。彫塑のような空間芸術ではなく、音楽は時間芸術ですから、「今」を存分に味わいたいです。ドキドキ/ワクワク感を大切に。

  4. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

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    >paukenschlagzeuさん
    お久しぶりです! コメントありがとうございます。
    >彫塑のような空間芸術ではなく、音楽は時間芸術ですから、
    >「今」を存分に味わいたいです。
    私もその気持ちは全く一緒です。ライブでも、CDでも、自分が演奏するときでも。いくら手軽に手に入るようになっても、惰性で付き合うことはないようにしたいですね。

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