毎年この時期のクリスマスマーケットは、ドイツでは季節を感じられる数少ない行事に属する。ベルリンの西側に住む私たちにとって、動物園駅からほど近いブライトシャイト広場のマーケットは特になじみ深いものの一つだ。12月5日(月)の夕方、たまたまその前を通り過ぎたとき、何枚か写真を撮った。
今日20日、このマーケットにトラックが突っ込んで多数の死傷者が出たというニュースで目が覚めた。事件の詳細を読むと、まさにこの写真の向こう側からこちら側の地点に向かってトラックが突っ込んできたことになる。ちょうど2週間前に撮ったこの写真を眺めながら、たまたま自分はいま日本に帰省しているけれど、昨夜この場所を歩いていたとしてもまったく不思議なことではなかったんだなと感じる。
暗闇の中に浮かび上がっているカイザー・ヴィルヘルム記念教会は、第2次世界大戦中の1943年の空爆で瓦礫と化した。戦争の悲惨さや傷跡を後世に伝えるために、敢えて廃墟の姿のまま遺している。数年前まで、この教会は約3年間工事用の足場で覆われていた。戦争の傷跡をそのままの状態で保存するために、修復工事をしていたためである。これは一例に過ぎないが、ベルリンの今日の活気や魅力といったものは、こういった努力を積み重ねてきた結果にあると私は思っている。
戦争からの復興には長い時間を要するが、破壊するのはあっという間である。暴力、野蛮、混沌が再び支配する世界はもうすぐそこまで来ているのだろうか。不安と悲しみの最中にいる私たちは、メディアが伝えるわかりやすい対立構造や煽動的な言説につい飛びついてしまいがちだが、安否確認で連絡をくれた知人のメッセージにあった言葉の意味も考えたいと思う。「私たちは、難しいですけど、この悲しみを怒りに変えない努力が必要だと思います」。
日本と欧州の間に横たわる(いろいろな意味での)距離感を感じながら過ごした長い1日だった。被害に遭われた方、ベルリンの皆さんに心からお悔やみを申し上げます。