2009年のコンサートより(1) – ライプチヒの『聖パウロ』 –

2009年は例年に比べてコンサートに行く回数が少なかったですが、その中でも特に印象に残り、かつ書く機会を逸してきたものをここに留めておこうと思います。結果的にメンデルスゾーン生誕200年関連のものがいくつも入りました。
– マンゼ指揮ベルリン・ドイツ響(4月10日)
Andrew Manze
Stephen Hough Klavier
Johann Sebastian Bach: Orchestersuite Nr. 3 D-Dur (Bearbeitung: F. Mendelssohn & F. David)
Felix Mendelssohn Bartholdy: Konzert für Klavier und Orchester Nr. 1 g-Moll op. 25
Johann Sebastian Bach: Contrapunctus XVIII aus »Die Kunst der Fuge« (Bearbeitung: A. Manze)
Felix Mendelssohn Bartholdy: Symphonie Nr. 5 »Reformationssymphonie«
ピアノ協奏曲はシュテファン・ハフの流麗でおしゃれなまでに軽妙なタッチのピアノが聞きものでした。メインは『宗教改革』。マンゼはもともとバロックヴァイオリンの奏者ですが、学術肌の人とは一線を画すらしく、リハーサルからとても生き生きとしているのだそうです。指揮姿ははっきり言ってぶっきら棒なのに、不思議と聴く人にも彼の意図することがよく伝わってきます。4楽章のうねりと高揚感はすばらしかった。
このコンサートを忘れがたいものにさせたのは、その後目にしたある出来事でした。友達とポツダム広場のカフェで過ごし、そこを出た時、広場の交差点に人だかりができていました。真ん中には倒れた大型のバイクとヘルメットが・・・。後で知ったところによると、車とのこの衝突事故で、バイクに乗っていた方は亡くなったとのこと。メンデルスゾーンの音楽で味わった幸福感と目の前で起きた死のコントラストが、強烈な形で私に刻み込まれたのでした。
– ブロムシュテット指揮ライプチヒ・ゲヴァントハウス管(6月18日)
Felix Mendelssohn Bartholdy zum 200. Geburtstag
Im Rahmen des Bachfestes
Gewandhausorchester
Dresdner Kammerchor
GewandhausChor
Herbert Blomstedt
Ehrendirigent des Gewandhausorchesters
Juliane Banse, Sopran
Ingeborg Danz, Alt
Christoph Genz, Tenor
René Pape, Bass
Felix Mendelssohn Bartholdy
Paulus op. 36
昨年最高の感動を味わったコンサートのひとつです。メンデルスゾーンの音楽の中でもとりわけ好きなオラトリオ『聖パウロ』が、このコンビの演奏で、しかも独唱にはユリアーネ・バンゼやルネ・パーペといった強力な顔ぶれとなれば、これはもうメンデルスゾーン・イヤーならではの企画。しかし、何より圧倒されたのは合唱でした。ゲヴァントハウスの合唱団に加え、合唱指揮者として名高いHans-Christoph Rademann率いるドレスデン室内合唱団の織り成すハーモニーの素晴らしさといったら!ほのかに光が差し込む静寂さからフーガを伴う劇的な歓喜の表現までバッハの影響が色濃く、同時にその音楽にはメンデルスゾーンならではの暖かさとやさしさが息づいていました。この作品、もう少し頻繁に取り上げられてもよいのではと思いますね。
(メンデルスゾーンの合唱曲を聞いてみたいという方には、Rademann指揮リアス室内合唱団の合唱作品集をおすすめします)
本の仕事で忙しい時期だったので、ホテルに戻ってからも結局明け方まで作業をしていましたが、わざわざライプチヒまで出向いて心からよかったと思えた演奏会。音楽に癒されました。



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