「ビキニ・ハウス」。ツォー駅からほど近い場所に位置し、風変わりな名前を持つこの商業ビルは、隣の映画館ツォー・パラストと並んで、戦後の西ベルリンに建てられた代表的な建築の1つだ。建物の真ん中の階にあるアーケード(渡り廊下)を境に構造が2つに分かれ、その様子が水着の「ビキニ」を想起させることから、こう名付けられたのだそうだ(もっとも、このアーケードは1978年に閉じられたとのことだが)。
私がベルリンに来た2000年代初頭、ビキニ・ハウスにはすでに寂れた感が強く漂っていた。2010年に改修工事が始まると、建物は一時期骨組みだけをさらして立っていた。「日本だったら、確実にスクラップ&ビルドするところだろうに」と思いながらも、私はその様子を眺めていた。
4月3日、その「ビキニ」が生まれ変わった。正直、クーダム周辺に新しいショッピングセンターが1つ増えたことに対してさほど関心がなかったのだが、実際に足を運んでみたら、良い意味で予想は裏切られた。まず、ビキニでは洋服のH&MやZara、家電のSaturnといった典型的な大手チェーン店を見掛けない。イタリアや地元ベルリンのデザイン系のお店や洋服店などが多く並び、質の高いものを提供している印象。値段は安価と高級の中間といったところか。緑色の鉄骨がむき出しの中央の空間は広々としており、カフェなどくつろげるスペースが用意されている。全体的に木を多用しているのも良い。
横幅の広い階段を上った先は、大きなテラスになっていた(このテラスには映画館横の階段から直接出ることもできる)。眼下には動物園の広い森が広がり、チンパンジーやフラミンゴたちが日を浴びている。ビキニがドイツ最古の動物園に直接面していることは知っていても、ショッピングの場に緑と動物を溶け込ませる空間の使い方には唸らされるものがあった。
「ビキニはショッピングセンターではなく、コンセプトモール。我々は(大手チェーン店に)賃貸するのではなく、情報に新しい視点からの価値を加え、それを他者と共有したいのです」とは社長のカイ=ウーヴェ・ルートヴィヒ氏の言葉。彼がアドバイザーに起用したアンドレアス・ムルクディス氏は、ギリシャから東独ドレスデンに亡命した両親の下で育ち、自らデザイン系のショップや出版社を経営する傍ら、展覧会のキュレーターをもするような人物だという。
ベルリン西地区の中心街は、現在めまぐるしい勢いで変化を続けている。ムルクディス氏はこのエリアに新しい刺激を及ぼす可能性として、この秋ツォー駅裏手に引っ越してくる写真ギャラリー「C/O Berlin」と、やはりこの近くに最近ドイツ1号店がオープンしたばかりの「ユニクロ」に期待を寄せている。そう言えば、ビキニのテラスでも、老舗デパートKaDeWeなどと並んで、「From Tokyo」と書かれたユニクロの紙袋を持った人々をよく見掛けた。クーダム界隈の消費文化にも新しい風が吹き始めているようだ。
(ドイツニュースダイジェスト 5月2日)
Information
ビキニ・ベルリン
BIKINI BERLIN
1955~57年に掛けて、パウル・シュヴェーベスとハンス・ショスツベルガーの設計により建設。昨年11月に改装オープンしたツォー・パラストなどと並び、建物は文化財に指定されている。コンセプトモールとして生まれ変わった現在は、3300㎡の敷地内に60の店と20の木組みのポップアップ・ストアが並ぶ。動物園を望む大きなテラスは24時間開放されている。
営業:モール9:00~21:00、ショップ10:00~20:00(月~土)
住所:Budapester Str. 38-50, 10787 Berlin
電話番号:030-3055496454
URL:www.bikiniberlin.de
25アワーズ・ホテル・ビキニ・ベルリン
25hours Hotel Bikini Berlin
ビキニに隣接し、やはり1950年代に建てられたオフィスビルが、今年1月デザインホテルに生まれ変わった。部屋数は149。大通りに面した「アーバン」と、動物園に面した「ジャングル」の2タイプから選べる。屋上にはオリエンタル料理のフュージョンレストラン「Neni」と「Monkey-Bar」があり、後者は「ベルリンで最も素敵なバーの1つ」(フランクフルター・アルゲマイネ紙)と早くも絶賛された。
住所:Budapester Str. 40, 10787 Berlin
電話番号:030-1202210
URL:www.25hours-hotels.com
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2014-05 の「発掘の散歩術(46)-ビギニ・ベルリンの再生!」を読ませていただきました。その写真の右手にカイザーヴイルヘルム教会が写っています。私が2012.5に訪れたときは記念教会はすっかりパネルで覆われていてびっくりしましたが、この写真では上半分が懐かしい顔を出しています。ベルリンの象徴である記念教会。補修工事が着々と進んでいることを見て、うれしく感じました。今年(2014)の9月には50有余年の旧友に再会するため訪れる予定です。9月のベルリンの天候は不安定ですから、着ていくジャケットスタイルをどの程度のものにしたらよいか、berlinHbfさんのブログを眺めさせていただいて判断いたします。よろしくお願いします。
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コメントを上記のようにさせていただきますが、方式が変わっているのか、送信できません。削除用パスワードて、何ですか?
以前コメントさせていただいたときは、こんな手続き不要だったですが。
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そのときは名前は知らなかったんだけど、ビキニ・ハウスとかいう建物の、さらに西側だったと思うが、教会の近くに映画館があって、そこでスティーブ・マックイーンの映画「ゲッタ・ウェイ」と千葉真一の「戦国自衛隊」をやっていた記憶がある。
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EURO三郎さん
コメントをありがとうございました。
記念教会の改修工事は予想以上に延びていましたが、ようやく上の方が見えるようになってきました。9月に来られる際には全て終わっているといいのですが。いずれにせよ、内部は見学可能です。
9月ですと、まだ夏のように暑いか、日本の冬のように寒い日々か、両方の可能性がありますので(笑)、厚手の服もお持ちになった方がいいでしょうね。
1987年の話さん
この近くの映画館というと、ビキニの隣の「ツォー・パラスト」でしょうか。
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berlinHbfさん ご無沙汰しています。
9月17日から23日までベルリンに滞在します。
中村真人さんの『ベルリンガイドブック』を持参し参照させていただきます。ベルリンには50有余年の旧友がおります。彼女は晩年の旦那と上手くいかず苦労し一時はストレスで入院まで余儀なくされましたが、この旦那が3年前に死亡し、今は元気を取り戻しています。
彼女のPanAM,Lufthansa時代の友達と今はクーダムareaの同じアパートに共に住んでいます。
彼女の紹介で同じstreetにあるHotel Augusta Am Kurfuerstendammに宿泊します。 中村様にも一時でも会えたらと思っています。携帯のメールアドレスを教えてもらえたらと念じています。中村様はご多忙でおありでしょうから、「もし可能なら」とのダメモトで書かせていただいています。ベルリンは2年ぶりですが、おそらく工事がおえたKaiser-Wilhelm-Gedaechtnis-Kirscheを眺め、2年前は見学する時間のなかったHumbold-Boxを訪れ、ベルリンの歴史を辿ってみたいと思っています。それではよろしく。小野 宏 拝
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EURO三郎さん
メールありがとうございます。よかったら一度メールをいただけないでしょうか。[email protected]が私のアドレスです。
どうぞよろしくお願いします。