Hotel Bogota、このホテルの名前を最初に知ったのは写真家橋口譲二さんのHPにある「橋口便り」でだったと思う。2004年頃、橋口さんはクーダムから一歩入った通りにあるこのホテルに泊まりながら制作活動をされていた。橋口さんがボゴタについて記している箇所を読んで、私はこのホテルの存在が気になるようになった。当時橋口さんが書かれている日記の中から、少し引用させていただく。
一言でHotel Bogotaのことを語るのは難しいですが、ホテル全体が文化の香りに包まれていて、そこに居るだけで創造する力がこみ上げて来るような空間です。ベルリンに出かける予定のある方は是非一度Hotel Bogotaにも立ち寄ってみて下さい。さまざまな形で表現されたものが廊下やエントランスに掛けてあるというだけではなく、ホテルが公の場だということが良く分かると思います。ベルリンにあるホテルではなく、Hotel Bogotaのあるベルリンです。 (2004年12月21日)
旅の心得ですが、いいホテルの一番安い部屋を利用するのも、一つですよ。なぜならサービスと空間利用は安い部屋でも変わらないからです。アメリカ式高級ホテルには無い品がボゴタにはあります。アメリカ的文化には、これからいくらでも触れる機会があると思いますが、ボゴタみたいなホテルはそんなに探しても見つかるものではないのと、重層的な時間を持った空間はいくら資本を用意しても作れないからです。
(2005年1月5日)
私が初めてこのホテルの中に入ったのは、2009年春『素顔のベルリン』の取材でだったと思う。オーナーのリスマンさんに中を案内していただき、橋口さんが語るところの「重層的な時間を持った空間」に感動した。その年の暮、日独センターでの講演会で橋口さんとお目にかかる機会があり、直後にボゴタの中を案内していただいた。朝食ルームの大きな柱時計と一緒に写真を撮らせていただいたりもした。
関連記事: 橋口譲二さんが案内するホテル・ボゴタ (2010-01-27)
こんなご縁から、橋口さんが関わっておられるホテル・ボゴタでの展覧会の準備のお手伝いをさせていただくことになった。「異変」に気付いたのは、今年3月末宗美香子さんでのオープニングでリスマンさんが珍しく長い挨拶をされたときのことだ。ホテルの経営状況がよくないこと、ホテルでのアート活動の将来も不透明であることを話された。その2ヶ月ぐらい後、ホテル・ボゴタ廃業の危機のニュースがTagesspiegel紙を中心に連日賑わすようになった。私もその問題を取り上げたけれど、署名活動などの動きも空しく、ホテルの廃業が決まってしまった(これを書いている本日12月1日は20時までオープンデー。ホテルとして完全な状態で中に入ることのできる最後の機会となる)。
関連記事: ホテル・ボゴタ終焉の危機 (2013-07-06)
数日前、自宅から約20分の距離にあるボゴタに泊まりに行った。実は夏にも一度泊まっているのだが、私たちにとってもこれが最後の機会。かつてボゴタに泊まったことがありこのホテルに愛着をお持ちの方や、今回ベルリン行きが都合により叶わなくなった橋口さんのためにも、このホテルの最後の記録をここに残そうと思った。まずは、ドアから入ったところにあるレセプションの様子から。受付を済ませると、大きな鍵を受け取る。
そこを進むと、ソファが置かれたロビーがある。左側は階段とエレベーター。奥に行ってみよう。
この部屋はPhotoplatzと呼ばれ、いつも写真が空間を彩っている。ここで定期的に写真展が行われてきた。その奥が朝食ルームとなる。
ロビーの反対側。大きな鏡の向こうにKabinettと呼ばれる私の好きな部屋がある。
ずっしりと重い黒電話を手に取るのはいつ以来だろう。受話器を耳に当ててみたら、「ツー」という音が聞こえてきた。今も現役で使われていたのだ。
22時を過ぎると、奥のPhotoplatzは照明が落とされる。
初めてオーナーのリスマンさんにホテルを案内していただいたとき、かつてこの部屋でベニー・グッドマンがクラリネットを演奏したという話を伺った。
Kabinettではつい最近展示が始まったヌード写真が飾られていた。ここのホテルで撮影されたもののようだ。ホテル・ボゴタのアートを大切にする姿勢は最後まで変わらなかった。
本日12月1日のオープンデーの案内(Hotel BogotaのHPより) ホテル内の調度品やアート作品は競売に掛けられるそうです。 Am 01.12.2013 wird von 12:00 – 20:00 Uhr ein Tag der offenen Türen stattfinden. Dort können bei Kaffee, Kuchen, Sekt, … die Räume des Hauses begangen werden. Es findet kein sofortiger Verkauf statt, sondern alle Besucher können sich alles in Ruhe ansehen, niemand muß Angst haben, „ es wäre schon alles verkauft“, wenn er zu spät kommt.
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残念としか言いようがありません。
昨年、わずか2泊でしたが宿泊出来て良かったです。
あの朝食ルームの心地よい緊張感と珈琲の香りを忘れません。
真人さん、次回のレポートも楽しみにしています。
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tsubuさん
コメントありがとうございます。
昨日ボゴタの最後を見届けてきましたが、多くの人でごった返していました。その数日前、泊まりに行って本当によかったと後になって思いましたよ。続きのレポート、もう少々お待ちください。
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ベルリン猫さん
ありがとうございます。昨日はご挨拶しかできませんでしたが、とにかくすごい人でしたね。今朝の新聞でも、ボゴタの最後の日の模様が大きく取り上げられていました。
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はじめまして。
15年前の初めてのドイツ一人旅でこのホテルに数日泊った
ことがあり、懐かしく読ませていただきました。
その時、ホテルの人にも本当に親切にしていただいたので、
私にとって、今でも思い出に残るホテルの一つです。
なので、廃業が決まったことは本当に残念に思います。
次回のレポート読むのを楽しみにしています。
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rudernさん
はじめまして。コメントをいただき、ありがとうございました。
ドイツへの初めての一人旅でこのホテルに泊まられたのなら、印象はなおさら強かったでしょうね。間もなくレポートの続きを書いていくつもりですので、もう少々お待ちください!