ベルリン・ダーレムにあるアジア美術館で、ドイツ人の美術収集家クラウス・F・ナウマン氏が同美術館に寄贈した「ナウマン・コレクション」の特別展が開催されています。このコレクションをご紹介するには、まずアジア美術館の歴史に触れなければなりません。
ベルリン王立美術館の総長ヴィルヘルム・フォン・ボーデにより東アジア美術館が設立されたのは1906年のこと。当初は博物館島にて、また、1924年からは工芸博物館(現在のマルティン・グロピウス・バウ)に場所を移して充実したコレクションを誇りましたが、第二次世界大戦の終戦直後、ソ連軍によりその約90%が略奪されてしまいます。
ドイツの東西分断後、東アジア美術のコレクションは東西別々に再スタートを切り、1990年の再統一と共に再び一つになりました。しかし、それでも戦前のコレクションには到底及びません。1964年以来、日本に住む日本美術の画商ナウマン氏はそのような状況に心を痛め、「生まれ故郷であるベルリンの文化的な喪失を少しでも補いたい」という願いから、自身が長年収集してきた数々の貴重な美術品を寄贈したことで生まれたのが、ナウマン・コレクションなのです。
特別展の見どころをいくつかご紹介しましょう。最初の部屋では室町時代の山水画のほか、根来塗の美しい漆器の数々に目が奪われます。同美術館のアレクサンダー・ホフマン学芸員が挙げてくれたのは、江戸時代の絵師、円山応挙の3作品(松鶴図、竹雀図、陶淵明図)。
「アジア美術館は戦前まで応挙の作品を3点所有していましたが、戦争によりいずれも失われてしまいました。それだけに、ナウマンさんが同じ数の作品を寄贈してくださったのは、美術館にとって誠に幸運でした」。
それ以外にも、「奇想の絵師」と呼ばれた伊藤若沖、長沢芦雪、曽我蕭白の独創的な作品や北斎の貴重な肉筆画など、見どころは枚挙にいとまがありません。
ナウマン・コレクションはこれまでもアジア美術館で公開されてきましたが、約120点という規模の作品群がダーレムで公開されるのは、今回が最初で最後とのこと。というのも、アジア美術館自体が、2019年に完成予定のフンボルト・フォーラムに移ることになるからです。
「磁器、漆器、屏風絵など、作品ジャンルが幅広い上、狩野派、円山四条派、琳派といった流派のバラエティーに富んでいるのも今回の展覧会の特徴です」(ホフマン学芸員)。
この特別展は2016年1月10日まで開催(開館時間は火〜金10:00〜17:00、土日11:00〜18:00)。貴重な機会をどうぞお見逃しなく。
www.smb.museum/aku
(ドイツニュースダイジェスト 11月20日)