ベルリンの街を走るトラムの路線は、総距離約300キロに及びます。これはメルボルン、サンクトペテルブルク、ソフィアに次ぎ、世界で4番目の規模なのだそうです。もっとも、トラムが走るのは大部分が旧東側。これは壁のあった1960年代、西ベルリンのトラムは完全に廃止されたのに対し、東側では重要な交通手段として活用され続けたからです。
しかし、そのトラムは今また少しずつ西側に拡張しています。8月29日、北駅(Nordbahnhof)からベルリン中央駅までの2.2キロの工事が完成し、Ahrensfelde発のM8とWarschauer Straße発のM10という東側からの2つの路線が、中央駅まで結ばれることになりました。
開業初日、中央駅の北側のヨーロッパ広場に足を運んでみると、コンクリートの屋根の付いた真新しいトラムの停留所ができていました。この日は上記の2つの路線に無料で乗車できるということで、試乗に訪れた人も多くいたようです。ほどなくして、Flexityと呼ばれる黄色の真新しいトラムが到着しました。バリアフリーの上、冷房も完備されており、乗り心地も上々です。賑やかなインヴァリーデン通りを走る電車は、恐竜の化石で有名な自然史博物館の前を過ぎると、5分ほどで北駅に到着しました。私はここで降りましたが、トラムはここからさらに、かつての壁跡に沿って時計回りに走ります。
2020年には、M8とM10はさらに2.2キロ先のトゥルム通りまで延びる予定です。が、トラムの拡張はこれだけにとどまりません。ベルリン市の都市開発局によると、アレクサンダー広場と中央駅を結ぶ地下鉄U5が完成する2020年以降、アレクサンダー広場からベルリン・フィルハーモニーのある文化フォーラムまでを繋ぐ線など、いくつかの新路線を計画中とのこと。どれだけ現実味があるのかまだ不透明とはいえ、21世紀に入ってトラムという公共交通が一段と見直されてきているのは確かなようです。
歴史を振り返ると、ベルリンのトラムの最盛期だった1929年は全長643キロ、年間利用者は9億2900万人にも達していました。2014年は1億8100万人と戦前に比べるとはるかに少ないものの、それでもその利用者は確実に増えてきています。街中の道路を走るトラムは、地下鉄やSバーンよりも都市生活の風景に直に密着した印象を与えます。これから建設予定のトラムによって見慣れた街の風景がどのように変わるのか、楽しみになってきました。
(ドイツニュースダイジェスト 9月18日)