この9月末から始まるNHKのテレビ語学講座『旅するためのドイツ語』のテキストに、半年間の連載を担当させていただくことになりました。気付いた方もいらっしゃるかもしれませんが、通常の『旅するドイツ語』というタイトルに「ための」という3文字が加わっています。
コロナ禍によりこの番組の柱であるドイツでの収録は不可となり、私の連載も当初は旅もので書かせていただく予定だったのですが、ロックダウンが長期化する中で軌道修正を余儀なくされることになりました。「限られた条件の中で書けるテーマは何だろう?今こそ伝えたい主題は?」。いろいろと思いを巡らせてたどり着いたのが、「ベルリン・生活必需品としての文化」というテーマでした。
日本語にするといくらか違和感のある表現かもしれませんが、ここでの「生活必需品」はドイツ語のLebensmittelを意図しています。コロナ危機によりコンサートホールや劇場が閉鎖される状況の中、ドイツでは文化の必要不可欠性を表現するのにこの言葉が度々使われました。とりわけ政治家によって。「言葉ばかりが先行している」という冷静な見方もありましたが、単に文化が必要と叫ぶのではなく、なぜ必要なのかを明快な言葉で説いたメッセージは、国境を超えて多くの人びとを刺激したのは確かだと思います。
「人が生きていくのになぜ文化は必要不可欠なのか」。とても大きなテーマですが、ベルリンを舞台にさまざまなジャンルで活動する人たちの声を伝えながら、この根源的な問いに向き合ってみたいと思います。
10月号の第1回ではヴァイオリニストの樫本大進さんにご登場いただきました。3月のロックダウンから7月頭のポツダムでのコンサート再開に至るまでの樫本さんの心の動きを追っています。
テキストには久保田由希さんによる「郷土食豊かなドイツの旅」という連載も。日本とドイツの間を再び自由に往来できる日が早く訪れることを願いつつ、半年間お付き合いいただけると幸いです。
NHK出版のHPより
●10~3月:新作
サッカー大国・ドイツに憧れるJOYさんと一緒に、ドイツ語の基礎を楽しく学びます。ドイツに行ったときに旅行を100倍楽しむためのフレーズを紹介。丁寧な解説と実践練習で、旅で使えるドイツ語を身につけます。郷土色豊かなドイツの旅情報やサッカーにまつわる表現など、盛りだくさんの内容です。
・出演 JOY(タレント)・草本 晶(監修/麗澤大学准教授)