パンコウの貨物駅跡で観る演劇

Ehemaliger Güterbahnhof Pankow (2010.07.10)
もう半年近く前になりますが、昨年7月、ちょっと面白い場所で演劇を観る機会がありました。地下鉄U2の終点、パンコウの駅で降り、東に延びるグラニッツ通り(Granitzstr.)を歩いて行くと、左手に広大な敷地が視界に入ってきます。私は初めてここに来たのですが、「ベルリン市内にまだこんな空き地が残っていたのか!」と目が開かれる思いでした。こんな場所で演劇をやるという発想に、さらにワクワクしてきます。
実はここは、かつてパンコウの貨物駅の敷地だったという場所です。開業は1904年、そして1997年に廃止になった後は、40ヘクタールの広大な空き地になっていました。
この夜上演されたのは、ルネ・ポレシュ演出の通称「ルール3部作」なるもの。これは昨年のルール地方の欧州文化年に合わせて作られた3つの連作で、それぞれ別々に上演してきた作品を、この日は一気に上演してしまおうというフォルクスビューネらしい何とも酔狂な試み。まともにやったら6時間近くになったのではないでしょうか。ところが、当日行ってみると、何かの理由で2部のみの上演になったそうで、ちょっとほっとしました(笑)。
ベルト・ノイマンによる舞台美術が、奇抜でどこかキッチュで、でも魅力的。
ワールドカップ南ア大会で、ドイツが3位決定戦で勝利した夜、のんびりしたムードの中、22時近くになって最初の「Tal der Fliegenden Messer」が始まります。内容はもううろ覚えになってきているのですが、本物の車を使ったカーチェースがあったり、役者が拡声器でがなり立てるシーンがあったりと、大変にインパクトの強い作品でした。
時々、敷地内の向こう側をSバーンが駆け抜けて行きます。結局第2部が終わったのは深夜2時近くで、最後の方は睡魔との戦い(笑)。一緒に観た大学時代の先輩とタクシーを拾って中心部に戻りました。
ところで、つい数日前の新聞に、この場所の将来をめぐっての記事が掲載されていました。家具メーカーのHöffnerがこの敷地の大半を使って、ショッピングセンターとテーマパークを作ろうと計画しているのだとか。しかし、ベルリン市側はこの計画に対して慎重で、まだ建設の許可を与えていないという内容でした。どうなるのでしょうね。この北側に大きな大きな公園(Schlosspark)があるので、緑地として残されることはないのかもしれませんが、もう少し他に有効な使い道はないものかと思います。



Facebook にシェア
LINEで送る
Pocket



2 Responses

  1. しろう
    しろう at · Reply

    SECRET: 0
    PASS:
    演劇ネタを書かれていたので、書き込みさせていただいています。
    私の住む東京と違って、ベルリンって、常に“過渡期の街”っていう感じがします。そこから面白い実験的な試みの演劇なり、表現が生まれてくるのかなあと思います。

  2. berlinHbf
    berlinHbf at · Reply

    SECRET: 0
    PASS:
    しろうさん
    コメントありがとうございます!
    「常に過渡期の街」、とてもしっくりくる表現です。おそらくあと10年ぐらいは今のような感じが続くと思いますが、20年後、30年後となると、さすがにちょっと想像がつきません。でも、街並みが洗練されても、常に新しい「実験」が試みられる街であってほしいなと思います。

Comment

CAPTCHA